表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

歴史作品

戦場からの手紙


僕と弟はテレビに映し出されているウクライナの兵士であるユーチューバーが撮った画像を眺め、ロシアの戦車や装甲車と攻撃機やヘリコプターが撃破されるのを見ていた。


戦車や装甲車がアメリカ等から供与された兵器で撃破され火だるまになったり、攻撃機やヘリコプターが黒煙を上げて墜落して行ったりする様を見て歓声を上げる。


「「ヤッターー!!」」


そして弟とハイタッチする。


そんな僕たちとテレビの画面を見た婆ちゃんが、僕たちに手紙を差し出しながら声を掛けて来た。


「その番組を見るならその前にこの手紙を読んでからにしなさい」


「「え? これ何?」」


「ベトナム戦争に特派員として派遣されていた私のお父さん、あんた達の曾祖父から私に送られて来た手紙よ」


僕と弟は首を傾げ渡された封筒から便箋を引っ張り出し読む。


便箋の最初から数枚は自分の近況を伝え家族が変わりが無いか等を問うものだったけど、残りの数枚は違った


『また2日程前にインタビューしたばかりの兵士たちが、今日戦死した。


ニューヨークのスラム出身の兵士。


馬鹿で粗野な俺は徴兵された事で、犯罪に手を染めて刑務所に入れられるのが数年先に伸びただけだけど、でも徴兵されたお蔭で貯金が出来たから、この金で俺より遥かに出来の良い妹を大学に進学させる事が出来る、と笑顔で語った青年。


オクラホマの地図にも載って無い町が出身地の兵士。


徴兵されなければ多分、一生生まれ育った町から出る事は無かっただろうけど、徴兵されてカリフォルニアの大都市や日本を見学出来た。


だから除隊したら、シングルマザーの母ちゃんと弟や妹を連れて海外旅行に行きたいなと語った若者。


ベトナム人からすれば憎むべき侵略者で殺すべき敵だろう。


でも彼等は、日本の高校を卒業したばかりの若者たちと変らない夢も希望もある普通の青年たち。


政治家や政府の役人それに金持ちの息子や孫であれば徴兵されても、戦死する危険性が極めて低い本土やヨーロッパの部隊に配属されるのに。


だから、テレビでアメリカ軍であろうとベトナム軍やゲリラ部隊の兵士だろうと、撃たれ倒れ伏した兵士や撃破され燃え上がる戦車や航空機の映像が映し出されたら、彼等の死を悼んでほしい』


等と書かれていた。


渡された手紙を読み終えた僕たちは顔を見合わせ、黙ってテレビを消した。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 秋の公式企画から拝読させていただきました。 ベトナムで行われた愚行が半世紀経った今も別の場所で繰り返されている。哀しいことです。
[一言] 最先端の歴史を扱っていて良かったです。
2022/09/26 11:31 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ