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地獄へようこそ!  作者: 肉月
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第1章 7話 初戦闘!

 村長は顔を上げることに恐怖していた、村長自身、朝方の事があるまで楽観視していた。

まさか家の中にまで入ってこないだろうと、家畜への被害も大したことはない、組合にも依頼は出した、明日からも同じ毎日が続くだろうと、自分の娘も成人が近い、成人の儀には何を着せてやろうかと考えていた。甘かったもう状況が変わっていた。このままでは被害がエスカレートするのは目に見えていた。


実を言うと2週間前にいかにも駆け出しに見える冒険者が村を訪れていた。山を散策するといって出て行ったきり帰ってこなかった、別の村へ行ったのだろうと考えていた。違う。おそらくはゴブリン達にやられたのだ。そのことをお話しするべきだろうか。それでもし依頼を断られたら?依頼内容の再考?依頼料も増えるだろう。なにより新しい冒険者はいつ来られるのか、それまで自分達は無事に済むのか、堂々巡りの考えが頭を回り言葉を失っていた。



「お引き受けいたします。ゴブリンの事はお任せ下さい。」


村長は顔を上げる。来訪した二人の冒険者が姿勢を正して座っていた。


「……本当によろしいのでしょうか?」


「ええ。構いません。拉致されたのは今朝の夜明け前ということですので急がねばなりません。すぐに始めます。村長殿には用意して欲しい物があるのですが…」


レナが了承したことにより、ゴブリン退治はあわただしく開始された。


まずレナとニールの二人は今朝方に押し入られた家と逃げて行った茂みの確認から始める事にした。


「現場の状況を見てみたが村長の話と食い違いはなさそうじゃな」


「そーいえば、あのじーさんなんか隠してたな」


「ほー気づいたのか。そういう事には鋭いなお主」


「あぁ。なんか気配がもごもごしてた」


「もごもごって…まあなんかしら後ろめたい事があるんじゃろ。おかげで朝飯ゲットじゃよ」



レナは誇らしげに村長に用意させた携帯食を見せびらかした。


ちゃっかり人の弱みに付け込んだ結果である。ある意味たかりなのだが携帯食を渡すぐらいで何も聞かず依頼を引き受けてくれるなら村長としても大助かりなのだろ。あと水と外套を一枚用意させていた。



気を取り直して、レナは立ち上がり魔法の詠唱を開始する。


「響き 鐘を鳴らせ 記憶の大地よ 羅針の針を振れ………《大地の記憶(アースログ)》」


魔法が発動する。ニールが見る景色に変化はない。


「こっちじゃな。ほれ!お主何をしとる?置いて行くぞ!」


レナが使用した魔法は大地と共鳴して、違和感を察知する者である。大地が記憶した足跡、折れた茂みの枝などを正確に知覚し、獣が行う止め脚なども察知できる。レナの視界は暗くなり痕跡が鈍く光りだす。


痕跡を次々と見つけ森から山の奥にズンズンと歩を進めた。知性の低いゴブリンらしく痕跡は至る処にあった。村からかなり離れた所でところでレナの足は止まった。


(近いの…痕跡だらけで何が何やらじゃな…)


止まってしゃがみ込むレナの横でニールがズイっと前に出た。

「…わかるのか?」


「ああ、多分こっち」


かなり近いのだろうニールは小声だ。レナもその気配を察して口を紡ぐ。

迷いなくニールは歩き出し、山を登り進めた。

傾斜の緩い坂を登りきる直前でニールは止まり、木の陰に隠れる。


「いた」


レナも木の陰から奥をのぞき込む

自然にできたのであろう横穴がある。木の棒に獣の頭蓋骨を取り付けた目印が飾られていて見張りが2匹見える。ゴブリンだ。


「入口に2匹。中に入ってすぐに4匹、茂みの奥に大きいのが何匹かおるの」


「俺は大きいのを殺る。小さいのを任せる」


「承知した。」


レナの返事を聞き終えるとニールは住処の入口に飛び出した。


突然出てきたニールに入口のゴブリン達が声を上げる。すぐさま茂みの奥から大柄のゴブリン達が飛び出した。ホブゴブリンが3体。木を削り出して作ったであろう棍棒を振り回しながらニールに襲い掛かる。ニールは半身になり軽快な足さばきで回避する。ホブゴブリンの上段からの一撃を回避すると、もう1体から横殴りの振り上げに対し、後方に大きく跳んで回避した。眼前から茂みに消えたニールを追い3体のホブゴブリンは一塊になって、消えた茂みに飛び込んだ。続いて中にいた4匹と合流した入口の2匹はニールを追おうとしていた。


「はいストップ!」


こちらも続いてレナが飛び出す。声を聴いたゴブリンの1匹が振り向きざまに矢を放つがレナは事もないように矢を掴んでへし折る。両の手をポケットに入れ、口角を吊り上げる。瞳の奥が怪しく光り、脚を大きく踏み出した。


「氷霧に彷徨い抱かれて果てろ……《絶対零度(アブソリュートゼロ)》」


強烈な冷気が踏み出した右脚より放たれ、右脚から扇状に広がる。一瞬にして住処の入口付近は凍り付き、白だけの世界と化した。次の矢を構えようとしたゴブリンも、槍を構えたゴブリンも、木も、草も何もかもが凍り付き事切れた。


魔法の発動が終わっても入口付近には冷気が立ち込め、あたりの樹木に霜を降らせていた。レナはおもむろに近づき凍り付いたゴブリンの片耳をつまむとパキンッと折れ、取れてしまった。


その直後近くの茂みから轟音が鳴り、あたりを吹き飛ばすような強風が吹いた。強風は立ち込めた冷気を吹き飛ばし、巻き上げた砂が周りの樹木へパラパラと音を立てて落ちていった。


「そっちは終わったかの?」


レナが声を張り上げると、茂み中から首だけになったホブゴブリンを鷲掴みにしたニールが現れた。レナと目が合うと手にした頭をポイッとっ捨てる。


「おお!こっちは凄いな!真っ白」

ニールは見慣れない景色に興奮気味だった。


「お主言い忘れておったが、魔物の討伐は金になる。体の一部をはぎとって組合に持っていくんじゃ、木っ端微塵にしとらんじゃろうな?」


「…えっとたとえば?」


「魔物の種類がわかる耳とかが好ましいの。」

レナは摘まんでいたゴブリンの耳を指の先で弄びながらヒラヒラさせていた。



ここまで御覧いただきありがとうございます。

レナとニールの初戦闘が開始されます!

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