他者と敵とそれぞれの相性
人数が多くなる影響なのか、11階層目からは迷路自体もぐっと広くなる。自然環境に近い状態で探索できる範囲が広がると、当然だけど移動も時間がかかるようになる。時間がかかると敵が復活して、戦う回数が増える。
もちろん私は外しさえしなければ大体は一撃で済むし、「存在感知」で反応を確認した時点で狙いに行くから、今のところ戦闘の疲れってものはほぼ感じてない。むしろ、「採取スポット」で素材を集める方が大変だ。自動回収がとても役に立っている。
とはいえ、疲れていないという訳じゃない。ここまでと違って足場が不安定だし、場所によっては視線が通らない。森の中を進んでいたら足元に気を取られ、「存在感知」の反応に気付くのが遅れてすぐそばまで敵に近寄られてたこともあった。
「慣れたメカな方だったし、遠距離攻撃手段を持ってなかったから良かったけど、危なかった……」
すぐそばの基準? 半径5m。それぐらいなら敵として出てくる奴らは大体数秒で詰めてくるし、構えて撃つまでどうしても1秒ちょいはかかるから、すぐそばだ。
ただ、流石にここまで来るだけはあるのか、他の人の存在を感知してもしばらくすれば離れて行ったり、こちらを追う様子であってもしばらく逃げていれば追いかけてこなくなったり、無理に追いかけようとしてくる相手はほとんどいないらしい。
これは助かった。今までの事を考えると、本当に助かる。非常に快適な環境だ。ずっとこうならいいんだけど。
「……クリア要素に、迷惑行為系の項目が入ってたりするのかな」
いや、まぁ、他人に頼る人間より、自分の実力を伸ばす人間の方が、先に進むのは早いだろうけどね。レベル上げと人材集めを言い訳に、同じレベルをずっとぐるぐる回っててもおかしくないだろうし。
そんな事を考えながら、草原から森の中の様子を窺う。草原と言っても草の長さがかなり長いから、膝立ちになればすっかり姿は隠れるんだけど。
さっき「存在感知」に敵の反応があったからな。何度か他の人との接触未満を経て、まだ今回同じ場所にいる誰かの場所は分かっていない。けど、そちらのものだろう敵とは既に何度か戦っていた。
「それにしても、随分と相性の悪い敵が出てきたなぁ……」
今までは何らかの温情だったのか、それとも偶然か。ここに来て初めての、恐らくゴースト系と呼ばれる相手だ。黒い靄を纏ったゾンビみたいなものが、ふわふわと宙を漂うようにして浮かんでいる。
そして何が厄介って、そのゴースト(仮)は通常の弾が効かない。それだけでも十分厄介なのに、恐らく体力が点数制……一定「回数」の攻撃を当てないとダメな類だった。
宝部屋で見つかる数も少なく、作るのもそこそこ手間がかかる属性弾。それをごっそりと持って行かれるのだから、出来れば戦いたくない。その敵をメインにしているその誰かとも急いで離れたい。離れなきゃずっとこいつが出てくるから。
「本当に……「採取スポット」で連射が出来るようになっていて、良かった」
幸いなのは属性弾ならどれであっても通る事と、威力の分なのか攻撃が当たるとしばらくその場から動かなくなるって事だろうか。固まっている間に属性弾を叩き込み続ければ、大体5から10発で倒れるのか、ボロボロと崩れるように消えていく。
まぁでも「アイテムドロップ」での入手物は別として、一応何か落としはするんだよな、あのゴースト(仮)。よく分からない骨の山とか、黒い石とか。アイテムボックスに入れていたら、いつの間にかマギゴールドに変わってるんだけど。
おかげで使い道が全く分からない。使えるとも思わないけど。何だろう。こう……あぁ、たぶんあれ、ジャンルが違うってやつだ。
「……それにしても、反応が無いな。今まではそれなりに探索したら、どこかでそれっぽい反応が確認できたんだけど」
問題は、その誰かもしくは誰か達の反応が、ここまで来ても全くないって事なんだけど。おかしいな、もう結構戦ってるのに。
立ち上がって周囲を見回す。遠くに見える天突くような高い塔は2つ。あの塔は次の階層への出口であり、この階層に居る「申請者」のグループの数だけ存在しているのが分かっている。
だから今は、最低でも私以外に1人がこの階層にいる筈だ。……筈、なんだけど。ちょっと集中して「存在感知」の範囲を最大まで広げてみても、敵と素材の反応以外は何も無い。
「……?」
まさか、もうすでに次の階層に行ってしまって、もういないとか? いや、まさかじゃなくて、十分に有り得ることなんだけど。追いかけられている時の私がそうだったんだし。
ううん……としばらく考えたが、答えは出ない。あちらが私より広い範囲の情報を得られるスキルを持っていたり、私の「存在感知」では分からない程強力な隠蔽系のスキルか装備を持っている可能性もある。
「……まぁ、こっちにちょっかいをかけてこなければ、いいか」
少なくとも、敵との相性は悪いからなぁ。接触してこないのなら、このままさっさと階層を抜けて、距離を離してしまおう。




