相性と能力諸々の確認
で、どうしたかって。……選択肢なんてある訳ない。その境遇というか、周囲の最低さに共感を覚えた時点で私の負けだよ。実際、「異世界アイカ」を取得出来たら異世界に行けるって事を当てにしている以上、不測の事態が起こりうる、っていうのは確かなんだし。
それなら先に自分の苦手分野を確認して、そこを補ってくれる誰かと行動を共にするのは合理的だし、その為に他の「申請者」と行き会うシステムになっているんだろうから。
「……同行者強化極振り?」
「きょくふりって何?」
「一点特化の言い換え言葉」
「そうなんだー!」
ちなみにこの会話で分かる通り、私の火力が更に跳ね上がった。というか、威力が上がりすぎて反動で肩が痛い。おかしいな、防御力も上がってる筈なんだけど。……元が違うから、同じ係数をかけても差がつくのか。そうか。
どうやらひーちゃんはある程度大きさを変えられるらしく、私が地上を歩けば色々採取できることを教えてからは、中型猫サイズになって警戒してくれている。敵に関して言えば、感知範囲はひーちゃんの方が上みたいだ。
なお満華は自分の能力を上げるスキルはほとんど持っておらず、装備も最初に選んだものだけとなっている。武器は卵を選び、そこからひーちゃんが生まれたらしい。……この時点で、なんかおかしいなとは思ったんだ。
「……装備を、拾ったことが、ない……?」
「うん。ひーちゃんのいるところを豪華に出来る物はいっぱい拾ったけど、装備はないなー」
そもそもその「ひーちゃんのいる場所」というのが何なんだって話なんだが、どうやら話を聞くに、持ち歩ける「安全地帯」みたいなものらしい。何その便利なやつ。もちろん色々制限があって、その中には滞在時間もあるみたいだけど。
何より、そこには果樹があって、食べ物を放り込むだけで菓子パンとかに加工してくれる設備があるんだそうだ。何それ羨ましい。こっちはスポーツドリンクの方が味のする携帯食しかなくて、この自然あふれる感じの場所に来てようやく果物と山菜が食べられるようになったとこだっていうのに。
栄養はとれていても心は荒む。どれだけ食事っていうのが人間にとって重要か、恐らく世間一般からすれば美味しいものは食べていない私でも知ってる。
「持ち運べて嵩張らなくて、自分だけの「安全地帯」とか十分オーバースペックだと思う」
「そうなの?」
正直、私もいらない装備よりそっちの方が欲しい。いや、確かに「精密な長手袋」や「器用の指ぬき」には助けられてるし、たぶん今この銃を割と自由に振り回せるのは「重量のリストバンド」があるからなんだけど。
でも、うん。自分だけの「安全地帯」とかそんなの絶対欲しいに決まってる。どうやったら手に入るんだろう。ちなみに満華がどこで手に入れたかというと、卵を貰った時にくっついてきたんだそうだ。そうか……。
まぁ、どんな形でも、物自体があるなら、手に入れる手段はあるだろう。…………たぶん。
「…………たぶん着替えとか鞍とか作れると思うんだけど、菓子パンと引き換えでいい?」
「えっいいの!? よろしくお願いします!!」
「敬語になるほど……」
「ひーちゃんの鱗はね、すべすべでつるつるしてて撫でたら気持ちいいんだけど、流石にちょっと掴まるのは難しいの!」
「そのひーちゃん、それ聞いてちょっとショック受けてるけど」
「あぁっ!? ごっ、ごめんねひーちゃん、本当の事だけどつい!?」
「追撃はその辺にしてあげた方がいいんじゃないかな……」
ちょっとファンタジックにして翼を生やしたトカゲ、もとい赤いドラゴンのひーちゃんだが、思ったよりもその表情は豊かだったらしい。分かりやすいというべきか。ゲームみたいに感情アイコンが出てる訳ではないんだけど。




