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前書きに悩んで早10分・・・?
ふわっとしています。
「はぁ~悲しんでいらっしゃるわ~」
「今日も憂いていらっしゃるのね~」
「本当に絵になる憂いだわね~」
こんな言い方をされるなんて心外である。本当にそう見えているのだろうか。両親は凡人、、爵位も中、兄は変人だけど私の生活に何ら悪影響を及ぼす存在ではない。むしろ幸せという言葉の方が当てはまるだろう。いや、そもそも私は今現在、脳内で午前中の授業を復習していたというのに。
一応、入学当初は社交を試みたのだ。しかし話しかけようと名乗るだけで、「どうなさったの?私に話してご覧なさい。」だの、「本当に不安よね。私もよ。」、「大丈夫、これから慣れていくわよ」だのと、心配と同情ばかり買う。話が通じた試しがない。
しまいにはアース公爵令嬢に、「そうしてわたくし達の同情を買おうとしても無駄よ。騙されてあげるなんて甘いことは致しません。」と言われた。そして未だにすれ違うたびに眉を寄せられる。別に一日中誰とも話さないこともざらにあるので困ってはいないが、表情を出し過ぎで公爵家の令嬢として大丈夫なのかは気にならなくもない。
「ほら、見ろよ。あれが『憂いの令嬢』だぜ。」
「ほんとだ。ほんとに憂いてるな。よく見れば意外と美人・・・?」「でもちょっと近づくにはね。かわいくはないよな」
もともと社交関係はあまり気にならない性質なのだが、こうして聞き耳を立てているのは、あの狂った兄の見合い相手の目星を付けるように両親から言いつけられているからだ。これは我が家において最重要任務なのだ。やつは優秀ではあるのだが、恋愛に全く興味がない。貴族的には大問題である。これが我が家では「最重要任務」だけで済んでいるのは、母曰く、「最悪私たちがもう一回頑張るか、エレナちゃんが跡を継げばいいのよ。あの子はどこかでやっていけるわ。」だそうだ。よくある明るい貴族夫人の余裕ってやつだろうか。
だが、私は跡を継ぐなんて御免である。正確には、領主なんて死んでもやりたくないと思っている。なぜなら、大きな声では言えないが身分制度というものは大嫌いなのだ。こいつのせいで今まで私は損ばかりしてきたのだ。だから将来は兄の下に就いて諜報活動をし、いつの日か平等な国となれるよう励む所存である。ちなみに、毎日のように私のことを憂いていると言っているあの三人は既に候補から除外されている。
と、そろそろ午後の授業が開始する。
勉強はしっかりと。
諜報部の採用は厳しいのだ。まあそもそも試験の存在を知る人が少なく、ほとんど開いていない門ではあるが。
「おい、ちょっと今いいか?」
「無理。今から授業。」
一応言ってみるが無視して連れていかれる。神出鬼没の馬鹿兄め。どうせここで話す必要のないことなのだろう。もっとも、武力で兄に対抗できる人は存在しないから、今いいか?も何もないのだが。
「ここなら誰も来ないだろ。」
今はもう授業中なのでどこにいてもほとんど同じである。卒業生だから知っているはずなのにわざわざ屋根裏に移る兄。本当は大事な話なのかもしれない。
「早速だがお前またおとりになる気はないか?」
「何するの?」
「王太子が馬鹿なことを始めた。これはチャンスだぞ。お前が言ってた壮大すぎる計画の第一切り込み隊長になるかもしれん。」
「何があったの?!!」
「聞いて驚け。側妃をめとってそいつに執務を全部任せた上で、正妃と高等遊民的豪遊の船出をする算段をつけている。」
「えっそれ驚く?そういうことしそうな雰囲気あるじゃん。」
「そうかもしれんが、仕事上では完璧超人最終形態と言われている王太子にとっては痛烈なライナーを受けることと同義。痛烈ではないにしても、少なくとも俺の倫理に悖る行為だ。ということは世間体も頗る悪くなること間違いなしと言えるだろう?」
「そうね。お兄ちゃん自身は存在が非常識だけど倫理観は普通だから。」
「そうだろう!
そこでだ、これを使って王家の醜聞に仕立てあげようというわけだ。作戦の詳細は明日の昼頃に来るラスカルという部下に聞いてくれ。」
「了解。腕が鳴るわ。」
「だがやりすぎるな。廃嫡までいってはならんぞ。そこまですると『王家の醜聞』ではなくなってしまうからな。本当に気を付けろよ。優秀な我が部下によると、お前は少々存在感がありすぎるようだ。」
「わかった。」
ってもういない。相変わらずすごい技術である。家で話せばいいのに学園で話すというところは相変わらず抜けてる馬鹿な兄だが、目指すべきもまた兄。奴は全身に聴神経があるに違いないので、おそらく誰にも会話を聞かれていなかったのだろう。
あの三人失礼だな!
または
この子ハードボイルドじゃない!
と、心が叫んだ方に賛成。
そんなに長くならない予定。