早回しで駆け上がった到着点
結局戸籍上の妹に追われる形で進んだ私の足が止まったのは、50階層目を越えたところだった。
『おめでとうございます。攻略コース「のんびり」レベル1最奥階層に到着しました』
「攻略コースにもレベルがあるとか聞いてないんだけど?」
『これより攻略コース「のんびり」レベル1の評価及び報酬ポイントの算出に入ります。その場でしばらくお待ちください』
「録音の自動音声かな……」
『またこの最奥階層は申請者様個人の空間となっておりますが、共に行動し、合流したい方がいらっしゃる場合は、向かって左手の扉の先が共有空間となっております』
「……個人の空間って事は、向こうからこっちには来れないって事でいいの?」
階段を登り切った先はあの最初の部屋とほぼ同じ空間で、唐突に聞こえてきた謎の声に声をかけてみたものの、返答はなかった。左手の扉、と言われたので視線を左に向けると、そこには実にそっけない、取っ手がついている以外は壁と見分けがつかないほどシンプルな石の扉がある。
もちろんくぐる予定はないどころか、向こうからノックされても知らないふり一択だ。念の為、万が一にも「近寄った」と判定されないように反対側の壁まで寄っておこう。
上り階段があった側の壁にもたれてずるずると座り込み、長く息を吐く。しかし、疲れた。ノンストップだったのもあるけど、流石に41階層目を越えてからは十分敵も強かったからな。
「当たれば一撃、とはいえ、当たる前に攻撃して来たり、避けられたり、小さかったり、面倒だったなぁ……」
それでも威力不足には陥っていなかったので、ここまで駆け抜けられた。小さい敵を相手にする時になって、長手袋の器用が上がるという効果を実感した。明らかに何かの補正が働いて、狙いが勝手に修正されてたから。
しかし、レベル1。レベル1、かぁ……。5階層進むごとに難易度が上がってたから、その区切りでレベルが上がるごとに伸びていくとかだったら、レベル10まではありそうだなぁ……。
形的に狙撃銃ってやつだろうから、良く狙って慎重に撃つ武器なんだろうけど。……範囲攻撃が欲しいな。主に雑魚掃討用に。あのゴブリンの群れとか。
『報酬ポイントの算出が終了しました』
「うわっ」
『異世界アイカ取得用ダンジョンの完全突破証明書の発行条件は攻略レベル10の突破、あるいは全要素を網羅した上で攻略レベル6以上の突破となります』
疲れのせいか、ちょっと考え事をしつつ意識が落ちかけていた。そこへ謎の声が響き、慌てて意識を覚醒させる。
……っていうか、周回必須の方だったのか。全要素を網羅って何だろう。階層ごとの地図の完成、敵の撃破、隠し部屋の発見、とかならまだしも、レア敵の発見とか、招福屋の商品の買い占めとかがあったら実質無理だな。
『今回は発行条件を満たす事が出来なかった為、申請者様には異世界アイカ取得用ダンジョンの再探索を行っていただきます。それでは、再探索を行う攻略レベルをお選びください』
「全要素の網羅って何?」
『初の異世界アイカ取得用ダンジョン攻略完了を条件として、一部ヘルプが解放されました。そちらをご確認ください』
「返事があった……あ、どうも。後で確認します」
返事に返事をしている間に、部屋の中央の床が1人用の机ぐらいの大きさでせりあがってきた。ここは変わらないらしい。結果的に部屋の端に座り込んでいた姿勢から立ち上がり、その上を見る。
並んでいたのは、最初に攻略ルートを選んだ時とほとんど同じ金属のカードだった。違うのは枚数が1枚って事と、その1枚の手前側に何か、同じ大きさのカードをはめ込むような凹みがあるって事だ。
ついでにそのカードの下に、こんな文章が表示される。
『一度に所持できる攻略ルートカードは1枚までです。難易度を変更する場合は、前回のレベルの攻略ルートカードをご返却ください』
つまりこの凹みに最初貰ったカードを戻し、もう1枚のカードを取ると、レベル2の「のんびり」攻略ルートなダンジョンに挑めるのだろう。たぶん。
まぁ難易度的に、突破自体には何も問題は……と思ったところで、問題があった事を思い出した。そうだ。あれがいた。
「攻略している途中から、別の……申請者? にストーカー、追い回されるもしくは付け回されてすごく迷惑だったんだけど、もう二度と遭遇しないように出来ない?」
『攻略情報を再度確認致します。少々お待ちください』
明らかにあれはおかしいと思うんだ。というか、私が敵をかたずけた後をなぞるように移動するって、つまり楽をしてるって事じゃないか。もうここにいる事自体は諦めるけど、それってちょっとどうなのって思う。




