最終階層の攻略相談
「そっかぁ……そっかぁー。そうだよねぇー。条件付きになったところで待ってるって事は、楽したいって事だもんねー」
「私はもちろん全部振り払うつもりだけど、満華も今回は話をしに行くのを止めた方がいいと思う」
「そうするぅー」
ぐんにゃり、と机に突っ伏してしまった満華だが、やけに素直だな。全員を仲間にする、っていうと、仲良くできるならその方がいいよね、と、私が置いていかれる可能性もあるんじゃないかと思ってたんだけど。
「いやー、流石に私でも、仲良くしようって言いながら喧嘩する人達が、どう考えてるかぐらいは分かるよー。だっておにーさまが一番怖い顔で追い払う人達がそうだったからー」
……蘭天の次期頭首が「一番怖い顔で追い払う」か……。確かにどう転がっても迷惑だけどな、あぁいう寄生目当ての人間や、自分が正義だと疑わない系の人間は……。
という訳で、ちょっと作戦会議である。まだこの階層の全体図は分かってないが、今までの経験上、こうなった時は時間が経てば経つほどこちらの不利になる事が多い。
「どうせ完全突破証明書の条件は満たせないんだし、スピード重視で突破したい」
「賛成! でもひーちゃんに飛んでもらうと、目立つと思うよ?」
「ここまで来てるっていう条件は一緒だし、むしろここに居座るって意味だとあっちの方がベテランだから、当然対空攻撃ぐらいは持ってるだろうから、危険だね」
「ひーちゃん撃ち落とされちゃう!?」
「ギャゥ!」
えーと……今のはたぶん、驚いたんじゃないな。どっちかって言うと、「落とされないけど!?」っていう抗議の方だな。うん。まぁ。それこそ私みたいな、火力のお化けがいない限りは大丈夫だと思う。それでも、可能性はゼロじゃない。
「あの塔に近づかせないだけなら、それこそ害鳥対策のネットみたいなものを張るだけでも、空からの攻撃はある程度防げるし」
「ギャウッ!」
「ひーちゃん。世の中にはね、燃えない繊維っていうのがあるんだよ」
「ギャウ!?」
「えっ、そうなの!?」
実際には「燃えにくい」であって「燃えない」訳ではないんだが、まぁそれでも石綿とかが良い例だ。あれにも実際のところは限界があるが、そこにファンタジーが関わるのであれば、本当に燃えない繊維というものがあってもおかしくない。
同じく、燃える事で目が潰れるほどの閃光を発したり、煙が立ち込めて何も見えなくなるような繊維だってあるかも知れない。そしてもっと言うのなら、繊維という形にこだわる必要すらなかったりする。
「今は網のイメージで言ったけど、それこそ、入り口を結界みたいなもので塞がれてたら強行突破は無理。だから、様子見は絶対に必要」
「あっ、そっか。魔法があるもんね! でも、急いで次の階層にいかなきゃいけないんだよね?」
「だから、どのくらい偵察するかっていうのと、どこから偵察するかっていうのが問題。上手く相手の動きがまだの所を真っ先に調べられたら、そのまま突破も出来る。逆に警戒の厚いところに迂闊に接触したら、難易度が跳ね上がる」
「なるほどー!」
で、問題はその偵察の手段と、実行タイミングだ。まぁ偵察と言っても、私の「存在感知」の範囲は相当なものになっている。感知系のスキルを感知する、ってスキルもあるだろうけど、そこは上手く「マルチハイディング」で誤魔化したいところだ。
移動手段については、こちらにはひーちゃんがいる。背中に乗せてもらえば、空を飛ぶという高速移動が可能だ。
「出来れば夕方、空が赤くなって、少しでもひーちゃんの鱗の色が紛れるまで待ちたいんだけど、ここの空は変わらないから……」
「それじゃあ、出来るだけ低いところを飛ぶしかないねー。ひーちゃん、ギリギリ森の枝に引っかからない高さをずーっと飛ぶのって出来る?」
「ギャゥ!」
……。今度のこれは、「任せろ!」かな。たぶん。
「森の枝にも何か罠が仕掛けられてるかも知れないし、私ほどとは言わなくても、超遠距離からちょっかいを出す手段がないとは言えないから、気を付けてね」
「ギャーゥ」
「くーちゃんのは流石にひーちゃんでも避けられないもんねー。というか、私はくーちゃんが撃った弾も見えないんだけど……」
「弾そのものは私も見えないよ」
「撃ってる本人なのに見えないの!?」
「見えないよ。いくら不思議な強化が入ってても、人間に見える速度じゃないし」
有効射程2000mのお化け銃を、それこそ100mそこらの射程で使ってるんだから、見える訳がないよね。まぁ屋内だと50m以下だったから、ちょっとはマシになってるんだけど。
……どっちにしろオーバーキルなのは、まぁ。




