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様子見と空気と狙い通り

 そこから3日もすればだいぶ塔の近くにも行けるようになったが、流石にここまでくると相手の密度が高いのか、遭遇しないように逃げ回る時間の方が長かった。面倒くさいが仕方ない。

 それに、全力で「マルチハイディング」を使っていると言っても相手にだって探知手段ぐらいはあるだろう。実際、何度かは明らかにこちらの居場所が分かっていて包囲している、という状態だったことがある。


「私も、全力の全力で「マルチハイディング」を展開し続けられてるかって言うと自信ないしな……」

「くーちゃんの意識で強度が変わるっていうのも不思議だねー」

「どっちかというと、意識すると割増しで強く発動できる、って事なんだと思う」

「あー、なるほどー。集中すると手元が良く見える、みたいな感じかー」


 それでも何とか、時には敢えて「存在感知」を切って移動し続けたかいはあっただろう。何とか角度的に塔の入り口が見える場所に辿り着くことが出来た。

 ……角度的に、だから、距離の方はまだまだある。私がスコープを覗き込んでようやく見える感じだからな。


「本当に広いよねー、この階層」

「全くだ。……にしても、この場所から、もう片方の集団が見えるとは思わなかった」

「ラッキーだねー。追い込まれてるんでなければだけどー」

「正直自信は無い」


 さてその相手の集団、私達より先にこの階層に到着していた団体はどんな感じかというと、恐らくここまでの例にもれず、元は違うグループの集団だったようだ。

 ある程度お互いに距離を取って行動しているし、拠点としている場所の近くにある「安全地帯」には色々な角度から人が出入りしている。「安全地帯」はグループによって空間をずらす事が出来るから、1ヵ所でもあれば全員分のプライベートスペースが確保できるのは知っているようだ。

 見ている時間はそう長くは無いが、それでも集団のパワーバランスというか、力関係みたいなものは見えてくる。


「……元になってるグループは最低7つか8つ、中心になってるのは、花と剣みたいなマークというか紋章を着けて、全身金属鎧で揃えた騎士みたいな集団かな」

「警戒対象さんの姿はあった?」

「いや、今のとこ本人の姿はない。……けど、あれが好きそうな感じの動きをする集団は「安全地帯」に出入りしてるから、参加してるのは間違いないと思う」

「んー、となると、外を探してた人達と、交代で休んでた人達でー、倍か3倍ぐらいは人数が居そうな感じだねー。すごい集団だー」

「それぐらいは人数を集めても問題ない相手がいる、って事でもあるけど。……まぁ、一部非戦闘員というか、後方支援に特化した人もいるみたいだから、戦うのは代表者だけって可能性もあるかな」

「複数の集団から一番強い人を集めて最強チームを作ろう、みたいなー?」

「ある種のドリームチームか。まぁ間違ってないだろうけど」


 さて、どうしようか。流石にあの集団をすり抜けるのは無理があるだろう。ボスも今回は初見でそのまま倒せるとは思えない。だから何らかの形で、あの騎士みたいな集団に接触する必要がある。

 けど問題は、戸籍上の妹だ。あれの話がどれだけあの大集団に浸透しているかによって、主に私に対する態度や扱いが変わってくる。現実と同じくらいに信じ込まれていれば、見つかったらアウトだ。


「……流石に、それは無いんじゃないかなー?」

「私の周りでは少なくともそうだった」

「うん。うーん。否定したいんだけど否定できないこのもどかしさー」


 それでなくても戸籍上の妹がいる集団に接触する、っていう時点で精神的疲労がすごいのに、その状態までぶっつけ本番とか冗談ではない。だからもう少し様子を見るというか、空気感を知りたいんだが……。


「……時間切れか」

「え?」

「グルルゥ……」


 覗き込んでいたスコープから顔を離し、「カテゴリーチェンジ」を発動して、アンチマテリアルライフルからリボルバーへと形を変える。そして片手で持てる大きさになった銃を、立ち上がりながらマントの内側にしまった。

 満華は気付いていないようだが、ひーちゃんは気付いたらしく警戒の声を上げている。そう。「存在感知」には何も反応が無いが、レベルが上がったお陰か、何かの気配を捉えることが出来ていた。

 私と満華が大集団の様子を見ていたのは、そこから角度はともかく、距離的には私がスコープを使わないと見れない程度に距離があった場所だ。石造りの建物のような場所の窓から見ていた訳だが、周囲にはこの建物跡より大きな岩がたくさんある。


「気付いてるから、出てくれば。――返事がなければ、モンスターだと判断して撃つ」

「おっとおっと、それは勘弁」


 そんな目立ちにくい場所で、様子見をして居たのは精々10分かそこら。だから今このタイミングで、ここにいるって事は……やっぱり、誘い込まれたって事だ。

 ガチッ、と撃鉄を起こす音と共に気配の方向を睨めば、思ったよりも若くて軽い声がして、入り口である場所から1人の男が入って来た。全身に、どこかしらに金属を使った鎧をまとい、その全身を包み隠してまだ余るほど大きなマントを羽織っている。

 そして胴体の鎧部分に、花と剣を組み合わせたような紋章が刻印してあった。あの、騎士みたいな集団のメンバー、という事だろう。その割には、随分と隠密行動に特化しているみたいだけど。


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