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69.女6人、寄るとどうなる

『ようやく呼んでくれた』

『貴女のこと、ずっと見てたのに』

『あんまり私達の〈力〉を使ってくれないし』

『気づいてくれなかったし』

『もー』

 ……こんなに沢山いらっしゃったんですね……夜に精霊に会う時間をつくってみたところ、〈夕暮れ〉〈深夜〉〈夜明け〉のオーロラことゾーリャ三姉妹と、〈明〉〈宵〉の明星、ズヴェズダー姉妹がわらわらと集まってきました。きらきらと華やかさを降りまく彼女達は、レーナさんほど肉感的な印象はなく、外見年齢に限っては雪娘よりすこし上に見える。

「最初にフォークスまで辿り着く時に助けてくださったんですよね、その節はどうも」

『あれはわたしー』

『わたしもいたのにー』

 たぶん〈夜明け〉のゾーリャと〈明けの明星〉ではないかと思われる、他の女神達よりやや淡い色合いの薄衣を纏った二人が応えた。たくさん重ね着してるほうがゾーリャで、キラキラ感が強いほうがズヴェズダーだと思う。


「それで、〈月の翁〉や皆さんのお考えを聞きたいのですが」

『爺様たちはとにかく「力を見せつけてビビらせてやれ」ってつもりらしいよー』

『それでいろいろ条件に合った存在を引き寄せたよのねー』

『最初はこの世界の存在で適当なのを見繕おうとしたんだけど、いろいろ邪魔が入ってうまくいかないから、「いっそ思いっきり離れたところから」呼んだんだって』

「……そうなんですか? 邪魔っていうのは、どのあたりから」

『南の信仰の意思で囲われちゃったとか。幼いうちに発覚すると奴らの〈洗礼〉で力を封じ込められちゃうのよね、私達の声が聞こえなくなって困るのは人間のほうなのに……』

『自然の力の流れをはやく読んで、私達でもどうにもならない〈力〉の暴走を避けたり軽減したりするための繋がりなのに。気づかなくしちゃったら困るじゃないって話』

『あとは〈炎〉〈太陽〉の連中よねー。南の信仰を快く思ってないのは同じなんだけど、私達〈夜〉や〈冷気〉の眷属とは根本的に相性が悪いから、なんでか爺様たちの邪魔する方向で動いてるのよ、なんでか』

『そう、なんでか』

 あれー……〈炎〉〈太陽〉ですかー……それはやっぱりそっちの事情も聞かないとわかんないかなー……

『私達は月の爺様付きだけど太陽との橋渡しもしてるし、雪の娘も春の女神の力を継いでるから、できれば全体を穏便に済ませたい派なんだけど』

『雪娘がいちばん気にしてるのは……』

『えっそこ言っちゃっていいの』

『言ったら爺様達が……』

 何、みんないきなり口が重くなって! 話が続けにくくなってきたな。

「えー……つまるところ、〈月〉や〈霜〉の翁らの機嫌を損ねないように意図を汲んで、でもなるべく過激なことにはしたくないんですよね。なんとなくやれることが見えてきたかも」

 そう、この国全体をとりまく流れからいったら、文明の進んでいる南の宗教の導入は避けられない。でも、自然の力との結びつきを断ってはいけない――元の世界にいた頃だって、普段は忘れていても、稀に起こる異常気象の恐ろしさは痛感していたものね――精霊達との繋がりは維持しつつ、外来の思想との折り合いをつけるには、どうしたらいいか。わたしや里に住む理解のある人達で、できる範囲でやるべきことは何なのか。

「わかりました、やれる範囲でやってみます。でも、微々たる努力でしかないかもしれませんから、あんまり期待しすぎないでくださいね」

『うん、頑張れ!』

『とりあえず爺様達に真っ向から逆らわないこと、これ大事だから!』

 そこいちいち強調するんだ、よっぽど怖い人達なんだな。まあ、〈霜の翁〉に関しては、一息吹きかけられただけで凍死とか伺ってますからね。〈月の翁〉のほうは異界の門を繋ぐ力を持っているとも聞くし、どっちにしても逆らえる気がしない。

 ひとしきり話を聞いた後に、彼女らは軽やかな足取りで夜空に消えていった。最後に、ほとんど喋っていなかった、いちばん落ち着いた佇まいの女神――〈深夜〉のゾーリャが、ゆっくりと一礼して、そして去った。


『……えれぇ喋ってったな。半分くらいしか聞き取れなかった』

 庭先で待っていてくれたローシャさん、エーディクさんに迎えられて、家の中に戻った。

『どうだった、今後の指針にはなったのか?』

「なることはなった……んですが、ひとつ気になってることがありまして」

 ああもう、溜息が止められない。

「どう考えても、これからやることが地道すぎて、一朝一夕で成し遂げられることじゃないんですよ……ね。それってつまり、彼らの願いを叶え終わるのが、ものすごい先になるってことで。それが終わらないと、たぶん彼らはわたしを解放しない」

 重苦しい沈黙が、周囲を包んだ。二人の表情も思わしくない。

「わたし……これから、どうなっちゃうんだろう」

 二人に答えられることじゃないのに。それでも、言わずにはいられなかった。

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