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23.目からウロコ、かも

『例年より早いが、そろそろ出発しようと思ってる』

『賛成賛成賛成!!』

 あの、なんでローシャさんまで……? と思ったのだけれど、今回は彼も行くんだそうだ。それはいいんだけど、なんでそんなに気負い込んでるんだろう。

『このままここでアレの相手だけしていても疲れる』

 アレってのはここ最近でお馴染みになった〈ルサールカ〉のことだと思う。そんなに大変かな。わたしにとっては案外話しやすくって、水の〈力〉に触れやすくなってきたんだけど。まぁ、ときどき〈魅惑〉とか、妙な力を教えてくれようとするんだけど……誰に使えっていうんだろう。


 でも、彼女の『あんたは、こういうの向いてると思う』という発言は、ちょっと気になっている。ローシャさんとは方向性が違うらしい。水そのものを動かそうとするよりも、精神に作用する類のものが使えるんじゃないか、という話。それを聞いてはえ〜ってなった。実は今まで、冷気とか光そのものを操ろうとしてたんだよね。そのせいか術のレパートリーが増えずに、ある程度までいったところで伸び悩んでる感じだった。

 とりあえず、ローシャさんのできる〈雨呼び〉というのが、わたしには今イチ向いてないよう。そもそも雨雲の感知自体ができてないから無理なんじゃないかという話で。そのかわり〈水鏡〉というのがいけるんじゃないかと言われた。水面に別の景色を映すという力なのだけれども、ただしよく知っている人がいる場所に限られるらしい。今のわたしだと、おそらく映せるのはエーディクさん、ローシャさん、オリガさん、スヴェータさんくらいまでだと思う。これは迷子になった時に便利かも……いやでもこれ、プライバシーの侵害になりませんかね。緊急時以外に軽々しく使っていいもんじゃないかと。

 もうひとつ、ローシャさんがやってみせてくれた〈引き摺り込む手〉……水面をうねらせて何かを掴むというものだけれど、これはできるかもしれないと思った。思ったのだけれど……なんだかものすごい悪寒を感じて、途中でやめてしまった。その様子を見て、ローシャさんも『無理にやろうとしなくていい』と首を振った。『これは結局のところ――生き物を溺れ死にさせる力だから』と。水の精霊が獲物を捕獲する際の常套手段だそうで……こ、怖い。水に落とした物を拾うためだけ、とかに限って使うようにしよう。

 そういう意味では〈魅惑〉も、そういう目的で使うものなので、やっぱり危険な気がするんですけど。だいいち他人の精神に作用するものって、やっぱり気分よくないしさ……取り乱している人を落ち着かせる〈鎮静〉くらいは、ありかもしれないけれど。このあたりはどれも匙加減が難しそう。実験台にしていい人もいませんしね……。


『マイヤの傾向が防御的なのは、多分に性格の問題かもしれないな』ポツリとエーディクさんが呟いたところによると、素質自体はそれ以上の可能性を秘めているかもしれないけれど、性格でブレーキをかけているんじゃないかという話で。『そういう環境になかったってことだろ、いいことじゃん』とあくまでお気楽なのはローシャさん。でも、なんとなくいつもの明るい調子ではなかった。――わかってますよ、ローシャさんがそういう時は、真面目な話をしてるんだって。


 力の使い方の幅が広がったところで、水の精霊以外の力はどうか、という点を再確認してみた。今のところ〈キキーモラ〉を切羽詰まったときの助っ人扱いにしてるのは……まあ『女性の力全般を意味している』ととれるらしい。火の精霊関連は、相変わらず全然駄目。家とか、大地の精霊とかは、やや呼応しているようなのだけれども、やはり〈女性的な力〉に限定されている感じ。――エーディクさんが、家の中心である暖炉の主ともいえる〈ドモヴォーイ〉に呼応しているのに対し、夜ひっそりと家を支える仕事を手伝う〈キキーモラ〉との縁があるのは、そういう性質の差もあってのことらしい。

 じゃあアレかな、子供の〈寝かしつけ〉なんかできそうかな、と思ったのだけれど、オリガさん家のお孫さんを実験台にするのもなー……と思って、泊まりに来たローシャさんに試してみた。『マイヤちゃんが膝枕してくれるんならいいかなぁ〜』というので、やってあげましたとも……。寝入った時、本当に〈力〉の効果なのかは疑わしかったんだけど、その後なかなか起きなかったから、エーディクさんが『それなりに効いてると思う』と。『ついでだから起こせるかどうかも試してみたらどうだ。冷水をぶっかけるようなイメージで』と言うので、それもやってみた。直後ローシャさんが跳ね起きたので、やっぱり効いたんだと思う。

『これで酔いも覚ませそうだな。潰れた時に無理矢理起こして家に帰せる』

 エーディクさん……なんか今日だけ、ローシャさんの扱いがひどいかも。


 ――とまあ、わたしがそのあたりの〈力〉の使い方に慣れてきたことも考慮して、の決断だと思う。北部ではまだ雪解けにはすこし早い、という話だけれども『この三人でならなんとかなるっしょ』というローシャさんの楽観的観測と『……あまり、時間を無駄にしないほうがいい気がしている』というエーディクさんの慎重な意見を踏まえたうえでの判断で。

 ……うん、なんかね。エーディクさんは〈スィム〉と〈リグル〉の動向を気にしているみたいなんだ。彼らは直接的なことを言わないけれども、遠巻きに見守っている様子なので、それでかえって気になるのだという。

 あの一羽と一匹については、よくわかっていない。ただ、恐らく〈キキーモラ〉や〈ルサールカ〉らより、もっと上位の力に繋がっている――と。それは確かに、気になりますよね……。

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