成長と躾と装備作成
どうやらドラゴンというのは果物を食べて成長するらしく、翡翠色の鳥ドラゴンであるすーちゃんは既にたっぷりと蓄えてあった(らしい)果物を食べて、大型犬ぐらいのサイズまで成長した。
その状態でひーちゃんに対して胸を張っていたので、対抗したひーちゃんが本来の大きさに戻って威圧し返していたな。レベル9の最奥階層の「安全地帯」は相応の広さもあるが、流石に狭いからやめて欲しい。
「満華。亜空間の中で育てるんじゃダメなのか。あっちの方が広いだろ」
「あっ」
ドラゴンにとってサイズ差というのは大事なのか、それとも犬みたいに厳格に序列を決める必要があるのか、サイズ差に腰が引けているすーちゃんに対し、ひーちゃんが何事か指導しているようにも見える。……んだが、圧迫感が。
なので、果樹の森以外は広々とした草原と、果てが無いような空が広がる亜空間の方がいいんじゃないかと満華に確認を取った。ら、これはたぶん忘れてたな。
本来の大きさに戻ったひーちゃんが素直に言う事を聞いているのを見て、すーちゃんの満華に対する認識が変わったようだ。まぁ、そうだな。いくらファンタジー種族と言えど、一緒に過ごすんなら躾は大事だし。
「……ちゃんとするなら装備はお揃いでいいか。いやでも、魅了耐性はしっかりつけないといけないから、防御力と隠密性の最低基準と合わせると一点強化の方が良さそう」
身に着けた物を含めてサイズ変更が出来るのか分からないから、最初の手乗りサイズから、さっきの大きさ……まだ大きくなる可能性があるか。あるな。今のひーちゃんぐらいの大きさになっても着けられるサイズにしておこう。
後は実際出てきた時にサイズ調節するとして、ひたすら強化していく。素材はちゃんと取り置いているので、それをひたすら縫い込んでいく作業だな。
単純作業は嫌いじゃない。黙々と手を進めて、進めるのに応じて成果が目に見えて上がるのは存外楽しくて快適だ。目的が決まっている状態で作っているから、「で、結局何に使おう?」と虚無になることも無い。
「作るだけ作らされて目の前で壊されるのは流石に堪えたな……」
不毛の極みにされた作業を思い出しそうになったが、それはどっかやってと。
しかしそれにしても気になるのは、相変わらず「安全地帯」の周りをうろうろしている人間だ。時々近寄って来て反応が無くなる辺り、この座標にある「安全地帯」に入ってはいるんだろう。
しっかり進入は制限しているから、何度入ろうと私達のいる「安全地帯」には入れないんだけどな。しかし何の用だ。ここまで散々、あの隠密系騎士みたいな男を無視して追い回してくれたのと同じ人間なのは分かってるんだけど。
「ここまでしつこく追い回すほどの価値を私に感じてる、とは思えないんだけどな。前までの認識だったら」
たぶん戸籍上の妹の関係者だと思うんだが、流石にしつこいんだよなぁ。そしてその動きに対して、あの隠密系騎士みたいな男(とその仲間)が動いてないっていう事で、だんだん信用は目減りして行っている。
いやまぁ、その辺誤魔化すのはあの戸籍上の妹の得意技だから、誤魔化しがバレてないだけって可能性もあるんだけどな。そうであっても戸籍上の妹の行動を察知できてないって意味で信用ならない。上手く言いくるめられて敵に回るって意味で。
すーちゃんの成長次第だが、その速度で全部振り切ってもらって塔に突入するというのもありだろうか。「マルチハイディング」なしで地形の一部も壊せば相当な騒ぎになるだろう。私の銃の射程があれば、何なら今いる場所から階層の端を狙う事も不可能じゃない。
「よし、出来た」
そんな事を思いつつも手は動かしていたので、薄手のロングマフラーのような首巻きはあっさりと完成した。満華はまだ戻ってこない。これは、本気でひーちゃんと同じくらいの大きさになっているかも知れない。
地形が自然豊かなものに変化してから採取したものは、その一部を私も持っている。「アイテムボックス」により自動的に適した形に加工されるそれの中には、なんと茶葉もあった。
砂糖や牛乳、食器の類は招福屋で買えるので、そちらも一揃い放り込んである。何よりスポーツドリンクを飲んだ後のペットボトルを綺麗に洗ってその中に入れておけば、ミルクティーであろうと簡単に飲める。
「そのスポーツドリンクも、どこの国の備蓄だってレベルであるんだけど」
重量無効の容量無限で良かった。本当に。加工までしてくれるんだから、本当に「アイテムボックス」は便利だよな。




