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60.急転直下

『なーんか面白い事が起きてるみたいだよー』

 ローシャさん台詞が棒読みです、面白くない事が起きたみたいですね。ひさびさにオリガさんの家でエーディクさんもデニスさんも集まってるんですけど、どんな話になるんでしょう。

『モルジのスヴャトザール公が、今年の納税を拒否したんだと』

「え?!」

『お耳が早いですね……私も先日知ったばかりですよ』

『モルジのほうから直接聞いたからな。隠し事できると思うなよ』

「の、納税拒否って、やっていいものなんですか……?」

『勿論よくない。大公側の対応はどうなんだ』

『当然、大公は大激怒。反乱とみなして鎮圧にとりかかるだろうけど、この時期だからな。冬までに決着がつかないんなら春まで持ち越しだろうし、そうなりそうな気がしてる』

 えー、わかんないことが多すぎて状況把握が追いつかない……


「あのー、こんな質問して何ですが、まずモルジ側が納税拒否に至った背景には一体何があるんでしょう」

『つまり「こんな重税払えるかやってらんねえよ」ってことだな』

『それが目に見えてたから、私だって減税案出すの必死だったんですよ……』

『グレーブ達の様子が妙だったから、思っている以上に深刻なのかもしれんと思っていたが、また随分と思い切ったな』

「え、ええと、特にどのへんの負担が高いんでしょうね」

 それまで黙っていたオリガさんが、ゆっくりと口を開いた。

『単純に、豊かな生活を目指そうと思えば負担は高くなるもの、ではあるが。ものによっては最初は負担でも、便利になってのちのちそれが軽くなっていくのであれば、取り組む価値のあるものもあるだろう。ただ、南の教義の場合は、そこに疑問を持ちたくなるものもあるようだね』

『そう思われても仕方のないものも、あるかと思います』

『普通に建造物だけでとんでもねーとは思うけど。内部の装飾もこれでもかってくらい凝っちゃいるけど。俺としては儀礼の時の、あの歩く金塊みたいな大司教様がな……』

 ローシャさんがげんなりとした顔で教えてくれた。確かに、モルジの寺院も結構すごかったんだよね。あれよりさらにゴージャスなのが都の大寺院らしい。さらに儀礼式典になるとまた、とんでもない豪奢な祭服を纏った大司教様にお目にかかれるんだそうだ。

『建造物に関しては技術の追及につながるわけだから一概に否定はできないし、そういう贅沢品のやりとりで経済がまわっていって雇用が確保できる、という場合もある。それに権威を示すために必要、という考え方も場合によっては侮れないものなんだが』

「それで現実に国民の生活に支障が出るまで不満が集まったら、やっぱりやりすぎってことですかね……」


『それで、今後の北東部に出る影響についてなんだがね』

『モルジのほうは要するに大公側の出方次第、向こうがやる気なら迎え撃つってことだろ。リディニークがついてるも同然だから、戦力でいけばモルジは負ける気しねえだろ』

『大公側が見せしめに粛正し終えるか、折れて独立を認めるか……本当に、すぐには決着つかなさそうだ。辺境の農民の反乱とはわけが違う』

『今のところ、大公は直属軍のみで鎮圧にあたる予定のようです。カラノークに対して動員命令があったわけではないですが、長引けばどうなるか解りません』

『ヤーシリツァは遊牧民に対する抑えだから、動かせないわけだしな。兵糧の徴収なり徴兵なり、何かしらこちらにも負担がかかってくるだろう』

『そういう懸念もあるだろうが、北東部は以前の任期中の評価がよかったスヴャトザール公を支持する民意が強いからね。ことによると、モルジ側につこうという動きも起こるかもしれんね……』

『そのへんちらつかせてさらに減税交渉とか、いけますかねー』

 わりと議論が白熱、してきたところで。


『ひとまず、今日はこのあたりにしておかんとね。おのおのがた、冬越し準備の手伝いに行っておいで』

『そうでした……』

『やべ、忘れてた!! 行くぞエーディク!』

「あ、わたしも行って来まーす!」

 物騒な情勢の把握も大事だけど、冬越しの準備はもっと大事!! ですよね。腹が減っては戦はできぬ、というのは、本当に真理です。

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