対策と対応と未知のなにか
フレンド申請をして自分の存在を知らせるか、という問いにはいいえを返し、「存在感知」にしっかりと注意を払いながら、もう一度ヘルプを隅から隅まで確認しなおした。
他の申請者へのシステム的な反応は「システムオプション」の「設定」で行える、という文章を見つけて「設定」へ移動。フレンド関係の自動申請を全部オフ、もしくは要確認に変更する。
ブラックリストは無かったが、マッチング率を下げた上で、それでも同じ階層に突入すると警告が出る「警戒リスト」というのはあったので、そこに戸籍上の妹の名前を入れておいた。
「これで、とりあえず出来る事はやった、かな……」
後は、あっちの集団に見つからない内に、さっさと次の階層に行ってしまうだけだ。……それでいくと、強化の時に静音性能を上げておいて良かったな。破壊音の方までは抑えられないから、距離が近くなればどっちにしろ居場所がばれるかも知れないけど。
まぁ大きな破壊音が聞こえたところで、ゴブリンなら攻撃跡どころか原形も残らないし、メカの方なら残骸は全部回収している。壁に弾丸がめり込んではいるけど、あれはしばらくしたら壁が直るのと一緒に消えているみたいだし。
それにいくらレベルが上がったって、私がこんな大きさの銃を振り回してるだなんて思わないだろう。家にいた時と印象が違い過ぎるし。
「振り回してるというか、振り回されてるというか……」
怒りも恨みも無いとは言わないが、命を奪う程じゃない。善の人間だとは口が裂けても言えないし、どっちかっていうとあの両親の子供らしくクズな方だと思うが、生きてる分には構わない。ただ、私には関わってほしくないだけで。
……自分の手を汚すのは嫌、というのが勝ってるだけかもしれないけど。腹が立つというよりひたすらに面倒くさいともいう。だから、逃げるに越したことはない。
なのでさっさと逃げる事にして、「存在感知」で万が一にも鉢合わせないように気を付けつつボスを撃破。ボス部屋を探索して、次の階層へ進んだ。
という事を、ざっくり15階層分は繰り返した。
「――――っっのに、なんでまだ、振り切れない……っ!?」
流石に難易度が上がってきたからか、壁の模様もそれなりに複雑になって来たし、敵も強くなってきた。メカの方は遠距離攻撃をするようになってきたし、ゴブリンは前衛後衛の役割分担をしている。
そう。ゴブリンが、いるのだ。もしかすると一度交わってしまったルートは二度と分かれないのかとも思ったが、少し前にさらに別の集団を感知して、そちらとも違う階段を選んで登ったら、恐らくそちらの集団が相手をしていただろうゾンビの集団は出てこなくなったから、そんな事はないのだろう。
階層にいる人数が複数であれば、その人数もしくは集団の数に応じたボス部屋が出現するのはもう分かっている。それに気づいてからは、ちゃんと全部のボスを撃破してから階段を登ってる。
「いくら様子を見ていたところで先に進む気配はないし、ボスを撃破して放置していても何故か階段を登らない。にもかかわらず、私が先に進んだらきっちり後を追いかけてくる。どうなってんだ……!」
正直、気持ち悪い。そろそろもうこっちから攻撃してもいいのでは、とも思ったが、一切加減が無いから、肉片以下になってしまう。流石にそれはちょっと。いくら気持ち悪くてクズで面倒くさくても、人間だし。
おかげで「安全地帯」でゆっくり休むことも出来ず、かなり疲れがたまってきている。ボスを倒す事でレベルアップすると体調も回復するのか、まだ倒れるほどではないけど。
そうでなくても心理的はプレッシャーがすごい。というか、ここまで来たら、何らかの方法で私の辿るルートを知っているんだろう。スキルか装備かは分からないが。で、問題は……どうやったら振り切れるんだ?
「……階層を、2つ以上離してみるしかないか」
出来る範囲の事は全部試してみた。その上でまだやっていなくて、振り切れる可能性があるのはこれぐらいしかない。というか、方法自体は真っ先に思いついていた。
じゃあなぜ今までやっていなかったか、というと。
「正直、あれから逃げる為だけに「壊せる壁」を見逃すのは、とても業腹なんだけど……」
もちろん、得られる物が得られなくなるからだ。……貧乏性っていうんじゃない。




