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最後の部屋と各種確認

 待機部屋には亜空間の入り口を開けたし、改めて呼べばひーちゃんとすーちゃんも交えて話をすることが出来た。どうやらすーちゃんは大型犬サイズになったものの、そこで成長が止まったようだ。ひーちゃんは中型猫サイズになっている。

 満華と話をした内容を伝えたんだが、すーちゃんはよく分かっていないようだ。不思議そうに首を傾げていた。の、だが。


「キャゥ?」

「ダメだ」

「え、くーちゃん今のひーちゃんの言葉分かったの?」

「何となくだが……「つまりやればいいって事?」みたいなニュアンスが」

「それはダメだよひーちゃん」

「キュー」

「何で、じゃない」


 物騒。いやドラゴンとしては正しいのかも知れないけど、物騒。確かにそれが今後の憂いを完全に払拭する方法の内、一番確実なものではあるんだけど。

 「そういうの」も含めてあれと関わりたくないんだ、と伝えると、ひーちゃんも納得してくれたらしい。いなくなった(意訳)方が世の為なんじゃないかとは割と本気で思うが、そのせいで今後一生、あれの存在が残るのは嫌だ。

 一番いいのは、異世界アイカの発行手続きを完了して異世界に行けるようになって、その後でもまた改めて、あれとは別のグループ扱いでこのダンジョンに挑めることだ。これならあれの事を考えずに物資の補給やスキルの訓練が出来るし、何なら新しく同行メンバーが増えるかもしれない。


「まぁ同行メンバーについては、何もしなくても増えるかも知れないが……」

「どうしたのくーちゃん」

「ギュ?」

「ピュ?」


 主にドラゴンが。だって卵の所持上限、ないんだろう?

 とは言わずに視線を逸らすにとどめたが、まぁ、ともかく。もう少し話し合った末に……私達は、扉の先に進むことにした。

 あれだ。扉の先に進むと手続きを進められるとアナウンスされたが、手続きを進めなければいけないとは言ってなかったし。扉の前に戻れないとも言っていなかったし。何より、分からないなら聞いてみよう、という事になった。


「わぁ。思ったより役所っぽい」

「そうなのか」

「えっ、くーちゃん市役所とか……行ったこと無さそうだね」

「近寄らせる訳がないんだよな。当時は助けを求めるという発想も出なかったが」

「うーん、何と言うか、あんまりこういう言葉は使いたくないけど、害悪だなー」


 白い石がベースになっているその場所は、思ったより広い印象だった。満華は役所っぽいと言ったが、たぶんそれで合っているんだろう。私は「病院が一番近いけど何か違和感だな」という感じだったから。

 行きかう人の姿もなく、奥のカウンターに人のような影が見えるだけで、それも仕切りによって隠されている。他は……と見回すと、「キュ」と小さくひーちゃんの声がした。

 何か見つけたのか、と、中型猫サイズで満華の肩に乗っているひーちゃんの視線を辿ると、入って来た扉の横を見ていた。そこには棚があって、何冊かの本が並んでいるようだ。


「……『スキル効果・習得条件大全』?」

「えっ待って『異世界環境と対策』とかあるんだけどー」


 ひく、と口の端が引きつるのが分かる。ちら、と満華の方を見ると、満華もこちらを見ていた。まぁ、そうだよなぁ。


「いや、分かる。実地でないと分からない事はあるから、体験するのは大事だ。大事なんだが……」

「とりあえず、この場なら手に取って読んでいいみたいだよくーちゃん」

「……先に時間制限関係を聞いてからにしよう」

「そうだねー」


 という事で、後ろ髪を引かれる思いでカウンターの前に移動。案の定近寄った時点で「異世界アイカ発行の手続きを進めますか?」と聞かれたが、その前に質問していいかを聞いて、この場所を含むダンジョン関係について聞いてみた。

 結果、異世界アイカが発行された後でもほぼ同性能、同構造のダンジョンには挑める。いくら時間が経過してもこの場所と待機場所の出入りは自由。それに加えて、もう1つ。かなり重要な事が分かった。


「……不老は、正式なものになって解除されない?」

「死にはするし、元の世界の時間も動き出すけど……好きなタイミングで戻れるって、実質日帰りも出来るって事かー……」


 どうやら、寿命で死ぬことはなくなるらしい上に、本当に「いつでも」元の世界には帰れるようだ。これは、少なくとも満華にとっては良い事だな。

 ただまぁ、時間の心配がないのであれば。


「とりあえずは、さっきの本を読みこんでからだな……」

「それはそう。……たぶん、レベル10までに条件を満たした人達向けなんだろうけどー」

「スキルも、何となくで使っている人向けだろうな。実際私がそうだし」

「私もそうだよー」


 とりあえず、しばらくは読書の時間だな。


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