人恋しさと人間不信は違うもの
もし今の進行速度が同じくらいか少し上回れていても、このまま進み続ければ地力の違い(主に火力)で再び引き離せるんじゃないか、と、ちょっと思わなくも無かった。
それでもそこに留まって話をする、という選択をしたのは……まぁ、流石に何日もたった1人、というのが、そろそろ堪えてきていたからかも知れない。
「あぁ、やっと出会えた! 早速ですまないが君! そのNTW-20を譲ってほしい! 代わりに仲間に加えてあげよう!」
「嫌だ」
……そんな思いで出会った相手がこれだとは思わなかったが。何故こうも碌でもない相手にばかり遭遇するのか。
黒い髪をオールバックにした、おじさんと呼ぶと怒るかも知れない年齢の男性だ。ただしその恰好は、神父さんのような服の上から太いベルトを締め、そこに二丁拳銃を下げるというちょっとちぐはぐ感のあるものだ。
よほど返事が予想外だったのか、青い目を口と共に大きく開けて全力でぽかんとしている。が、何を理解したのか、ふむ、という感じで息を吐き、
「なるほど。それでは残念だが殺してでもうばっ!?」
と、滑らかに二丁拳銃を抜いてこちらに向けたので、その瞬間に足元を狙って撃っていた。もちろん弾は普通の奴だが、床に当たって撒き散らされる衝撃波は相当だろう。
実際、その男性は主に後ろ方向に吹っ飛んでいた。だけでなくまだ仲間がいるのか、開きっぱなしだった階段へと落ちていく。……悲鳴が何人分かまとめて聞こえたから、思ったより人数がいたんだろうか。巻き込み事故が発生してしまった。
しかし本当に滑らかに銃を構えてきたな。ゴーグルをつけて帽子のつばを引き下げていたとはいえ、躊躇いとか一切なしか。これはヤバい人間だな。この場所に適応したのか元々だったのかは分からないけど。
「――――にこの顔面偏差値をもってすれば何も問題ない!」
「いや思いっきり撃たれてるのにどの口が言うのよ」
「あれは照れていただけだ、実際には外れていたからな!」
「いや外れてこの威力ってダメじゃん。ミンチ通り越す奴じゃん」
「何でこう喧嘩を売っていくスタイルなのか……」
「はっはっは! いやぁモテるというのは辛いなばぁっ!?」
「えちょきゃぁあああっ!?」
そして、階段の方からこんな会話が聞こえて、思わず階段の縁を狙ってもう一発撃っていた。どうやら今度も巻き込み事故が発生したようだが、知った事ではない。
完全に敵だというのが分かった。それも、こちらの話を最初から聞く気が無い類の。周りはちょっとはマシなようだが、行動を止め切れていない時点でアウトだ。こっちがいいように食いつぶされるのが目に見えている。
となると、やるべきことはシンプルだ。ほぼ無意識でも出来るようになった装填作業により、次の弾がもう込められた状態で、声を張った。
「こちらは広い範囲を探知できるスキルを持っている。次の階層までついてきたら、今度は当てる。榴弾を使って全員纏めて吹き飛ばす。――次はない。分かったら、こちらを殺そうとした神父モドキを拘束して階段を上り切って大人しくするか、全員揃って前の階に戻れ」
こういう命令形の言葉って、自分が言われてきただけに正直吐き気がするんだけどな。でもここでうっかり丁寧な言葉を使うと、最悪「交渉の余地がある」と判断される。
こっちからすれば「交渉の余地がない」のだから、交渉テーブルにのせようとされるだけでマイナスだ。だから、しっかりとこっちの交渉自体を拒絶する感情、あちらへの拒否感を理解してもらわないといけない。
……何かひそひそ話してる感じがするな。距離的に、たぶん階段の途中で。あれ、途中で立ち止まっても押し潰されたりしないんだ。
「すいませんでしたー!」
「うちの変態がご迷惑をおかけしましたー」
「もし追いかけようとしたら縛り上げるか、1人だけで放り出すんでー」
「集団で行動してきたから、1人だとそうそう進めないと思うわー」
しばらくそんな気配がしてきたが、それが終わるとこういう声が聞こえて、下の階へ戻っていく足音が聞こえた。まぁ落としちゃったからな。あの階段を。もしくは、リーダー的な実力が一回り高い人だったのかもしれない。
それならそれで、強い分レベルが上がっている筈だしその分だけは頑丈だろうから、死んではいない筈だ。……拘束して出てきてくれる方が良かったんだけどな。「警戒リスト」に載せられるから。




