第1章 12話 採集クエスト
2人はパレモルより10里程南にある鉱山町ポンぺに向かっていた。
ポンペのすぐ近くには活火山があり、10年ほど前そこから金鉱脈が複数発見される。
ゴールドラッシュだ。ポンペは小さい村だったがゴールドラッシュで大きく栄えたものの、この活火山の火口付近に飛竜種ワイバーンが住み着き、採掘者に大きな被害が出ただけでなく村まで襲うようになった為、村にはかつての活気はないそうだ。
レナからこれから向かう火口付近の村の説明を聞きながらニールは馬車で引くような大きな荷台を引いていた。
「そのワイバーンとかいうの倒した方が早くないか?」
「かなりの数のワイバーンがいるそうじゃ。変に刺激すると村が巻き込まれかねん。」
「そうなのか?まあどっちにしろ銅証が受けれるクエストじゃないか」
「儂らの仕事は火の魔鉱石を採取する事、場所は火口付近じゃ。ワイバーンに見つからず密かに回収する。」
「バレた場合は?」
「そんなヘマはせんがな。即時撤退。村と組合とで以前ずいぶん揉めたそうじゃ。儂らが原因で村に被害がでたら賠償金だそうじゃ」
「誰も受けたがらないわけだ。よく銅証が受注できるな。」
「火の魔鉱石自体は簡単に見つかるからの。時期が悪いんじゃよ、冬眠明けじゃから。一年でこの時期だけなんじゃよこの辺うろついとるの」
「あぁだから依頼料も割高なんだ。…お!村だな!」
小さな川を挟んで反対側に話に出てきた街ポンペが見えてきた。
大きな石造りの通りに立派な並んだ街並み。街並みは発達しているように見えるが、人影も少なく使われなくなった大型の道具類が捨て置くように廃棄されている。聞いた通りさびれているというのは間違いないようだ。
「お主。あまりジロジロ街の方を見るなよ。金鉱騒ぎのせいで他所者は警戒されとる、揉め事はゴメンじゃ。」
「いやでも、もうすでに揉めてるみたいだぞ?」
「なに?」
急いで対岸に目を向けた。
人垣ができ住民と採掘者が言い争っている。
怪我人が出たのだろう、腕を押さえている少女ともう一人が倒れこんでいた。
この時期は街も採掘作業を中断しており採掘を許可していない。
他所から来た採掘者は知らないのだろう。この手のゴールドラッシュに便乗したいならず者が多く一攫千金目当てで来ている。彼らにとって町の事などどうでもいいのだ。
「めんどうじゃ。揉めているとわかればさっさと通り過ぎてしまうぞ…」
返事がない?
振り返るとニールもいない。
荷台がポツンと鎮座し、対岸からより大きな罵声が飛んでいる。
レナは顔を両手で覆い頭を抱えた。
---------------
メルシィは声を張り上げる。
目の前にいる彼らを止めなくては。
先に止めようとした父がナイフで刺され倒れている。彼らにはそんな事関係ないのだ。
それでも自分達の生活が脅かされるのを黙って見ているわけにはいかない。
ポンテの街は鉄鉱石が採掘される鉱山が近くにあり、代々鉱山業を営む労働者の街だった。
鉄自体はありふれている為、裕福な暮らしができるわけではなかったが、貧困喘ぐわけでもない。採掘は危険を伴うが、火山活動も安定しており、ワイバーンの生態も熟知している。安全とはいかないが、いつも変わらない毎日が訪れていた。
金鉱脈を掘り当てるまでは。
金脈は町を富で潤し発展させた。だが金脈は彼ら(ならず者)も連れてきた。
彼らはワイバーンの怖さを知らない。
この時期ワイバーンは温かい場所で巣を作り、冬眠明けの身体を元に戻している。
腹は空いているが、胃が小さくなっているので人間などは襲わず小動物を襲う。だが巣に近づけば話は違う。彼らは臆病だ。冬眠で弱った身体を守る為、巣に近づく者は集団で攻撃する。
一度攻撃が始まると空の広範囲を集団で巡回し、動くものを手あたり次第攻撃する。その範囲にはこの町も入っている。
町の人達はこの時期ほとんど外出すらしない。万が一ワイバーンが来れば命を落とす。この時期は注意し過ぎるなどということはなかった。遊んで暮らせる金を手に入れられるとしても死んでしまえば意味はない。それなのに彼らが来てからは、町は幾度も燃えた。
「やめてください!」
メルシィは離さない。外出する人が少ないのを良いことに、許可を取らず入山するつもりだ。ならず者たちを入山させまいと腕にしがみついた。
「離せクソガキ!」
髪を掴まれ地面に放り投げられ何本も髪が抜ける。
「誰か来て!…グゥッ…カハッ」
腹を蹴られ顔を踏まれる。
「うるせぇんだよこらぁ!」
丸まり守ろうとするが何度も腹を蹴られて息ができない。
蹴るだけ蹴って立ち去ろうとする彼らをそれでもズボンの裾掴んで離さない。
行かせるわけにはいかない。
また髪をつかんで顔をあげられる。顔のすぐそばにナイフが握られている、咄嗟に腕で顔をかばった。かばった腕が焼け着くように痛い。切り付けられたのだ。
それでも彼らは止めない。
倒れこんだ私の胸を踏みつけナイフ振りかぶっている。
「そこで何してる!」
誰かの声が聞こえる。ああ誰か駆け付けてくれたんだ。これで誰かが止めてくれる。自分がもしここで死んでも街は守られる。怒号が飛び交っている。みんな来てくれたんだ、もう大丈夫。
安心からか胸を圧迫していた重みが消える。
怒号が鎮まりかえり不思議に思い目を開けた。
そこには私を踏みつけいた男を掴み上げている知らない大男が立っていた。
ここまで御覧いただきありがとうございます。
少しでも作品が《気になる》《面白かった》と思われましたら
ブックマークやページ下の《☆☆☆☆☆》をタップもしくはクリックして応援していただけると執筆の励みとなりますので宜しくお願い致します。




