難易度的な意味の変化の内容とその理由
しばらくして「安全地帯」を見つけ、そこを拠点にしながら探索する事、数日。私はこの11階層目の変化を、階層を進んだことによる変化、と、言い切れないんじゃないか、という感じの違和感を覚えていた。
というのも、探索の範囲を広げていくと、ここまでの階層で出てきたのと同系統のメカな敵が出てきたからだ。一撃で沈むのも変わらない。だから、敵の種類が変わったという訳ではないのが確定している。
それに加えて「存在感知」で更新されていく地図を見る限り、かなり広い。今までの階層の倍はあるだろう。それなのに、「壊せる壁」の数は明らかに減っている。「安全地帯」を探すのも一苦労だ。というか、まだ次の「安全地帯」が見つかっていないから、探索の起点が動かせない。
「難易度が上がった。……っていえばそうなんだけど。それだけ、じゃない気がする……」
しっかり「マルチハイディング」と「存在感知」を意識して発動しながら探索を進めつつ考えるが、特にこれと言って思い浮かぶ理由はない。やっぱりもうちょっとヘルプを詳しく確認してみるべきか。
それにしてもゴブリンの集団は厄介だ。ちゃんと中心の個体に当てても、集団の広がり方によっては全部巻き込めないから。その場合でも相応のダメージは入るみたいで、追撃は楽なんだけど。
ここまでしっかり探索をしていて、銃弾が一杯ある宝部屋をいくつか見つけていたから、残弾に不安はない。それでもこの調子で数が出てくる相手が増えたら、「採取ポイント」へ撃ち込む弾の数を制限しないといけないだろう。
「どうも基本的にどの装備でも、強化には限界が無いみたいだからなぁ……。防御力にしろ攻撃力にしろ、上げておくに越したことはないだろうし」
無限に強化できる気配がしてるんだよな。「防弾のショートベスト」も「精密な長手袋」も。ついでに言えば、自分で作った「素朴なカーゴパンツ」も。大量の素材を手に入れる事が(普通は)難しいからだろうか。それともスキルの方の問題か。
となると、使っていない装備を強化しまくって招福屋に売ったら、相当なマギゴールドを稼げるのでは? 今度立ち寄れたらモリーに聞いてみよう。無強化状態でもすごかった銃に反応してたんだ。性能の良い装備ならいい値段で買い取ってくれる可能性は高いんじゃないだろうか。
装備の数は今で9個だし、「裁縫」で帽子でも作ればクリア条件の10個に届く。自分のレベルは分からないが、出来る限りの探索はしているし、見つけた敵は今のところ全て倒している。
「問題は完全突破証明書っていうのがどうやって手に入れるものか分からない事だけど、一番奥の階層まで行って、お金だけが足りないっていうのは嫌だしな……」
招福屋の出現も大抵ランダムみたいだから、「次」っていうのがいつになるかは分からない。何階層も先かもしれないし、次の「壊せる壁」を壊したら出会えるかもしれない。
とりあえず、自分では絶対に使わないけど欲しい人はいそうな「頑健な格闘用手袋」でも強化しておこうか。と、思ったところで、新しい反応が「存在感知」に引っかかった。
周囲に敵の反応がない事を確認してその動き方を探る。「存在感知」の範囲ギリギリだから、遭遇するとしてもまだ先だろう。集団で動いているから、ゴブリンか? いやでも、何か動きが違うな。隊列を組んでるっぽい……?
『他の申請者様の反応が確認されました』
「っ!?」
なんて思いながらメニューオプションの地図を見ていると、小さな枠が出現してそんな文章が表示された。他の申請者……他の人なのか、これ。
そういえばそんな説明もあったな、と思っている間に、その下に新しい文章が表示される。
『他の申請者様からは認識されていません。
フレンド申請を行い、申請者様の存在を知らせますか?』
……そういえば、確かに、そんな機能があったな。
なるほど、他の人。……あぁ、もしかしてあのゴブリンの集団、あっちの集団が辿ってきた道のりの相手か? あっちは私と違って集団で動いているみたいだし、それなら強大な1体より、弱い奴が群れてる方が楽だろうから。
しかしフレンド申請なぁ……。他人と組むメリットを見いだせないんだよなぁ……。と思っている間に、「存在感知」の範囲に入った、恐らくはフレンド申請を行える「誰か」の名前が並んでいく。
「…………」
そして、その中に。私にとっては絶対に歓迎できない、むしろ一切接触したくない、けれどあるのもまぁ当然の名前……「手中愛娘」の名前がある事を確認して、方針は定まった。




