ストーカーとその狙いと2回目
念の為急ぎ足で階層を抜けてからしばらく様子を見てみたが、あの言葉通り、神父モドキな男性を含めた一団は、ストーカーを止めたようだ。他の人には話が通じて良かった、と言うべきか。
ただストーカーの技術……もとい、追跡の技術、どっちにしても追われる側としては嫌な技術は割と広まっていたのか、その後もちょいちょい私を追いかけてくる集団はあった。
そしてその集団のほとんどが私の銃が目当てであり、一部例外も明らかに私の性別を目当てにしていたので、今のところ全員を脅す形で追い払っている。精神が削れるからやりたくないのに。
『おめでとうございます。攻略コース「のんびり」レベル2最奥階層に到着しました』
で、そうやって結果的に逃げ回っていたら、レベル2の最奥階層に到着していた。いや、うん。途中から階層を数えて無かったのは確かだけど。
ゴーグルはなんか、縁の部分に刺繍を入れたり布を当ててカバーしたりする事で強化になるらしく、ゲームみたいなターゲットロックが見えるようになった。命中率表示と推測ダメージ表示もついてて、最初に見えた時は驚いた。
まぁとても便利なんだけど。そうやって命中率を具体的に見る事で、長手袋の補正も本気を出した感じがするから、とても便利なんだけど。ちょっと現実って事を忘れそうになるだけで。
『報酬ポイントの算出が終了しました。異世界アイカ取得用ダンジョンの完全突破証明書の発行条件は攻略レベル10の突破、あるいは全要素を網羅した上で攻略レベル6以上の突破となります』
気疲れで部屋の隅に座り込んでいると、そんな声が聞こえた。うん、無事に済んで何よりだ。そしてアナウンスの内容は変わらないらしい。
あの後ヘルプを確認してみたところ、全要素、っていうのは、マップ探索率とモンスター撃破率の事らしく、地図を埋めて全てのモンスターを倒せばいいようだ。とりあえず、読めた範囲では。
……ヘルプの仕様を確認する限り、まだ読めない条件がある可能性は、それなりに高いんだけど。
『今回は発行条件を満たす事が出来なかった為、申請者様には異世界アイカ取得用ダンジョンの再探索を行っていただきます。それでは、再探索を行う攻略レベルをお選びください』
これも前回と同じく床がせりあがり、その上にカードが乗って……凹みを左右から挟むように、カードが2枚置いてある。ん?
カードの下にある注意書きは同じだったので、置いてあるカードに手をかざしてみる。と、右側に置いてあるカードは「レベル3」で、左側に置いてあるカードは「レベル1」らしい。
どうやら途中で逆走する事は出来ないが、クリアした難易度にもう一度挑む事は出来るようだ。なるほど。
「だから完全突破証明書が必要で、その条件に攻略レベルの指定があるんだ」
簡単なところをうろうろしていても、装備と自分は強化出来ても外に出る事は出来ない、という事か。
……外に出る、って、外に出てどうなるっていう気もするけど。確かに体が丈夫になったのはいい事だけど、だからと言ってこの銃を外で撃つわけにも……。
「……異世界アイカ」
そこまで考えて、ふと気付いた。
「異世界対応アイシーカード。――「異世界」?」
何をいまさら、という話なのかもしれない。
これだけ……ここまで有り得ないだらけの場所で過ごしていて。自分にも、銃の反動と持ち運びという形で明らかな変化が起こっていて。それでもなお抜け落ちていたんだから。
あるいは……これこそが、本当に、あの人間的にはクズの部類である、戸籍上の家族の影響から抜け出す、その最初の一歩だったのかも知れない。
「異世界。……もしかして、ここを抜けたら……縁を、切れる?」
この日、この瞬間。
この不思議だらけの場所を、絶対に踏破する、と。
私の覚悟が、決まった。




