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規約と説明は良質な組織程面倒なもの

 なおその後、都市伝説だった筈の「異世界アイカ」とやらを取得しようとした動機やそこまでの経緯を色々な方向から聞かれ、それについて素直に答える事しばらく。


『特殊事例として審議及び再審査を行います。しばらくお待ち下さい』


 と、いう声を最後に部屋は静かになった。……放置か。放置なのか。

 とはいえこちらの動きぐらいは見ているだろうし、そもそも寝ている状態で着の身着のまま拉致された、という状態だ。スマホを持ち込めなかったのは……いや、それは別に問題ないな。むしろ完全に監視下から外れられたという解放感と安堵すらある。

 しかし目は覚めてしまっているので、とりあえず立ち上がって軽く体を動かしてみる。こちらも問題ない。しゃがみこんで床を触ってみるが、やはり長時間、もしくは長距離を歩けば、足にちょっとシャレにならないダメージが入るだろう。


「とはいえ、服を破って靴下にする、というのも、裁縫道具が無いとな……」


 まぁそんなの持ってないんだけど。洗濯物のボタンを着けなおしたりほつれを直すのは私の仕事だったので、出来なくはない筈だ。流石に服の数自体が限られている中で実行した事は無いが。

 出来れば松明も調べたかったが、さっきの説明に色々と不穏なツッコミどころもとい単語が含まれていた。特に、発行手続きの完了に必要な物、の、2つ目だ。武器って単語が入ってたぞ。

 ただその次にダンジョンって単語が出てたから、恐らく、あまりにも非現実というか準備や用意が足りないが、様々なゲームで戸籍上の妹のレベル上げや素材集めをやらされてきた経験からいくと……戦闘、が、発生するのはまず間違いないだろう。


「……」


 なので、少なくとも、体力を温存できる時は温存しておくべきだ。今この部屋には何もないし、通路もない。天井や壁が開く気配もないし、待つようにと言われているのだから、安全な筈だ。あの謎の声を信じるなら、だが。

 しかし現状他に選択肢はないのだから、信じるも信じないもなく言うとおりにするしかない。あの家での扱いを連想させて大変不本意だが、下手を打って不利な条件を付けられたらそれが原因で死にかねない。死にたくはない。だからあの家でも大人しくしていたんだし。

 ……しかし戦闘。命がけの。ほぼ間違くそれがある、か。どうしたものか。自慢ではないが対等な喧嘩なんてしたことがない。殴られたことはあっても殴った事はない。つまり、戦闘、という行動は全くの未知だ。つまり、いきなり剣やハンマーを渡されても、生き残れる可能性は低い。


「出来れば遠距離、長射程で減衰無しの高火力。射程と同じかそれより広い探知手段と気配を隠すか消す手段、可能な限り補給や修理は容易な類……」

『お待たせ致しました』


 希望が叶うとはあまり思わないが、方針として考えておく分には無駄にならないだろう。……と思っていたら、何の前触れもなく謎の声が聞こえてきた。一瞬変な声が出そうになったぞ。


『審議及び再審査の結果、異世界アイカの取得申請における必要条件には影響なし、このまま手続きを進めて頂くこととなります。ただし事例としての特殊性を加味し、初期設定にボーナスが付与されることとなりました。それでは説明を続行します』


 ……ここで必要条件が満たされなくなっていたら帰れたと思うんだが、そう上手くはいかないか。しかし何なんだ、必要条件って。


『異世界アイカ発行手続き中は原則として申請者様の世界の時間は停止しており、原則としてここ異世界アイカ取得用ダンジョンから出る事は出来ません。また発行手続きは長期に渡る可能性が高い為、申請者様は疑似的な不老状態となります』


 情報量が多い。

 現時点で既に情報量が多い!


『発行手続き中に死亡した場合はその時点で申請者様の世界に送り返され、その日のうちに運命力によって正式に死亡する事となります。また原則として発行手続きは申請者様お1人で行っていただくものですが、手続き中に他の申請者様と遭遇した場合は協力して手続きを進めて頂くことが可能です。ただし申請者様同士の戦闘による死亡は通常の死亡と同様に扱われますのでご注意ください。また――』


 瞬間記憶とか便利な能力は持ってないんだ、これを覚えるのは無理がある! 後で絶対に書面を要求しないと、無理だ!


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