特殊能力と新たな難題
前途多難、という認識を改めて満華と共有し、その為にも緊急避難先の充実は必要、という事を再確認して……ここには満華自身のスキル獲得も入っている。せめて自己防衛、隠密、鑑定系ぐらいは必要だろうし……レベル8だ。
レベル5までを前半とするなら後半なのはもちろん、最終目標がレベル10である事を考えると折り返しとなる。だから、何か変化があってもおかしくはないな……とは、思っていた事は、思っていた。
とはいえ。
「こうくるかぁ……」
「くーちゃんが得意そうな場所だね!」
「いや、得意じゃない。隠れる場所も高低差もないから、相手の数が多かったら引き潰される」
「表現が怖いよくーちゃん!?」
怖いと言われても、事実だしなぁ……。と思いながら改めて見る攻略コース「のんびり」レベル8の1階層目は、地平線が見える程ただただ広い荒野だった。困ったのは「存在感知」の範囲を限界まで広げてみても、何の反応もないって事だ。
一応これまでのパターンだと、中央の辺りに次の階層へ進む為の塔があり、始まりとなる場所は外縁部に近い場所の筈なんだけど……ちょっと自信が無くなるな、これ。
それに何の反応もないって事は、敵はともかく、森にあった各種植物系アイテムや、「壊せる壁」及び「安全地帯」もないって事だ。もう一度後ろを振り返るが、階段があった場所はただの土埃が激しい地面になっている。
「というか、むしろここに来る時点では既に、緊急避難できる手段を持ってるっていう前提だったり……?」
「確かに何にもないけど、そこまで言う程かな?」
「何もないのが問題なんだよ。私の探知範囲は教えたと思うけど」
「うん。地図を作るのに教えてもらったね。……え? もしかして何もないって、くーちゃんでも「何もない」の!?」
「何もないんだなぁこれが」
実質初見殺しではないだろうか、ってレベルなんだよな。実際これぐらいは普通に有り得るかも知れないんだけど。……むしろ出会いがしらの襲撃が無い分だけ温情とかじゃないだろうな。
「ねぇくーちゃん。これ、ひーちゃんに一気に飛んでもらった方が良くない?」
「ちょっとだけ探索して端を確定しておきたい。……ループ構造になってなければ、だけど」
「何がループ構造になってるの?」
「この場所自体が、かな。今までも散々物理法則は気軽に捻じ曲げられてるし、それぐらいはあると思う」
「まぁひーちゃんとか、くーちゃんの銃見ちゃうとねー」
「そういう満華も人の事言えないんだけど。何、いるだけで周りの味方が強化されるって」
「スキルって不思議だねー!」
……。
そうだな。不思議なのはスキル。それは間違いない。レベルとか装備の強化とかもあるけど。
ここまで話をしていても、やっぱり何の反応もない。この階層の敵はモンスターじゃなくて、飢えとか渇き、あと広さなのかも知れない。もっと言えば、自分の準備不足。
「ドロップ品の偏りとかも考えると、やっぱり人数というか、仲間は多い方がいいんだろうけど……」
「うんうん。やっぱりくーちゃんももっと他の人と話そう? 楽しいよ!」
「1人で黙々と作業してる方が好きだし性に合ってる」
「そっかー」
とはいえ、酸素ボンベまで用意する必要はない、と思うんだけどな。それに仲間が多ければ出来る事が増える、と言っても、その仲間とはぐれたりすると一気にピンチになるって事でもある訳だし。
うん。やっぱり「安全地帯」の最低基準でいいから、自分用のスペースの確保は必要だな。素材関係の生産能力があるとなおいい。もちろん動力や変換元になる素材は必要になるだろうけど、あればどれだけ便利かは満華が証明してくれているし。
「アイテムボックス」には無限に物が入るとはいえ、そこにある私のメイン食料は、あの味のしない携帯食料だからなぁ……。せめて味をつけるぐらいの加工は出来ないものだろうか。
「とりあえずはここを超えないとどうにもならないねー」
「それはそう。……超えたら、一回前のレベルに戻るのも考えた方がいいかも知れない。レベル5以下なら、クリア自体の邪魔は入らない筈だし」
「でもボスから貰えるものとかは残念なことになってると思うよ?」
「多少グレードダウンされてるのは当然だけど、物資と資源の補充的な意味で」
「なるほどー! ずっとこんな場所が続くんなら必要だねー!」
というか、その為にレベルが自動で上がっていくんじゃなくて、自分でレベルを選べるようになってるんだろうな。足りないと思ったら資源集めやレベルアップが出来るように。
どのコースを選んでも手に入る資源や経験値の量は一緒、って説明があったから、やっぱり違いは階層1つ分の広さと、階層自体の数なんだろう。
……あんまりレベルを戻る、っていうのをやりたくないのは、もちろん、戸籍上の妹と鉢合わせる可能性を少しでも減らしたままにしておきたいからなんだが……そのせいで自分が死んだら、何をやっているか分からないし。




