過去と目前を塞ぐ闇
手早く移動して「採取スポット」を巡り、素材を集めて回る事しばらく。休憩自体はいつでもどこでも展開できる満華の亜空間でこまめにとっていたが、流石にレベルアップで強化された身体でも、1週間近く気を張り続けるのはしんどい。
なので、しばらく素材を回収しつつ移動を続け、あの接触があった場所から、塔を挟んで反対側まで移動したところで「安全地帯」に入る事にした。
「まずは各種設定をして……満華ー?」
「なーにー?」
「進入制限を「私のフレンド」に限定するが、いいな?」
「くーちゃんのフレンドって私だけだよね? でもまぁ、いいと思うよー」
なおひーちゃんは生き物だが、扱いとしては満華のメイン武器なので何も問題は無い。なのでさっさと設定を進めて、音や探知系のスキルに対する抵抗力というのも最大まで上げておいた。
この辺も何かのスキルかレベルに依存するのか、設定できる項目が随分と増えていた。いいんだけど。魅了持ちな可能性が高い戸籍上の妹を相手にしているんだから、「安全地帯」が名前の通りの効果を発動する為には細かいところまで設定できた方がいいんだけど。
流石に項目数が項目数だったのでちょっと時間はかかったが、それでもしっかりと設定をして、全体確認もして、ようやく気を抜くことが出来た。
「……次起きたら前みたいに周りを取り囲まれてるっていうのもありえるから、しっかり休んでおこう」
「聞いた人数でそれをされたら辛いねー」
「まとめ役がしっかり機能してくれてるといいんだけどな」
「本当にそれー」
満華の亜空間に居られる時間は短かったから、転寝ぐらいしか出来てないんだよな。それでも動ける辺りレベルアップってすごいとしか言えない訳だけど、やっぱりベッドで熟睡しないと疲れは溜まっていく。
というか、「存在感知」を展開し続けて、そこに大体常にこちらを追いかけてくる反応があるっていう状態そのものが疲れるし。無意識でも展開できるようになっているとはいえ、追われているというのはしんどいな。
まぁ、逃げ切りより準備を優先したんだから、仕方ない。分かってたことだ。
「出来れば脈無しとみて、全員揃ってさっさと進んでくれてるといいんだけど」
「そうだねー。今回はあんまりお話しする余裕は無いし、くーちゃんから聞いた話だけでも言葉が通じないみたいだしー」
「……。あれの事を言っているなら、外面は完璧だったんだぞ?」
「特定の個人とはいえー。自分の為に他人を使い潰せるのは人扱いしなくていいし話どころが言葉も通じないと思え、っておにーさまが部下の人に言ってたからねー」
「…………そうか」
「もちろん、話は全部の方向から聞いてからって事でもあるからー、相手に何かする訳ではないけどー」
「むしろもう何も感じなくなって、ただただ縁を切りたいだけだからな……」
「くーちゃんそれだいぶ末期だよー」
末期とは。いや、何となく想像はつくけど。
まぁ対外的にはどうしようもなく我儘でバカで家族を気分で振りまわしていたのは私の方だからな。もちろん戸籍上の家族が私にしたことをひっ被せられていただけなんだが。
噂を信じる人間は近寄らないし、信じない人間は少数だから牽制もしやすい。中学校あたりではもう「逆らう=命の危機」になってたから、私の方をコントロールするのは簡単だっただろうし。
「ま、とにかく休んでからの話だ。お休み」
「お休みなさーい。……くーちゃんはもっと休んだ方がいい気がしてきたかもー。頼りっきりの私が言えたことではないかもしれないけどー」
「ん?」
「なんでもなーい」
もっと休む、なぁ。
……まぁマインドコントロール下にあったのは確かだろうし、戸籍上の家族に対して怒りを覚える方が健全なのは分かるんだが。




