他人と仲間の境界線
そこからの進みは、早くなったとは言えないが確実に賑やかにはなった。何せ、とにかく満華が喋り続けている。ひーちゃんと私が警戒しているとはいえ、よくそこまで喋り続けられるな。
まぁ喋り続けると言っても、私かひーちゃんが警戒の姿勢を取ればすぐに黙ってくれるので、邪魔になっている訳ではない。どんな肺活量をしているのかと私が勝手に驚いてるだけで。
もちろん普段着と鞍は作った。材料の皮は「採取スポット」から手に入るようになったし。……何か、巨大な茶色い生き物が、隙間から体の一部を覗かせてる、みたいな見た目だったから、最初は銃弾を叩き込むのをちょっと躊躇ったけど。
「……そろそろ休もうか。近くに「安全地帯」があるし」
「えっ、もうそんなに時間経ったっけ?」
「空は晴れの昼間から変わらないけど、前に休憩してから5時間経ってる」
「そっかー!」
「……満華。次の周回ボーナスでは、本当に、「メニュー」を取ってね」
「うん! 便利だもんね!」
なお、この会話の通り、時間を見ているのは私だ。「メニュー」には総合経過時間だけとはいえ、時間表示がある。……私からすれば、ポイント数からして明らかに必須スキルだったんだけど、満華は取っていなかったらしい。
何のスキルを取ったのかは聞いてない。……けど、たぶん、その時点で他の誰かを助けたり補助したりするスキルを取っていたんだろう。そして2週目以降は、たぶん「ひーちゃんがいるところ」こと、自分用の「安全地帯」を拡充する関係ばかりを取ってたんじゃないかな。
なので、私と同じ攻略進捗な筈にも関わらず、満華自身の戦闘能力は皆無と言っていい。あの速度で飛ぶひーちゃんにしがみついていられた事から、レベルアップで身体能力は上がっているだろうけど。
「それにしても、くーちゃん以外の人はみんな逃げてくねー。なんでだろ?」
「…………さあ?」
私の名前を、くうか、と読んだらしくそう呼ばれているが、他の「申請者」との出会いに関しては目を逸らすしかない。何故かって? それはもちろん、出会ったときに思った通り、ひーちゃんが中型猫サイズにも関わらず、思いっきり威嚇して遠ざけていたからだ。
他の「申請者」に関しては私の方が先に感知できるらしく、私が知らせて満華が会いに行き、ひーちゃんが威嚇して追い払う、という行動がセットになってきた。もちろん私はその間、姿を隠したまま様子を見ている。
明らかに自分の弱点と噛み合っている能力かつ底抜けの善人、という満華が例外であって、私は基本的に1人で戦う前提の装備とスキルだ。その上、よほどでなければ他人を信用しない。
「……私は同行者を増やすつもりはないし、他の誰かに同行するつもりもない、って、言ったと思うんだけど」
「人脈は大事だよー? 顔と名前だけでも覚えておけば、意外なところで役立ったりするんだからー!」
「そんなにたくさんの人の顔と名前を覚えられないんだよね」
「コツを掴めば意外といけるよー?」
一応その「コツ」というものを聞いてみたが、満華のスペックが緩い喋り方と警戒心の無さの割に高い事しか分からなかった。蘭天の名は伊達じゃない、って感じだろうか。……満華本人は、私が呼んでいることから分かるように、名字で呼ばれるのは好きではないみたいだけど。
まぁ、こっちに害と不利益しか与えない相手はひーちゃんが威嚇して追い払っているので、とりあえずしばらくは大丈夫だろう。たぶん。今のところ、私の「存在感知」とひーちゃんの気配察知、その両方をくぐり抜けて近づいてくるような「申請者」もいない事だし。
……いない、とは言い切れないので、このまま頑張って「存在感知」のレベルは上げ続けるつもりだけど。ただ、流石にレベルの上がり方が鈍くなってきたから、ここからのレベル上げはちょっと大変だ。
「というか、むしろ、ここからは使う側の、私のスペック不足か……?」
「くーちゃん、どうしたのー?」
「なんでもない」
こういう、情報処理能力もレベルアップで上がったりしないかな。広義で言えば身体能力に……入ってほしいけど、微妙か。




