決着後の事態終息
「……すごい事になってるな」
「さっきはなんかもめてる感じの声しか聞こえなかったから、これは想定外だよー……」
私の個人的な部分には決着がついたが、この階層という意味では何も決着はついていない。むしろ、決着がついたと思ったところで引っ繰り返されて大混乱の最中だ。
塔の外にまで騒ぎが広がっていて、倒れたまま動かない人の姿も多い。地面もかなりの範囲が赤く染まっている。それにしても、思ったよりも総合人数がいたんだな。
本当に迷惑しかかけないな……と思いつつ、リボルバー状態の銃をアンチマテリアルライフル状態に変える。そして既に込めていた通常弾を抜いて、満華が材料を作ってくれた魔法弾(炎)を装填した。
「……何となく分かった気がするけどー。くーちゃん、それどうするの?」
「こんなもん、少々声を掛けたぐらいじゃどうにもならないだろ」
「グルルゥ……」
そして姿勢を安定させるために作った出っ張りにしっかり足をかけて力を込める。レベルアップに伴って上がった筋力で体を固定して、まだ開きっぱなしのボス部屋への扉、その、数メートル上を狙って撃った。
――――ドゴォォン!! と、ひーちゃんの影で驚かせないようにかなり上空を飛んでもらっていたのにも関わらず、相当な爆発音が届いた。これが地上であればどうなったか、と言えば、まぁ想像通りだ。
「よし、とりあえず静かになったな」
「うーんすごい力業ー。ひーちゃんの威嚇とどっちがマシだったかなぁ」
「キュルルルッ」
「なんだひーちゃん。遠慮しなくていいんだぞ」
「ギャーゥー」
ボス部屋の入り口周辺にいた人達は衝撃波でなぎ倒されてしまったようだが、まぁ死んではいないだろう。たぶん。満華が話を振ったら「まさか敵う訳がないじゃん」みたいな声を出していたひーちゃんだが、もっと自信を持っていいんだぞ。
私が声を掛けると「無茶言うな」みたいな声を返してきた気もするが、その間にも状況は動いている。無事気つけというか、衝撃を与えて魅了を解除する事は出来たようで、その場で呆然と立ちすくんでいる人が多い。
一方初めから正気だった側、恐らくパトリシアを始めとして戦闘に参加していた側だろう。そちらは素早く呆然としている人を無力化していきつつ、怪我人の手当を始めたようだ。
「無力化と言いつつ抵抗が一切なくなっているから、怪我人を優先しているようだが」
「でも、とりあえずは大丈夫な感じかなー。ひーちゃん、皆がよく話し合いをしてた場所に降りてくれる?」
「ギャウ」
満華の判断で、既に引き払われた拠点跡へと着地して、再びお互いの格好を確認。ひーちゃんは満華のマントの中に隠れた状態で、改めてボス部屋前の集団に合流だ。
「それにしても、あんな大惨事を起こしてどうするつもりだったんだろうねー?」
「どういう意味だ?」
「魅了使いの人だよー。仲間割れを起こすのなら、確かに戦える人が疲れ切ってるボス戦の直後っていうのはいいと思うけどー。それで、何の利益があったのかなーって。だって、折角魅了した人達もボロボロになってる訳だしー」
「……たぶんだが、後衛で支援をする人より、前衛で戦う人の方が魅了の難易度は高いんじゃないか? 無ければ奪えばいいと極普通に思う思考回路だからな。他人を使い潰す事に微塵の躊躇いもない性格だし」
「わぁ」
「最悪相打ちで全滅したところで、ここなら「次」を待てばそれで済む。自分が必要とする人員はきっちり別で確保してあるだろうし。それにボス戦自体はクリア出来たんだから、前のレベルに戻って「補充してくる」とかも可能だな」
「わーあ」
……改めて言葉にすると、本当にクズだな。よく今まで問題にならなかったもんだ。
あぁいや、今までは私が全てを押し付けられていたからか。1人で済んでいたから他に被害が出なくて、それでバレなかったんだな。十分欲しい物が得られている状態で、それ以上の手間をかけようとはしないだろうし。
ただ、私1人に全てを押し付けて上手くいっていた分、反動は大きそうだが。……いつまで持つか、最終的にどうなるのか。その辺を確認できないのはちょっと残念か。別に是非とも見たいとかいう訳じゃないんだけど。




