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50.ガールズトークは侮れない

 冬の間にエーディクさんが作っておいてくれた、白樺の皮のサンダルを履いて。軽くなった足取りで掃除して洗濯して。スヴェータさん達と、持ってきた亜麻布で何を作るか相談して。

『ところで、旅の間に何かわかったことはあるかい』

「いくつか気になることがありましたけど……本音を言うと、まだわからないことのほうが多いです」

 オリガさんと話しつつ、この春に訪れた場所と、そこで経験したことを思い起こしてみる。モルジでは、ざっくりと北部全体に伝わる伝説、および北西部との微妙な違いを把握した感じ。あとは占いで明確に『冬の守護がある』と告げられたこと――実はみんな極力口に出していないのだけれど、冬を司る存在って言ったらアレだな、と嫌でも目につく御方がいる。とっても厳格で敵にまわしたくない畏怖の対象なので、なるべく遠回しに呼んでいるのだけれど。

 そして、その前提からの繋がりで、白い髪の女の子が何者なのか、それも推測できる。ただ未だに、彼らがどんな意図でもってわたしを守護しているのかがわからない。

『何だろうね、気に入られたから攫われてきたんだろうかね。もし彼らがそれしか考えていないようだったら、諦めてここで気楽に過ごしてもいいんだがね』

「……そうなると……思いますか?」

『思わんね。冬の御仁がそういう性格だとは思えんのでね……』

「はぁあ……」

 あぅ、オリガさんの前だというのに気の抜けた溜息をついてしまった。どうにも手詰まりな状況なんだよね……

『ひとつ言える事は、〈冬の御仁〉に何かもの申すより先に、〈白い娘〉の助力をできる限り引き出しておいたほうがいいだろう、ということだろうかね。おそらく娘のほうが、話の通じる性格だろうからね』

 だいたい納得できた。でもそれってやっぱり、冬が近づいたらって話でしょうかね。だとすると、夏の間に何やってればいいんだろう……


「……あと気になってることがありましてね、〈水〉なり〈山〉なり、何かしら神や精霊の間で動きがあるらしいってことなんですよ。なので、もしかしたら〈冬〉にばかり目を向けていて済む問題じゃないかもしれない、ってことなんですが」

『なるほど。そこはそれぞれ、縁の深そうな連中に注意するように言っておこうか――しかしどうも長期的な話になってきたようだね、あまり長くなるとお前さんの適齢期が過ぎてしまうかもしれんね』

「はい?」

『お前さん、元いた場所に、好いた者でもおったんではないのかね』

「ななななな何言い出すんですか、そんな人いませんよもーまったく!」

 終わった話ならありましたけどね、ああもうせっかく忘れてたのにー!!

『で、歳は24と』

「この里の基準で言えば嫁き後れ、と仰りたいんでしょうか……?」

『いや何、子供を産むにはまだまだ充分若い。あとはもうすこし家事が手際よくなれば問題なし』

「え……いえあの、そういう問題だけじゃないと思うんですけど」

『あまり近隣でばかり血の繋がりを持つと、丈夫な子が育たないと言われておってな。お前さんは特に肌が丈夫そうだし』

「オリガさぁん……」

『欲を言えばエーディクは地元の娘と添わせて、そのへんに見飽きたローシャにはお前さんくらい毛色の違うほうがうまくいくんではないのか、などと考えていたが。さすがにそこまで年寄りが口を挟むのも野暮だろうしの……しかし孫の顔を見るまでは死ねんという思いもあっての』

「もう孫いらっしゃるじゃないですかー!!」

『いや何、年寄りの決まり文句みたいなものだから、そこは気にせんで。ようはあまり根をつめず、少し息抜きをしてはどうかの。せっかく夏も近づいてきたことだし』

 息抜き=婚活の構図がよくわかりませんが、オリガさんが半分くらい冗談でもう半分はかなり本気で言ってるのが感じ取れた。適齢期の子供を持つと、そんな考え方になるもんなんだろうか……


 そして夜。いつもと何となく違う夜。

「レーナさんありがとう、いてくれるだけで嬉しいよ〜」

 人目がないので薄手のワンピース姿でくつろいでるレーナさんに、冷ましたハーブティーとお茶請けのジャムを用意しました。なんだか親の目を盗んで夜更かししてる気分。

『たまたま暇だっただけよ……別にあたしでなくても、夜の話し相手はいると思うけど』

「あー、〈キキーモラ〉とかも呼んでみましょうかね。言い伝えによっては、あんまり話しかけないほうがいいかもって聞いてたりするんですけど」

『たまに少量の食事を貰うってのが、あれの好きなご褒美みたいだけど。でも、面と向かって手に余るお願いをされたり、高価すぎる贈り物をすると逃げるから』

「へー……」

『精霊にはそれぞれ〈器〉があって、力量に合わないことはできないもんなのよ』

 せっかくアドバイスいただいたので、縫い物などをやっている作業場の近くに、スープを入れた小鉢を置いておいた。気紛れなお手伝いさんだけど、今後も気兼ねなくお付き合いできますように……

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