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77.役者が揃う

『これはまた、面白い組み合わせですね』

 呑気に感想を述べている仮面の男を尻目に、わたしはエーディクさんの後ろに寄り添った。何と言われようが安心するんです、二度三度あった程度の人にとやかく言われる筋合いはありません。

『マイヤに何の用だ』

『貴方にお話しする必要は……いえ、それもいいかもしれませんね。〈太古の力〉を持つ者』

 え、今エーディクさんのことを何て言いました?! 斜め後ろからなのでしっかりとは窺い知れないんですけれど、エーディクさんが少し、動揺した気がする……

『貴方とて、現状を快くは思っていないでしょう? 旧き神々が虐げられ、人と精霊の繋がりが薄まる一方のこの今の世を。私ども〈黒〉の力をもってしても、限界がある。なればこそ――あなた方に、請うているのですよ……』

言ってる傍から黒い靄みたいなものが見える! じわじわ広がってこっちに迫り来るのが、先刻よりもはっきり目に映る……! 落ち着いて、防がないと。水晶のように固い氷の壁を。日の光を照り返して闇を受け付けない、強い拒絶を。エーディクさんの後ろで震えながらだけれど、そのイメージをしっかりと思い描いた。やっぱり、彼がいてくれるだけで安心する……これなら、いけるかも。

『闇の中の光……制御の難しいところを、よく扱いになられる。やはり、放っておくには惜しい力をお持ちです』

「危険を防ぐことに必死なだけですよ! 大した力じゃありませんから、本当に放っておいてくれませんか!」

『……確かに、今のままではうまく活用できていない、ともとれます。そうですね、そうなるとやはり……』

 男の目線がわたしからエーディクさんのほうにずれました?! すごく嫌な予感がしますが、今のエーディクさんは〈光〉の力をやや強めに出してわたしの〈力〉の防壁を後押しするようにしてくれています。この状態のわたし達に、一体何をする気なの?!

『ここに直接』

『?!』

 男が芝居がかった動きで滑らせる指先から、ものすごい速さで、一条の黒い針のようなものが空を切った。それはエーディクさんの眉間にぶち当たって消え、彼が額を押さえてその場に膝を折る。

「エーディクさん?!」

『やはり、意外に脆い』

 わたしも動揺してしまったので思い描いていた氷と光の壁が崩れそうになる……いやダメだから! ここでわたしが彼を守らなくてどうするのさ?! エーディクさんを庇うようにちっぽけな両腕をいっぱいに広げて彼を抱え込み、もっと強固な〈殻〉のイメージを思い描く。とにかく、彼だけは守り通すよ、絶対に!

『マ……イヤ、俺から、離れて、』

「嫌です!」

 いつぞやの夏に起きた炎の暴走に似た兆候が出かけたんだけれど、あれと同類のものならわたしが抑えることができるはずなんだから、自分だけ逃げるとかそういう選択肢はありません! ローシャさんあたりが気づいて来てくれる可能性もあるし、なんとかやりきるつもりですから!

『――そこで待て、霜と月の申し子』

『そなたが力を出しすぎても、うまくはゆかぬ』

 え、この声久しぶりなんですけど。ふっと明るい薄茶色の影が目の端をよぎったかと思いきや、そこに〈スィム〉と〈リグル〉の一羽と一匹が、わたしとエーディクさんを囲むように陣取った。

『〈炎〉の助力は、〈黒〉に抗するためのものだ』

『跳ね除ける前に消してはいけない』

 う……ん? 発熱したからって、あまりに早く解熱剤使いすぎてもよくないってことでしょうか。この解釈が合ってるかどうかの自信はないんですけど、すこし腕を緩めて、エーディクさんから半歩くらい距離をとった。

『マイヤちゃん! エーディク!』

『お二人とも、大丈夫ですか?!』 

 ローシャさんと、デニスさんも来てくれた。精神的にはすごく余裕ができたんだけれど、エーディクさんから目が離せない……

『聴衆が増えたようで』

 そして最初から余裕シャクシャクの仮面の男の言いようが、また憎ったらしい。

『さて、この観劇の顛末は、一体どうなることでしょうね……?』

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