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現在の能力と手札と必要の推測

 これは仕様なのか、それともまだ温情があるのか、階層の端は割とすぐに見つかった。そこから一度端まで行ってみて、透明な壁がある事を確認。その端に沿ってしばらく歩いてみて、相変わらず何の反応もない事と、その端が弧を描いている事を確認して、中心方向へひーちゃんに乗せてもらって移動する事にした。

 いつもより低空をゆっくり飛んでもらっているが、相変わらず何の反応もない。マップ機能が無ければ進んでいるかどうかもちょっと怪しくなってくる。端を確認しておいて良かった。ループしないとは言っても、進む方向が分かっているのは大きい。

 そしてゆっくり飛んでいると言っても、それは普段と比べての話だ。当たり前だが人間が自分の足で歩くよりはずっと早い。


「その状態で5時間近く飛んでもらって、ようやく遠くに塔が見えるとか、どんだけ広いんだここは……」

「私、その塔もまだ見えないんだけど……」

「ギゥー」


 もちろん間に休憩は挟んでいるが、それでも自分の足で歩いていたら何日かかったか分かった物じゃない。というか、休憩のたびにスピードは上げてもらっていたから、今は普段ぐらいの速度になっている。

 なお、ここまで一切の反応は無い。「感知強化」入りの「存在感知」を最大まで広げ続けて頭が痛くなっているが、それでも何も無しだ。こんなに真っ白なマップを見たのは初めてだな。何か感知したら、それが自動で書き込まれるから。

 そしてそこから塔までも一切何の反応もなく、塔が初めての感知対象となった。


「ギャゥ?」

「ひーちゃん、どうしたの?」

「……あー、なるほど。本格的にこの階層は、事前準備と移動手段を用意できているかどうかだった訳だ」

「くーちゃんどういう事?」

「ボスがいない」

「…………。えっ?」


 そしてその塔に近づくと、ひーちゃんが何かを探し始めたが……私も気付いた。塔が感知できているのに、その中にある筈の反応がない。つまり、ボスモンスターがいない。

 流石にそれは……と、満華は思ったらしく、ひーちゃんも反応がない事に罠を疑ってか、しばらく塔の周りを飛び回っていたが、やはり何もない。


「ボスがいないとかそれがダンジョンでいいの!?」

「今回に限っては温情措置だと思う。移動に限ってひーちゃん抜きでここまで来て、まだ戦ってる余裕があると思う?」

「あっそれは無理!」


 そういう事だ。私も途中からは周囲を警戒するより、マップを少しでも広く記録する為に「存在感知」を使っていたが、これで歩きながら「気配が感知できないモンスターがいるかもしれない」なんて思いながら歩いていたら、とっくに限界が来ていただろう。

 超遠距離からの大火力、というほとんどの戦闘が作業になってしまうような、自分で言うのもなんだがチートじみた手札を持っている私ですらそうなるのはほぼ間違いない。では、武器を持って正面から戦う必要のある、他ほとんどの「申請者」は、どうだ?


「事前に準備と覚悟が出来ているならまだしも、こうやって不意打ちになる可能性があるんなら、まぁ、何もなく休める方がいいだろうね」

「それもそうだねー。……ねぇくーちゃん、中って「壊せる壁」はある?」

「あるみたい。まぁ、この階層自体が巨大な敵みたいなもんだし」

「そっか! そう言われてみればそうかも!」


 もしくはここ、レベル8に辿り着くまでに、「アイテムボックス」や何かしらの緊急避難手段、もしくは拠点作成的な能力を手に入れているのが前提、という可能性もある。

 まぁ異世界に行く、その準備や訓練みたいな側面もあるだろうし。文字通り「異」世界なんだから、どんな条件や環境が来ても対応できるようにする準備は必須だ。

 とはいえ、実際に体験してみないと、その辺は意外と分からないものだし。今回の私達みたいに。


「この分だと、レベル9や10にはもっと過酷な環境が出てくるかも知れないし。……ひーちゃんって見るからに火属性だけど、吹雪の中とかだと動けるの?」

「ギゥ?」

「あー…………どうだろ。たぶん無理なんじゃないかな……。体洗うのに、川の中に入るのも嫌がるし……」

「ギャゥッ!?」


 そうか。無理そうだな。

 まぁ私も対応できるかと言われると、かなり厳しいんだけど。

 ……とりあえず、防寒具と、逆に熱い場所、火山とか、あるいは砂漠とかにも対応できるように装備の幅は増やしておこう。流石に海を渡るのが前提、とかだと困るな。船は流石に作れないし。


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