情報収集からの対策相談
やっぱりひーちゃんも成長していたのか、恐らく人数に応じて広くなっているこの階層をぐるっと回るのに、2時間とかからなかった。すごい速さだ。これで森のすぐ上を飛んで、私と満華を乗せ、風圧が強くなり過ぎないように気を使ってるっていうんだからなおの事。
幸い私の情報処理能力がパンクすることも無く、乗り物酔いのような頭痛がしたが、無事に大体必要な情報は手に入った。その途中で、それなりに塔からも入り口からも、ついでに他の人っぽい反応からも遠い「安全地帯」を見つけたので、そちらに移動する。
そこで頭痛を耐えつつ「存在感知」を使って分かったマップを紙に書き写し、スキルの範囲に入らなかったからか、目で見えてもマップには書き込まれなかった地形や塔を手で書き込んでいった。
「で、これが大体、この階層にある塔と、その周りの地形な訳だけど……」
「完全に囲まれてるねー。……ひーちゃん、もうちっちゃくなって大丈夫だよ?」
「グゥ」
ぬ、と、上から覗き込んでいた大きな竜の頭が、しゅるしゅると縮んで机の下に隠れた。その後、ひょこっと中型猫サイズの赤いドラゴンが机の上に飛び乗ってくる。
一旦「ひーちゃんのいる場所」に引っ込むと全身綺麗になっていたので、「安全地帯」の中が汚れるという事はない。まぁそれでも普通に圧迫感はあったから、小さくなってくれる方が助かる。
さて問題は、このある種の強行偵察で分かった、塔の周辺だ。さっき満華が言ったように、完全に囲まれている。それも、大変ややこしい状況で、だ。
「……これを見て今までの事を考える限り、たぶんこの塔は、階層の中心から一定範囲に出現するんだろうね。で、スタートである入り口は、外側のどこかになる」
「そうだねー。そしたらどこから始まっても、大体同じ距離になるもんね」
「塔を目指して進んでいくと、他の人にも遭遇……出会いやすくなる」
「くーちゃんってもしかしてあんまり人が好きじゃないの?」
「割と嫌いというかだいぶ苦手」
「わぁ。えっと……なんか、ここまでごめんね?」
「離れたとこで様子見してても何も言わなかったから、別にいい」
むしろここまで他人を避けるそぶりを見せていたのに、気付かなかったのか……というのはともかく。ざっくりとこの階層の外周に当たる場所から半径にして半分くらいが埋まっている。ドーナツ型だな。
ドーナツの穴の部分には、大体の塔の場所が書き込まれている。他には川とか目立つ地形、大きな木とかだな。それが目視出来た範囲で書き込まれていた。そして塔は、その中でも更に中心部分付近に固まって存在している。
目視での情報と「存在感知」に引っかかった他の人の反応。それらを合わせる事で大人数が拠点としているらしい場所も目星がついた。で、今こうやって悩んでいる理由というのが……。
「……空からとはいえ、低空を飛んで分かる範囲で、大きな集団が5つ。塔の数からして、それ以外の少人数グループが、私達を除いて17……10よりは多いと思ったけど、塔の数だけで23もあるとは思わなかった」
「しかも、塔の周りで戦ってたよねー。何で戦うんだろ?」
「ボスモンスターの取り合いじゃないかな。中には私達と同じく、先に進みたいのに邪魔されるって集団もいるかもしれないけど」
「くーちゃんはっきり言うねー」
「邪魔以外にどう言えと?」
「グゥー」
「えっ、ひーちゃんもそう思う?」
「ギュゥー」
うんうん、という感じでひーちゃんも頷いているので、邪魔って表現であってるだろう。実際に邪魔としか言いようがないんだし。
「とりあえず、この階層には思った以上に人がいるって事が分かったし、塔そのものが奪い合い状態になってるっていうのも分かった。思ってた状態の何倍も厄介だ」
「遠くからみただけだけど、全部の塔に人がいたもんねー。……これ、隙を見てくーちゃんがボスモンスターを倒して、隠し部屋を無視してとにかく先に進むっていうのは無理じゃないかなー」
「たぶん無理。小さい集団はともかく、複数の塔を常に監視して占拠してる、5つの大集団がとにかく邪魔だ。敵と違って、吹き飛ばす訳にもいかないし」
「そうだねー。……どうしよっか」
「何かしら、追い払うか誤魔化すか、塔に関わってる場合じゃなくなるぐらいの事態を引き起こす方法を考えるしかないな。少なくとも、あっちは時間経過ではいなくならないんだから」
「そうだねー……って、最後のは流石に危なくない?」
「どれをとってもやり方次第だよ」
さぁ、どうしようか。生産スキルはあるけど「採取スポット」をのんびり探している余裕も無いだろうし、敵は無限に湧いてくるとはいえ相手の人数を考えれば、時間をかければかけるほどジリ貧だろう。
……目的が完全突破証明書なら、どこか1グループ、あるいは1人でもこの階層を抜けてしまえば、そこで一回リセットがかかる気もするんだけどな。あんまりやりたくないけど、小集団への一時的な協力も視野に入れた方がいいか。




