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49.人の出入りに右往左往

 何でそこまで怖がられているのかわからないくらい、カラノークからクロートへ、そしてクロートからフォークスへの旅路は滞りなく進んだ。人の噂ってあてになりませんねー。

 日数をチェックしていたエーディクさんによると、春分から56日ほど過ぎていて、太陽暦に換算したら5月上旬ってことになるんですが、まだ肌寒いこともあり。夏って、どのくらい暑くなるんだろう……。

『マイヤお姉ちゃんだぁああーっ!』

 外で遊んでいたオリガさんのお孫さん二人が、タックルで出迎えてくれました……覚えててくれたんだ、ちょっと感動。

『おう、随分のんびりしてきたもんだな』

 ほとんど話してなかったセーヴァさんまで声をかけてくれたり。あ、ローシャさんの頭をガシガシやってる。ちょっと痛そう。


 フォークスは宿屋がそもそもなくて、旅人が来た場合、たいていは里長の家に泊めることになっている。里長ってのはつまりオリガさんとこですけど。トーリャさんと使用人の方々を泊める場所を確保するので大忙しに! 食事の用意も手伝ったりで、正直帰還の余韻に浸ってる暇が全くない。

『あのさー俺、今日はエーディクんとこ泊まりに行くから』

『チビ達も連れて行け』

『わーい!!』

 ナージャちゃんとレーリクくんの姉弟は、これが初お泊まりらしく。ベッドは私とナージャちゃん、暖炉の上にローシャさんとレーリクくん(暖炉の上のほうが長椅子のベッドよりやや広いため)、ふだんローシャさんの使っているところにエーディクさん、という振り分けになった。

『コイツ寝相悪いんだよな……』

『ローシャは父ちゃんよりデカくないから、おれは楽』

『ねぇ、他の町のお話聞かせて!』

 めっちゃ賑やかだ、疲れてはいるんだけどなかなか寝れそうにない。と、思ったら……

『エーディク、もう寝てる』

『あ! こいつ時々急に寝落ちるんだよな、このタイミングでとか狡いだろ!!』

『起きろよー』

「疲れてるんだと思う、そっとしておいてあげて……」

 賑やかで懐かしくて安心するフォークスの、前よりも暖かくなった夜が過ぎていった。


 トーリャさんが持ってきたチトルースの塩漬けや南海の小魚の油漬け、その他干物などはおおむね好評だった様子。代わりに蜂蜜や蜜蝋、筆記用に形を整えた樹皮、里の人が冬の間に作った革製品、白樺の細工物などを積んでいった。トーリャさん的にはカラノークで入手できるものより安いものに目をつけていたらしいけれど、輸送費と需給バランスに関しては悩ましいところらしく『その辺を考えるのは、これからかな。新領主様の活躍にも期待しようか』と。治安によって輸送リスクが大きく変わるから、そこを読むのも大変らしい。

『正直、すぐに治安がよくなるとは思ってないからな。お前らみたいな連中が護衛に確保できてるんなら、むしろ今のほうがチャンスって気もするんだよな。先の話はどうあれ、数年はそれで稼げるだろうから……』

『定期的な護衛かー。ドルジーナに復帰するのとどっちが効果的かって話だよな』

『ドルジーナはかえって小回りが利かなくなるからな。被害を受けた後の事後処理になって、後手後手に回りかねないし、俺は、やるとしたらフォークス・カラノーク間に集中して、自分のペースで不審な輩を潰したいが』

『治安の変化を読むなら、やっぱり少なくともカラノークに定期的に顔つなぎしといたほうがいいんだよな……』

 今後の取引を考えているトーリャさんと、地域の治安を心配する里の人達の間での情報のやりとりも行われていた。わたしはスヴェータさん達の手伝いで全部を聞けなかったけれど。みんな、真剣そうで。気軽に口を挟めなかった……


 その翌日、エーディクさん達はトーリャさん一行をクロートまで送っていくことになり。わたしにも覚悟を決めることがあった。

『本当に大丈夫か? 心配なことがあったら何でも、オリガ達に相談するんだぞ』

「大丈夫です、心細かったらレーナさんにもついていてもらおうと思いますし」

 そう、それは初、ひとりお留守番! 夜もひとりってのがどんだけ心細いものかわからないけれど、いい機会だから挑戦しようと決心しました。……実は昨日の会話を聞いて、もしかしたらエーディクさん達がカラノークあたりにでも出稼ぎに行って、長期的に不在になることが今後起こるかもしれない、と思って。いつまでも誰かに傍にいてもらわないと不安だとか、そんなこと言ってたら駄目だよねって思い至った。

『本当に心細かったら、夕方に鍵をかけて、オリガの家に泊まらせてもらってもいいんだぞ……』

 えんえんと続くエーディクさんの忠告が……子供に言い聞かせているみたいに聴こえて、なんだかちょっと哀しい。はやく独り立ちしたい。

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