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地獄へようこそ!  作者: 肉月
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第1章 4話 お買い物

そろそろ店じまいされかねない時間になってきた。


何件か回ったところでようやく営業中の店を見つける。


入り口の扉の横はガラス張りになっており、人模した人形に衣服着させ展示しているようだ。店内は明るく、磨かれた石畳が一面に敷き詰められており、室内の中央には側面に細かい装飾がなされた長い立派なテーブル。そこに隙間なく畳まれた衣服が陳列され、壁にも所狭しと衣服が飾られていた。


店主と思しき人物はニールを見るなり一瞬嫌な顔をしていた。

服の要望や予算をなどを伝えるとすぐに営業スマイルを取り戻した。


自身はともかくニールは服装にこだわりなどなさそうと考えていたがどうやら自分の考えは甘かったようだ。

袖のある服は嫌だ、目立つ色は嫌いだの動きづらいだのと文句を垂れていた。特に嫌がったのは靴である。無理に履かせてみるとバランスが取れないらしくヨタヨタ歩いて転んでしまった。


儂の服選びも難航した。要望ははっきり伝えたが色や柄が気に入らない。


買い物を終える頃には店主は憔悴しているように見えたが無視した。


買う物を終え、店を出ると外は完全に夜になっていた。




食事処兼宿屋見つけた時には、食事の時間帯もピークを過ぎており、複数のテーブルがひしめき合う食事場は閑散としていた。食事に関しても料理自体ほとんど残っておらず、今晩の食事はパンにマグカップに入ったスープのみという質素なものが並んだ。


「しかし一泊の宿賃で手持ちが底をつくとは驚きの経済力じゃな。」


「お前の服が高かったんだよ。人の金で服を買いそろえておいて文句いうな!」


この体系に合う服装が合ってよかった。


嫌味を言ったが買えた服には満足していた。

真っ赤なワイシャツに革の袖なしベスト、ラインの入ったパンツスーツに革靴という舞台俳優のような恰好をしていた。


ニールといえばピッチリとした蘇芳(すおう)色のハイネックノースリーブのシャツに、濃い灰色のカンフーパンツを履いていた。


「結局靴は買わなんだのか?強情じゃのう」

やれやれといった物言いだがこだわりが強いのはお互い様である。


「あの靴とかいうの歩き辛いんだよ」

数年間ずっと裸足だった為か、靴があると上手く歩けないようだ。

まあ刃物を通さないような皮膚なので裸足でも特に不便がないのが驚きである。


「それでお主、パレモルに来た目的は何なんじゃ?」


「俺は探し物がなんなのかハッキリしないからな。ここでしばらく占い師を探すよ。これだけ大きい街なら一人や二人いるだろ?だけどその前に金稼ぎかな。おかげ様でほぼ一文無しだしな。」


「お主もしつこいの。儂もしばらくはこの街で金を貯めんとな。貯まったらおいおい極東の国に行くつもりじゃ。今回の事で儂も懲りたからの、隠れていてもいずれはバレるんなら住んだところで問題にならん国に行くまでよ。なんでも極東の国は神と魔が住む国らしくての、人の中に混じって暮らしてるそうじゃ」



「…神?」

ニールが聞き返した途端不穏な空気が漂う



「ん?なんじゃ神がどうかしたのか?」


「いやなんだろう…何か引っかかるんだが…」


「ふぅん。わかるぞ!神と魔が住む国とはいかにもうさんくさい眉唾じゃもんなあ」


ニールからの返事がない。

熟考するタイプではないと思っていたが、考え込んでいるのか黙ってしまった。


「…なんじゃ極東の国が気のなるのか?」


ニールは考えても無駄だと悟ったのか、カップにあるスープを勢いよく飲み込んだ。

「ああ。なんか思い出す気がする。俺も行きたい!」


「では決まりじゃな。共に極東の国を目指すということで。なぁに、このあたりの地図にも持っておらん秘境の国じゃ。気楽にゆるりと行こうではないか。女の一人旅は目立つ、二人組なら怪しむ物も少なかろう」


「こっちとしては道案内してくれるだけで大助かりだ。よろしく頼む!」


「なぁに、どこまで一緒かわからんがの。お主と一緒なら大抵のことはなんとかなるじゃろ」


共に水の入ったコップを手にし、お互いのコップをぶつけて乾杯した。


「とりあえず目先の金策だがどうする?俺は今まで城壁の壁直したりして金をもらってたんだが…」


「たしかにお主なら人一倍稼ぎになりそうじゃが、ここは国軍の駐屯地もある。兵士を殺しとるお前が城壁なんぞ直してたらどこでバレるかわかんぞ」


「悪いが客商売や頭脳労働は無理だぞ」


「どうせ商売するには住民登録せんとできんから儂にも無理じゃ。」


「住民登録?」


「この街に住んで生活してますよっていう証明じゃ。勝手に商いして金だけ稼いで税金も納めないんじゃ国も困るじゃろ。日雇いとかは免除されとるが、各地を回って露店を出してる連中も商いの証明書をちゃんと役所に出しとるぞ」


「うぇ。なんかめんどくさいんだな」


「…そもそもお主、入国の審査どうしとるんじゃ?」


「入国?審査?なんだそれ?」


……密入国者だった


「あのなぁ。身元もわからず、仕事にも就いてないやつどう考えても怪しいじゃろ。各地で問題を起こして逃げまわってる犯罪者じゃったらどうする。そんなやつを入国させるのか?させんじゃろ!だから入国の際は審査を受けてパスを貰うんじゃ」


「パスがないとどうなるんだ?」


「バレたら牢獄行きか、国外退去じゃ。さっき言ったがそこに住んでる住民は都市名の刻まれたパスをもっとるし、持ってないのは出生届の出されてない子供くらいじゃ。」


「えーじゃあ俺どうすんの?」


「だから言ったじゃろ?日雇いじゃよ。おまけにパスまで貰える。儂らにうってつけの仕事じゃ」

レナは下品に顔を歪ませて笑った。今日一番の悪い笑顔で…


ここまで御覧いただきありがとうございます。

次回はとうとう冒険者になるために冒険者組合に向かいます!

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