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進捗と準備と想定済みの反応

 加工された晶石はどうやら、強化素材として縫い込むと他の素材同様に消えてしまうようだが、単に素材を配置するとか、もしくは模様として使う場合はそのまま残る、という事が分かった。何が違うんだ? と思ったが、たぶんいざという時の換金用に出来るんだろう。

 まぁ今は全て、主に耐性の強化につぎ込んでしまうんだけど。晶石の値段次第とはいえ、水晶と同じだったとしても結構な値段になっているが、必要なものだから仕方ない。

 全力も全力で強化を重ねて、幾重にも重ねて身に着けている装備のほぼ全てがかなり高い魅了耐性を備えた頃に、結局1度も他の申請者とニアミスしなかったレベル9の最終階層へと辿り着いて、


『警告。「警戒リスト」に名前のある人物と同じ階層に進入しました』


 ……いつか睡眠を中断させられる形で聞いたものに酷似した、そんな警告を聞いた。それは同時に、悪い方に考えた予想の1つが当たったって事だ。


「くーちゃん? どうしたの?」

「…………いる」

「えっ」


 既に満華には「メニューオプション」の機能の1つである「警戒リスト」について説明している。私が戸籍上の妹をそこに登録している事もだ。だから、階層に入った瞬間に額を押さえた私の、呻くような声の意味は伝わった筈だ。


「……流石に、偶然じゃない、よねー?」

「偶然だったら最悪過ぎるな」


 意訳で、偶然はあり得ない、となる。何せあの時のストーカー行為で取り上げられたのは、「私に関するスキルの経験値」だ。スキルそのものや、私についての情報はそのままだ。

 結局スキル「マーキング」というものの詳細は分かっていない。私が取得できるスキルの中には出てこなかったから。その名前と、戸籍上の妹がずっと追いかけてきていた事から、ざっくり効果を想像するしかないんだよな。

 警告の文言が微妙に違う事については、素材集めにそれなりの時間をかけたから、その間に追い越されてしまったのだろう。まぁ、それは覚悟していた事だ。


「とりあえず、この階層の様子が知りたい。すり抜けられるもんならすり抜けたいし、相手の状況を見ないと対処の方向も決められない」

「そうだねー。でもひーちゃんに空を飛んでもらうのは目立つだろうしー。……隠密力も鍛えてて良かった、かなー?」

「だといいな……」


 地道に「マルチハイディング」もレベルを上げているし、隠密方向の強化もしっかりしてきた。だからレベル6の最終階層みたいに、こっちの動きが筒抜けって事は無い筈だ。たぶん。

 地形としては石造りの建物を基本とした廃墟で、場所自体もゴツゴツした岩場だ。空も暗く曇っているので、隠れて行動するのは適している。もっとも、それは相手にも言える事だけど。


「既に探り合いは始まってるし、何なら待ち伏せとか罠ぐらいは普通にあると思った方がいいか。感知範囲は最大にしておくから、慎重に移動しよう」

「うーんくーちゃんが徹底してる。私達の方に争うつもりは無いんだけどねー」

「こっちになくても、あっちに争う理由があるんだからどうしようもないな」

「私、色々知りたいとは思ってるけど、他人からとったものでいばる人の気持ちは分からなくていいかも……」

「それはむしろ理解したらダメなやつだ」


 ……。

 とかいう会話をしている間も「存在感知」に反応は無い、か。とりあえず、待ち伏せはまだされてないって事でいいだろう。

 まぁ1つの階層がかなり大きくなっているし、そもそもこんな環境だ。円形をしている階層の外周部分がスタートで、中央部分がゴールというのは変わっていない。


「まずは「安全地帯」の発見と、その周りの確認かな。先についた方が「安全地帯」の場所を完全に調べ終えていたら、塔が増えた時点で順番に調べて行けばいいだけの話だし」

「そうだねー。入り口になるかも知れない場所を全部監視するより、「安全地帯」だけを見張ってた方が楽だもんねー」


 その為には「安全地帯」の存在を知っていないといけないんだが……まぁ、楽観視は止めておこう。そういう運はもっているのがあの戸籍上の妹だ。


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