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57.腹を割ったり探ったり

『〈黒い精霊〉というのは私の地元での呼び方ですが、マスリーナの教義ではひとくくりに〈悪魔〉と言い切っていることもありまして。これに冷静に対処できない連中がまた、やたら騒いだり糾弾したりとにかくウザいんですが』

 デニスさんてば、だんだん言葉がえげつなくなってきてるなー、今ちょっとうっすら怨念みたいなものを感じたんだけど、何か実体験であったんだろうな。

『教義での通り一遍の祈祷というのは、基本的に祈祷者の精神力頼みでして。いわゆる根性論なので、ある程度オールマイティですが、強大すぎる存在に対しては負荷が強過ぎ、要するに気合い負けするわけです』

「はー、そういうものなんですか」

『真面目に祓う気のある人は、精霊の由来をつきつめてなるべく周囲を有利な状況に持っていくわけです。憑かれた者の家庭環境の調査および改善などで、祈祷の精神負荷をなるべく軽減するんですけれど』

 ただ単にお祈りすればいいってわけじゃないらしい。これはヴェドゥーンの〈力〉も似たようなものかな。その精霊の性質を掴んだり環境を整えないと、うまく使えないものね。

『で、〈黒い精霊〉のうちの雑魚というか〈器〉の小さいものは、人の多い都会には特に掃いて捨てるほどいます。それを祓うくらいなら然程の苦労はしません。再度憑かれるのも早いんですけどね――そのため寺院で「懺悔の場を設ける」という祈祷負担の軽減方法が既に定着しています。定型化しすぎて型通りにしかやらない祭司も増えてますが』

 いわゆるマニュアル対応って奴ですかね、それは確かに、やりすぎると心が籠らなくなるかもなぁ。


『ただ、これが地方に行くとちょっと感触が違うんですよね。あくまで私の感覚ですが、規模が大きく力が強く、そう簡単に動いてくれなさそうなものだったり。あと、その地方の気候を司る精霊に繋がるものも多いんですよね。南なら日照り、北なら寒波、沿岸なら嵐や津波、山なら地震といった具合に』

 自然の力ですか、ちょっと不穏な方向に繋がって来た気がする。だって、どう考えてもヴェドゥーンと無関係じゃない話ですよ……。

『エーディクさんはどうも、都市の生まれのようですが地方タイプの〈黒い精霊〉に煩わされているように見受けられます。なので今まで、祭司の対処が見当外れだったのかもしれません』

「それって、対処が合えば何とかなるってことでしょうか」

『いや、ぶっちゃけそれでも厳しいです。先程も言ったように、最初から力の規模が違いすぎる――もしかしたら、〈チェルノボーグ〉に通じているかもしれない』

「え……?」

『〈黒い精霊〉を統べる上位の存在を〈黒い神〉、チェルノボーグと呼ぶんですが――もしかして、こちらでは浸透している呼称ではないのでしょうか?』

「え、ええ、たぶん北部ではあまり聞かなかった、かも……」

 何だろう、大方把握したと思ってたのに。やっぱり付け焼き刃の限界かな、まだまだ勉強しなきゃいけないことがありそうだ。デニスさんは特に南部の伝説には詳しいみたいだし、宗教観がなんだかちょっと冷めていて狂信的な感じではないので、彼がいるうちにいろいろ教えてもらったほうがいいかもしれない……

『まぁ、エーディクさんが心配ということでしたら、とりあえずは着かず離れずの距離で見守ることが大事です――愛ですよ、愛。素敵な言葉ですねぇ』

「……あの、言いたいことはだいたいわかりましたけれど、なんでデニスさんが仰ると胡散臭く聞こえるんでしょうかね」

『心外ですね、私は至って真面目に対策を提示しているのに』

 そう言いながらも面白そうな笑みを崩さないデニスさんを――完全に信用するのはちょっと、やっぱりやめたほうがいいかもしれないと思った。


「エーディクさん、最近の体調はどうですか?」

『今のところ、目立った問題はないが……済まないな、心配かけて』

「あんまり気負い込みすぎないで下さいね! わたしが貧血で倒れたとか寝不足でフラフラしてたとか、しょっちゅうやらかしてるのに比べたら全然、大したことじゃないんですから」

『おや、今夜はキノコのレパーペースト炒めですか、これはまた精のつきそうな料理で』

『ああ、つまりマイヤが……大丈夫なのか』

「そこ人の心配してないで自分の心配する! 食べたいものがあったらちゃんと言いなさい、でないとわたしの好きな物ばっかりになりますよ」

 相変わらず変なことだけはチェックが細かいんだから! 他の人の前で言い出しかけるとか、デリカシーのあるんだかないんだかわかんない言動ができてるうちは、まだ大丈夫ですかね。

『いや……俺は本当にこのままで充分なんだが……』

『私も全く不満はありませんが……あ、そういえば、葡萄酒を一樽ずつ配ったところでしたよね。これに合わせて飲みたいですねー』

「デニスさん、かなりいける口なんですね……教義で飲酒制限とかないんだ」

『おや、知らないんですか? 有名な話ですよ、大公が飲酒禁止の宗教の導入は嫌がったんです』

『あったら絶対に国民が納得しないだろうからな、それこそ問答無用で反乱が起きる』

 うわー、本当に骨の髄まで酒呑みの国なんだー……。

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