27.きゃっきゃうふふの占いタイム
裏路地を何のつてもなく探すのは効率が悪いので、レーナさんの『なんとなく居そう』というセンサーを頼みに探すことにした。これだとレーナさんと相性の悪いタイプ(火を使うヴェドゥーン)には当たらないってことになるけど『別にいいんじゃねえの、占い師ってのはどっちかっていうと水か風よりって相場は決まってるから』ということで、そのまま採用に至ったわけです。とはいえ、そうすぐに見つかるというわけでもなく……
『しっかし、やっぱ軒並み減ったって感じだな。見つからないように潜んでるか、あるいは見切りをつけて店をたたんじまったか』
「そんなに、規制が厳しいんですか?」
『まぁ……大公は偶像破壊令も出したことあるからなー……。さっきの寺院の爺さんみたいに、うまいこと法令の網の目をかいくぐってなんとか持続させてるところもあるんだけど、あそこもあの形でいつまで保つかって話なんだよ』
「えー……そうまでして、どうして布教させたいんでしょうかね」
『そうさねー……お上の思惑がどこにあるかっていったら、やっぱりマスリーナと南西諸国を敵にまわしたくないってところが一番重要なんじゃないのかな。ただ強硬策に出てるってところが、俺としては何となくひっかかるんだけどな。そうしないとまずい理由があるのかとも考えられるから』
「え……何か他に理由がある、ってことでしょうか?」
『もうちょい深く突っ込んで事情を知ると、何か違って見えてくるかもって思うんだけどな。俺も南の事情はそこまで詳しいわけでもないから』
うわー……うっかり疑問が口をついて出ましたが、これは部外者が迂闊に口を挟んでいい問題ではなさそうです。今後とも発言には気をつけよう。
『このへん! こっちの奥』
レーナさんに呼ばれて一軒見つけたのが、薬草を扱う店のよう。ローシャさんはレーナさんに『ここで待ってろ』と言い置いて、わたしと二人で中に入ることにした。入ると確かに、さっきの寺院でも見かけた紋様を刻んだ石や木などが飾られている。それに、なんとなく〈力〉の気配を感じる……かも。
『いらっしゃい。どんな薬をお求めで?』
応対してくれたのは、オリガさんよりは若いけど、スヴェータさんよりは確実に年輩、という表現しづらい年齢の女性だった。
『薬か……お姉さん、占いとかもやる?』
女性は少しだけ沈黙してから言った。
『占いっていうか……診察に近いやつをね。薬を必要としてる人の体調を判断するのに』
『他にもできたりする?』
『天気読みとか、その人の近い将来の相談とかだね。相談のほうはその人の体調や、これからやろうとしていることだったり、その時と場所を聞いて判断するんだけど』
『へぇ……せっかくだから何か占ってもらおうかな。マイヤちゃんどうよ』
「え、わたしですか?! えー、でも何を占ってもらおう……」
ここでローシャさんがボソっと『恋占いとか』と言うので、思わず渋ーい顔をしてしまった。
「ローシャさんが先に何か占ってもらってくださいよ!! その間に考えますから!!」
『ちぇー……仕方ないなぁ、じゃあいい嫁さんが見つかるかどうかのアドバイスを』
やっぱりそっち系の話題ですか?! でもあれ、もしかしてオリガさんに言われてた『嫁を探してこい』をいちおう真面目に考えてるんですかね……?
『じゃああんた、歳と生まれた土地と、生まれた季節を……27で、北東部の春生まれ? うわ、めんどくさいタイプの匂いがプンプンする』
お姉さん、言ってる間に字の刻まれた木片や石を用意してるんだけど、仮にもお客さんだろうにローシャさんに対する物言いが遠慮ないですね。
『ていうかあんたさ、ぜんぜん不自由してないタイプなんじゃないの。せいぜい遊びつくして嫁には家庭的な娘を捜してるんだけど、僻地の田舎で嫌がられてるとか。でなけりゃ自分自身がまだ遊び足りなくて、決心ついてないだけのどっちかで』
『うぐっ』
図星なのかな……でも正直、ローシャさんってけっこうモテそうって感じがあるんだよね。その第一印象と嫁探しの経緯聞いただけでも判断できるかもしれない、実際にお姉さんは、ほとんど占いに力使ってる気配がないし。
『嫁は実家から遠すぎない場所で、髭でも生やして探したほうがいいんじゃない? ……あ、今のところ水の気が強く出てるから、井戸や川に注意して。あと、嫉妬にも』
えー……それは特定の人物というか精霊を指しているように聞こえてなりませんが。やっぱり、多少の〈力〉を持ってらっしゃる方なんだ。
『お兄さんに関してはこんなところかな。お嬢さんはどうする?』
――その問いに、少し悩んだ後に、わたしは答えを出した。




