突破と初めての部屋の利用
比較的近くの塔に降りて、普段は少しでも距離を確保する為に開けっぱなしにしている扉の向こうへ滑り込み、すぐに閉める。これは塔の形になってから出てきたものだ。オープンワールド状態だから、通常敵の乱入を防ぐものだと思ってた。本当に防ぐべきは他の人だったのか。
まぁ火力に心配はないので、群れていたゾンビの大半はひーちゃんが火炎放射器みたいなブレスで焼き払い、奥の方にいた厄介そうなゾンビは私が狙い撃ちして終わりだ。
ゾンビの群れを一掃しても入り口である扉が開かない事を確認してからボス部屋を探索し、宝部屋と「採取スポット」を確保。難易度が上がったからか、それともこの階層にいた人数が多かったからか、6ヵ所も「壊せる壁」があったのは嬉しい誤算だ。
『今回は発行条件を満たす事が出来なかった為、申請者様には異世界アイカ取得用ダンジョンの再探索を行っていただきます。それでは、再探索を行う攻略レベルをお選びください』
階段を登る途中までは確かに一緒だった満華がいなくなっている、というのはまぁ予想していた事なので特に驚かず。念の為左の壁にある扉を開けてみると、明らかに見覚えのない人間が大勢集まっていたのでそっ閉じする事になった。
……なんか「くーちゃーん!?」とかいう悲鳴みたいなものが聞こえた気もするが、気のせいだ。うん。
スキルと装備を見て回ったものの特にピンとくるものはなく、結局「消耗品ランダムボックス;弾丸」に突っ込んだ。そして攻略コース「のんびり」レベル7のカードを手に取り、ここで再び左手側にある扉を見る。
「……手をかざしても反応なしか。となると……部屋作成、入室条件、私のフレンド。フレンドのフレンドは入室拒否」
条件を声に出してみると、ふわっと僅かに扉が光った。これで良かったらしい、と扉を開けて部屋に入ってみる。
中には40階層目を越えた辺りぐらいの、結構広くて上等な部屋が広がっていた。これが標準というか、お客様待遇って事か。
もうやる事自体は終えたので、誰もいないその部屋でのんびり過ごす。来なかったらその時はその時だが、それならどれくらい待ったものか、と「メニュー」の時刻表示を見ていると。
「くーちゃん!?」
バン!! と派手な音を立てて扉が開いた。そしてそちらを振り返る前に、ソファーに座っていた私の所へ何かが飛び込んでくる。
……まぁ、何かって言うか満華なんだけど。いやー、レベルが上がってて良かったな。人1人ぐらいなら受け止められる身体能力は、かなり鍛えないといけない筈だから。
「……くーちゃん思ったより硬い……」
「私が硬いんじゃなくて、防具や銃弾をマントの下に並べてるからだからね?」
「分かってるけど、勢いをつけちゃったから結構痛いよー……」
「頭からつっこんでくる方が悪い」
むしろちゃんと防具を着込んで受け止める態勢に入っていなければ、私もかなりのダメージが入っていた。どっちかっていうと私は被害者だ。
あのひーちゃんにしがみつき続いていられるあたり持久力と耐性は鍛えられているんだろうし、あの勢いで防具の上からぶつかって、痛い、で済んでいるなら十分丈夫だと思う。
ふぇ、と涙目になっている満華だが、それでもポイントの交換と攻略コースのカードは選んできたらしく、出発はすぐに出来るようだ。
「ひーちゃんのいるところの新しい設備も設置してきたし、ばっちりだよー」
「また何か増えたの?」
「うん! 今までに一回でも見つけた食べ物は、種の形にして増やせるようになったよー」
「…………。つまり、あの絶対品種改良された後の林檎とか、山菜の類とかも?」
「手に入れられたら種にして、ひーちゃんのいるところに植えられるようになったよー。もっとご飯には困らなくなったねー」
「もしかして、小麦とか米とかを見つけたら」
「食べ放題だねー」
若干、肥料とかどうなってるんだろう……とは思ったものの、妙なところでゲーム的で、物理法則が働いていても気軽に捻じ曲げられる不思議空間と不思議技術だ。
たぶん突っ込んだところで分からないし、説明されたところで理解できるとも思えないから、そんなもんだと事実を受け止めるだけにしておいた方が良さそうだな。たぶん。




