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29.計画はお早めに

 宿ではわたし達より先にエーディクさんが待っていた。『さっき来たばかりだ』とは言うものの、もしかしてけっこう待ったのでは? いやなんとなく、そんな気がしただけなんですけど。

 晩ご飯をいただきながら情報交換をした。といってもわたし達のほうは時間がかかった割にたいした収穫ではなかったかもしれない。何せ、占ってもらったのは前振りみたいなものだったから……すみません、半分くらい遊んでたかも。

『冬の加護……そうか、占いに必要な個人情報というのは案外ばかにならないな。今回改めてマイヤのことを視てもらったのは、よかったのかもしれない』

 そ、そうですか? 全部事情を話したわけじゃないから、占いの精度を落としちゃったんじゃないかって心配だったんだけど。

『そうそう! 聞いててびっくりしたんだけどさ、マイヤちゃん24なんだって……』

「ちょっ、 ローシャさん女性の年齢を大声で触れ回らないでー!」

 慌ててローシャさんの口を塞いだり押さえ込んだりとしていたんだけど、エーディクさんが何のリアクションもしないので何だか気恥ずかしくなって大人しく席につきなおした。すみません、真面目な話の最中だったのに。

『……んーでもさ、占いっていうと日常生活に特化した力だからな。そうでないのを探すとすると、そっちに居たんじゃねぇの』

『まぁ……確かにな』

 エーディクさんの行った場所は、領主の館にある〈ドルジーナ〉の待機場所だそうで。このドルジーナって、日本語でどう言っていいものかわからないからおそらくそのままで伝わってきてるんだけど、どうも騎士団と傭兵団の中間くらいのニュアンス。身分はバラバラで、ある程度出自がわかっていれば農民出身でも採用されるらしい。命令系統としては領主というか特定の人物一人の直属で、わたしが漠然と思い描いていた兵隊さん、に比べるとトップとの距離がかなり近いイメージ。


 以前の勤め先とはいえ、そんなところにその日のうちに行って、本当に時間とってもらえるのか心配だったのだけれど、特に問題はなかったよう。

『暇を持て余していたということだろうからな。それ自体はいいことだろう。近年は地方での小競り合い以上のものはなかったようだからな。――逆に言えば、そのうちある大きな衝突に備えている、という可能性が考えられるが』

『……マジ? どこと』

『憶測で言うのは憚られるが、南のほうの動き次第、という様子だ』

 少々物騒な気配を感じつつもエーディクさんが伺った様子では、以前からの顔見知りもご健在だったようで――場合によるけど、主人が若い頃から仕えていた者と、途中で編入したベテランとの間では、時としていくばくかの軋轢があったりするらしい。どこも職場の人間関係って大変だよね……でも新しい領主の元ではわりとうまくやっているようで、そこはひとまず安心したそう。

 ただ、モルジのドルジーナの構成員は、北西の海を渡ってきた傭兵の比率がやや多いんだそうな。他もそれらの文化的影響が強い北部、北東部の出身者が多いのだけれど……何て言うのか、血の気が多いいわゆる戦士って感じの連中らしいよ。まれに東南の遊牧民もいたりするようだけれど、彼らは彼らでちょっと違う方向で自由人な感じらしい。でもやっぱり文化人というよりは戦士としての気質が強いかも、ということで。

『司祭も言っていたが、都からの押しつけ気味の法令が性に合わない連中ばかりだからな……そのあたりの齟齬がどうにも、気になってな』

『……ああ、物騒の意味がなんかわかってきた』

 えー何ですか?! わたしには解らないんですけど。二人だけで通じ合っちゃってるとなんか寂しい。

『それで、しばらくここで情報収集をするとして、その後のことも考えておいたほうがいいだろう』

「と、言いますと……」

『もしかしたら都にも足を伸ばしたほうがいいかもしれないし、あるいは早々にフォークスに戻ったほうがいいかもしれないということなんだが』

『うーん……そろそろ種まきとか始めてる頃だよな。まあ、急いで帰ってもけっこう日数がかかるし、フォークスのほうはあっちでなんとかやってくと思うぜ。だいいち情報を集めるって意味では、同じ道を戻るのはいまいちだな。都まで南下して、その後北東へ直行するコースのほうがいろいろな場所に行けるぜ』

『都までは約10日の、3〜5日滞在するとして、その後14〜5日……ひと月は余裕でかかるな』

『いったん戻って都に行くよりは早いぜ? 俺はそのまま行っちまったほうがいいと思う』

『ああ……、そのつもりで考えておいたほうがいいかもな。マイヤも、それでいいか?』

「はい、構いません」

 わりとローシャさんの言っていた『同じ道を戻るだけってのがいまいち』というところに同感だったので頷いた。なんとなく、占い師のお姉さんの『南に行くときは充分気をつけて』という言葉が脳裏をよぎったのだけれども……それでも、行ったほうがいい気がしていた。

 虫の知らせというのかもしれない。この世界に来てから、この類の勘に左右されやすくなってきてる気がする。これも〈力〉と関係あるのかな……。

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