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30.トピックが多々乱立

 その後数日かけて、いろいろわかったことをまとめたのですが。

 たびたび寺院を訪ねては、司祭様がこっそり書物を見せてくださったのだけれど――閲覧に速さが要求されたので、結局わたしが読み込めるような時間はとれなかった。二人が把握した内容を教えてもらって、さらに後で宿でメモに起こしたので正直、内容の正確さはいまひとつという気がしている……。

 それらの言い伝えは、いくつかオリガさんから聞いたものと違う部分もあった。名前が少し違うとか、姿がちがうとか。中には性別が違う神様なんてのもあった。ローカルな違いってことで済むものなのかなー。本当は別の存在なんじゃないのかって思うものもあったりで。

 まぁ、それでもおおむね概要がつかめたと思うんだ。特に〈冬〉〈寒気〉あたりに関しては……ただ、いま雪解けの季節だと考えると、おそらく霜の降りる秋口くらいまでは、彼ら・彼女らに語りかけても反応が返ってこないんじゃないかという気がしている。だから次は他に関連がありそうな〈光〉や〈水〉などについて、より突っ込んで調べている。


 あの占い師のお姉さんからは他の同業者を紹介してもらったのだけれども、このあたりの手応えはいまいちで結局、最初に会ったお姉さんからの話や占いがいちばん詳しかったように思える。ちなみにエーディクさんも占ってもらったのだけれども――彼はローシャさんと同い年で、夏生まれの西部育ちらしい――『受け入れられる場所、事を起こす時が極めて限られている』という謎の多い発言をもらってしまった。『今までもこれからも、難の多い人生のようだね。転機は、確実に近付いているようだけど』ってさ……それを聞いて顔色ひとつ変えないエーディクさんとお姉さんとの間で、わたしはなんとなく居心地の悪い気分を味わっていた。

 入れ替わるようにしてローシャさんも、領主の館のドルジーナ繋がりに会いに行って――『古い神がないがしろにされてる、けしからん!』という頑固なおじさま方に絡まれたりで大変だったそう。やれ飲み会だの、入隊の勧誘だのに話を逸らされがちでうまく話を聞き出すのは難しかったみたい。

 隊士の中には、いっぷう変わった〈力〉を持つヴェドゥーンもいれば(詳細はローシャさんは教えてくれなかった。あんまり他人に話すもんじゃないってさ)、いろいろな意味でフリーダムさが目立つ遊牧民の戦士もいたのだけれど、何人か明確な〈マスリーナの教義〉の信徒もいたらしく、その人達にも話を聞いてみたそう。彼等は土着信仰の風潮の強い荒くれ者の中に混じっているだけあって、一本芯の通った考え方を持っているようだったらしい。

 考えの違う人との距離の置き方を心得ている人もいれば、哲学めいた話を延々と主張されそうになって参ったりもしたとか。何というのか、信仰に関わらずアクの強い連中の集まりなんだという想像がつきました……。


 あと、ときどき居なくなるので忘れそうになるのだけれど、レーナさん。……何だか、すこし元気がなくなったかも? もの憂げにぼーっとしてることもあったりで、ちょっと心配なのだけれど。水の精霊って何してあげると元気になるんだろう、とローシャさんに相談したら『いや、迂闊に近寄らないほうがいいと思う……マイヤちゃんとアレの場合は必ずしもそうでないかもしれんけど、構いすぎるとこっちの精神が〈引き摺り込まれる〉ことがあるから』という忠告をいただいた。何だか難しい言い回しをされたようで戸惑ったけれど、精霊のメンタルに同調しすぎるのは危険、という認識があるらしい。もしかしてローシャさん、それで普段からレーナさんにつれないのかなぁ。精霊らとの距離の置き方は、思ってたより難しいのかもしれません。まさに近くて遠い〈親戚〉のよう。

 そういえば、水の精霊の棲む世界に関しては、ローシャさんが特に気になったらしく調べていた。異界とも、死の世界に通じるとも言われている。西のほうでは海の向こうに〈霧に包まれた島〉があって、これも人外の領域だという伝説があるのだけれど。……何だろう、もしかして元の世界に戻る手掛かりだったりするのかな。それにしては一番最初にこちらに来た時の風景は、水や海とは縁がないように思えたのだけれど。


 それはそれとして、他にも不可解な行動をしてる人がいらっしゃいますが……エーディクさん、気のせいかわたしの言動に対してのチェックがやたら細かくなってきてませんか?! 特にあの、〈力〉の波とか体調とかに関してしつこく追及されるんですけどちょっとそれ恥ずかしくていちいち申告なんてとてもできませんよー!! しかもわざわざメモとかしないでください、いったい何の理由があってそんなことするんだろう。

 加えて、元いた世界でどうしていたとかも以前よりずっ突っ込んで聞き込まれたり。これもどこまで言って理解してもらえるんだろうか……躊躇いがちに話しているうちにエーディクさんの興味を惹いたのは、暦に関する話のようだった。この地域に比べて春夏秋が長いと思う、という話からはじまってひと月30〜31日、1年365日で4年に1回1日増えるという話をしたら、また何か考え込んでしまって……そういえばわたしは深く考えてなかったんだけれど、こちらは月の満ち欠けを基準にひと月29〜30日、3年に一度閏月が入るってことでどうやら太陰暦(だっけか?)なんだそうだ。

 エーディクさんの計算によると、1年――農作業の時期を読むのに必要な、季節の移り変わりの周期を示す日数はほぼ同じのよう。それって太陽や月や地球の大きさだったり、距離や公転自転の周期やらが変わらないってことですかね……言い切れる自信はないけれど。

 そして、どうやらエーディクさんは、占いに必要な日時時間の計算の大前提が違ってないかどうかの確認をしたかったらしい。少なくともあのお姉さんの占いが、それほどめちゃくちゃな結果にはなってないだろうと結論づけたようだった。

 この件に関しては、まだエーディクさんに何か思うところがあるようで、時おりメモを睨んで何やら計算してたりします。その様子は……傍から見ていてなんとも、近寄りがたいかも。

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