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私の彼は、  作者: みんなしずか
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彼の同僚の奥様とランチ

私の彼は契約社員だ。


今日は、彼の仕事仲間の奥様にランチに誘われた。


彼女の旦那さんの職場と彼の職場は、同じ系列で何度か共同で仕事をしているらしい。

何かとお世話になり、打ち上げに呼ばれた私もその縁で仲良くなった。

年上で人生の先輩でもあり、将来の私の在り方を想像させてくれる彼女は、

姉御肌で私を可愛がってくれるからとても好きだ。

「昨日なんて、制服が大きく破れてて、縫うの大変だったんだから。」

彼女は身振り手振りを加えながら話す。

たしかに、いつもボロボロで、砂や汚れをたくさんつけている制服を洗うのは大変だ。

私も苦笑いを浮かべる。

似た職種のパートナーを持つからこそできる会話を楽しんでいると急に、

「うまくいってる?ろくにデートもできないでしょ?」

すこし心配そうに聞いてくれる。

彼との関係は、以前は少しすれ違っていた時もあったが、今は特にいざこざもなく穏やかな毎日だ。

「まぁ、浮気する暇もないものね。」

うんうんと頷きながら彼女はホットレモネードを飲む。

こういうことをきいてくる彼女こそ、旦那さんと何かあったのだろうか。

「…。赤ちゃんができたの。」

おぉ!おめでとうございます。二人の愛の結晶だと思うと、自分のことのように嬉しい。

「でもまだ旦那にはいってないのよ。ほら。よく呼び出しがあるでしょう?

あなたのところは、夜はないかもだけど、こっちは深夜も急な呼び出しがあるの。

ほぼワンオペってやつ?そんなの私にできるのかしら?って」

彼女は早口で言う。

「結婚した以上こういいうこと(妊娠)もあるって思ってはいたけど、

あの人が仕事を生きがいにしているのを知っているし、まさか今できるとはね…。

足枷にはなりたくないのに…。」

最後は消え入りそうな言葉。気持ちは痛いほどわかった。

私も年頃の女だ、結婚願望だってある。もちろん彼と。

でもいきいきと仕事にむかう彼をみると、将来なんて突き付けたくない。もし、迷惑だったら?嫌がられたら?そんな解決策のない大きな不安がよし寄せて結局、口にでせないまま。

もちろん彼女の旦那さんはそんな人ではない。きっと喜んでくれるはず。普段から、奥さんのこと大事にしているって周りからみてもひしひしと伝わってくるからだ。そんな旦那さんが妊娠を喜ばないわけがない。大事な家族を足枷なんて思うはずがない。

けれど、どうしても不安になってしまう。最悪の事態を想定してしまう。

私には彼女に似た共感は寄せれても、その不安を完全には理解できないし、何を言ってあげればいいのかもわからなかった。ただ、きっとうまくいくというありふれた応援しか伝えられなかった。

「なにをビビってるんでしょうね。わたしらしくない。今日にでもおもいきって伝えてみるわ。」

彼女は、すこし困ったような、緊張しているような笑顔をくれた。

私は体調を気遣いながらも、少し大きくなったおなかを撫でさせてもらったり、おめでとうの気持ちをたくさん伝えた。


その日の夜、奥様から連絡が来た。

「彼、喜んでくれたわ!この子のために、この世が良くなるようもっと頑張るって言って張り切っちゃってる。あなたが応援してくれたから言えたの。相談に乗ってくれて、たくさん話きいてくれて、ありがとう。」

一緒に送られてきた動画には、満面の笑みで母子手帳片手に奥様のおなかを撫でている旦那さんが

映っていた。そこには喜びに満ちた「いぃー!」という声が響いていた。


奥さまの旦那さんは、悪の秘密結社の(契約)末端戦闘員(社員)




最後までよんでくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 悪の組織、1つじゃないんですね。 横のつながりがあるのも、面白いです。 [一言] 次回も楽しみです!
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