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28.郷愁に浸る夕暮れ

「家族がどうしているのか、占ってもらえるでしょうか。父と母と……あと、兄と姉と弟がいます」

『全員バラバラなの?』

「父と母と弟は同じ場所です。兄と姉はすこし離れた場所に働きに出ているので、もし別料金扱いでしたら、実家のほうだけでも」

『場所はどのへん?』

「それが……実はわたし、この付近には詳しくなくて、ここから故郷がどのくらい離れているかもわからないんです。ここより少し暖かいくらいの、でも雪はそれなりに降る場所なんですけど」

『ふぅん……家族の歳と生まれた季節はわかるかい? いちおう、全員』

 占い師のお姉さんは、ときどき考え込みながら木片に文字を刻み、それを何度かまとめて振り投げたりして……また何度か考え込んでいた。ローシャさんの時より明らかに難航してる様子だ……なんか申し訳ないことをしたかもしれない、もしかしたらこの世界の占いのルールを超えてることを要求した気がしてなりません。

『あんたとの血の繋がりを辿るようにして追ってみたんだけど……かなり、遠いところにいるんじゃないかね。都よりも遠いんじゃないのかな……顔つきがどっちかっていうと遊牧民っぽいけれど、そっちの血筋なのかね?』

「うーん……それに近いことを言われたことはあるんですけど、はっきりとはわかりません」

『そうかい、申し訳ないがあたしの力ではここまでかね。もっと南に行って、そっちの事情に詳しい人に占ってもらったほうがいいかもね』

 お姉さんは尚もしばらく木片や石を操作して、また口を開いた。

『……せっかくだからあんた自身に絞って視てみたけれど……ちょっと変わってるね。南の顔立ちなのに、冬の守護がとても強い。冬生まれだとは聞いたけど、常人より頭一つ抜きん出てる感じ。もし働き口を探しているようなら、意外とこの界隈のほうがいいのかもね』

 そう言って顔を上げた後、視線をわたしの斜め後ろにずらして、彼女はこうも言った。

『ま、でも、結婚相手は慎重に選びな』

『えー』

 お姉さん、そこでさっきのローシャさんの話と結びつけなくていいから!!


 ちょっと前置きが長くなりましたが、ローシャさんが脈があると判断したらしく、彼女にこの近辺のヴェドゥーンに関する話を詳しく聞いてみることにしました。

『そうだね、古い神々への信仰を全面に押し出して何かをやろうとすることはなるべく避けてるよ。あたしのはこういう実用性のある部分だけ取り出して扱ってるから、なんとかやっていけてるけど。ただ、古い神を祀ることを忘れて自分の〈力〉が弱まったら……と思うと、かなり困るねぇ』

『お姉さん、どのへんの出身?』

『あたしの田舎はもうちょい北西の湾岸だよ。西との関係次第では物騒になりがちなんで、城壁がしっかりしてるここのほうが安心ってのはある』

『ふーん、そっちの言い伝えでなんか、変わったのない?』

『あんたら北東だっけ? まぁ……西の神話とごっちゃになった感じのがあるんだよね。あっちは氷河が多いから、海や嵐の神の信仰が強かったりで』

『うーん、そこまでいくちょっと違うか……冬の神に関しては、何かあったっけ』

『……〈寒気〉は神より強大な存在、とみなしてるところもあるよ。正直祀るとか祀らないとか以前のレベルでの脅威で、どうしようもないってのが西の連中の考え方かもね。これがまた南のほうだと〈悪魔〉の類だってみなされたりもするんだけどね……』

 彼女は別れ際に、わたしにこう言った。

『……家族と会えないってのは辛いかもしれないけれど、気を落とさずにね。ここの土地自体はあんたにとってそう悪いもんじゃないと思うよ。むしろ南に行く時のほうが、注意が必要かもしれん。その場合はよくよく準備を整えるといい』

 一部勘違いさせたままのところもあるけれど、でもとても丁寧な心遣いをいただいて、すこし涙ぐんでしまった。


『あんまり、感性に頼らない占い方をする姐さんだったな。人生経験が豊富そうだから、それで充分カバーできてるんだと思う。正直、〈力〉が弱くなってもあんまり困らないんじゃねって思った』

「そうかもしれませんね。わたしだと大変かも……」

『あ、今度エーディクも連れてこうぜ! また容赦なしにいろいろ言ってくれそうじゃん』

「もう、ローシャさんてば……」

 さっき心細がってる姿を見せてしまったせいか、いつもよく話すローシャさんの口数がさらに多い。気を遣わせてしまってるんだろうか、なんだか、情けないなぁ。

「あ……そういえばレーナさん、どこ行ったんだろ」

『だいぶ待たせたからな、また川に戻ったりしてるんじゃないか。――もう暗くなるし、宿に行ってよう。晩飯何がいい?』

「あ、実は気になってたんですけど、魚の卵を使った料理とかですね……」

 ご飯の話をされて元気になりました。我ながら単純すぎる。

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