順調な攻略と最終階層の違和感
攻略コース「のんびり」のレベル1は、全部で50階層だった。
そこから攻略コースのレベルが上がるたびに5階ずつ階層が増えていたから、レベル6である現在、75階層まである筈だ。順当に行けばレベル10はちょっと中途半端な階層数になりそうなものだけど、それはまぁ、こちらがツッコむ事じゃない。
レベル6からは大きく開けた、空が存在する大自然の中を探索する形になっていた。その衝撃が大きくてうっかり忘れていたのだが、この攻略コース「のんびり」レベル6には、もう1つ重要な変化がある。
「…………」
「どうしたのくーちゃん?」
「いや……」
それを思い出したのは、75階層目に入った時に目に入った光景が違和感だったからだ。今までとは明らかに違うそれを見てしばらく考えた結果、ヘルプを開いてその中の条件を確認してみて気が付いた。
満華は気付いていないようだし、その腕に抱かれた中型猫サイズの赤いドラゴンであるひーちゃんも恐らく分かっていない。
「……この階層、ちょっとまずいかも知れない」
「えぇっ!? くーちゃんでも勝てない相手がいるとか!? あっ、でっ、でもっ、戻れないよねっ!?」
「火力的な意味じゃなくて……とりあえず、「安全地帯」を確保しに行こう」
「えっ、違うの?」
しばらくその違和感を眺めてから、慌てる満華を促して、階段があった場所の前から移動する。もう階段は壁に埋まるようにして消えてるけど、他の人が来ないとは限らない。
ひーちゃんも首を傾げて疑問形のような感じで鳴いている。けど、これは、たぶん、ちょっとやそっとではどうにもならないやつだ。
……最悪、空いている「安全地帯」はないかもしれない。そう思いながらも「存在感知」を出来るだけ広く展開する。頭は痛くなるが、まぁ、仕方ない。
「……良かった、あった」
「よかった?」
満華の頭の上に、疑問符がぽこぽこ湧いている感じがする。が、それはちょっと後回しにさせてもらって、まずは「安全地帯」に向かう事にした。ちゃんと入り口の空いていない、どこにも繋がっていない閉じた「安全地帯」だ。
まぁ「安全地帯」は並行空間的にズレて存在する事になっているらしく、複数グループで同時に利用しても、利用者同士が鉢合わせる事はない、みたいな事がヘルプに書いてあったんだけど。それでも、一応警戒はしておくべきだろうし。
「安全地帯」に繋がる形の「壊せる壁」も見つけていたので、迷わず移動して大きな木の幹に辿り着く。そこでひーちゃんに人が乗れるサイズに戻ってもらい、壁を壊してもらった。
「くーちゃんが撃った方が早いよね?」
「そうなんだけど……入ってから説明する」
爪の一撃で崩れた壁は、ぽっかりと流石に不自然な穴を開けていた。疑問符を浮かべ続けている満華には悪いが、そのままぐいぐいと背を押すようにして中へと入ってもらう。
流石に最奥階層付近ともなれば設備も充実しているので、靴を脱いでカーペットに寝転がるという贅沢が出来る。そこまでやってから……ようやく、半分詰めていた息を、大きく吐き出した。
……そしてその様子を見て、満華は本気でこの階層が「やばい」のだと心底納得してくれたらしい。テーブルを挟んで反対側に座って、話を聞く態勢に入っている。よし、私も腹をくくろう。どっちみち避けては通れないんだし。
「……じゃあ、説明するけど……満華。あの、次の階層へ行くための塔は見えた?」
「うん。なんか、今までと比べると、ずっと多かったよね?」
むく、と体を起こし、帽子とゴーグルを外す。その上でこの階層の違和感について確認を取ると、どうやらあの光景自体は見えていたらしい。まぁ、迷子防止なのか、それとも詰みを阻止する為か、あの塔はとても目立つから、見えてるか。
そう。遠くに1つか2つ、多い時でも5つは越えなかったあの塔。ボス部屋と階段の出現位置を兼ねて、このオープンワールド的な地形に変わってからは、目指すべき場所への目印も兼ねていた、先がどこまで続いているのか分からない塔。
あれが……この階層に入ってすぐに確認できただけで。確実に10以上は、乱立していたんだ。




