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2.謎のお爺さんズと美少女と

 頭の芯から醒めた、と思ったのに。

 なのに身体が思うように動かない。瞼さえ重く感じる。なんとか目を見開こうとするんだけど、そうやって覗けた視界はなんだかぼやけてる。


 クッションにもたれかかっていた体勢のままなのに、手足に当たる感触が違う。やや固い感触の、毛足の長いラグみたいな……うちにはこんな敷物なかったはず……

 あと、寒い?! 着ていたパジャマは冬用のモコモコしたやつで、やっぱりモコモコのルームソックスも履いてたんだけど、暖房効いてない、切れたのかな?

 視界もおかしくて、住み慣れた部屋の狭く雑多な感じがしない。なんかいろいろとおかしすぎるんだけど、とりあえずちゃんと起きて、何度か瞬いて、手足が痺れてないか確認……したいんだけど、そんな気持ちとは裏腹に身体がほとんど動かない?!


 そうしていたら、まだぼやけたままの視界が動いた。人の気配……何人か、近くにいる?

 目を凝らそうとしたら、少し焦点が合ってきたかもしれない。特に目につく人影が、二つ……あれ、髪かと思ったら髭? なんかすごい髭の長いお爺さんみたい、二人とも。

 ひとりは頭は禿げてて、乳白色っていうんだろうか、柔らかい色合いの白い髭。暗い紺色の長いガウンみたいな服を着てる。衿や袖口にきらきらする刺繍があるみたいだね……

 もうひとりは時々鈍く光る……銀色の髪と髭かな? こっちのお爺さんは禿げてないんだけど、なんとなく雰囲気がもう一人よりも怖そう。黒い高級そうな毛皮を着込んでる。


 二人の間で何か喋ってる? はっきりとは聞き取れない。外国語みたい、たぶん英語じゃない。ちょっとだけ聞きかじったフランス語やドイツ語とも違う感じ。もちろん中国語やハングル語とかでもない。困ったなぁ。

 このお爺さん達、サンタクロースにしてはちょっとカラーリングが寂しすぎやしないかとか。いやなんかそういうのとは根本的に違うんじゃないのかとか。逃避で脳内一人突っ込みを展開しかけた時に、視界を白い華奢な影が横切った。


 距離が近いこともあって今度ははっきりわかった。それは、女の子だった。

 白い髪に薄いブルーの目の、外国人らしい推定年齢14〜15歳の美少女。着ているものは白いブラウスと青灰色のジャンパースカートで、どこかの民族衣装みたい。

 彼女はわたしのほうを時々振り返りながら、二人のお爺さんに向かって何かを話しているよう。わたしとお爺さん達の間に割って入った、のかな……割り込まれたかたちなのに、不快な感じはしなかった。


 話していた声が途切れる。少しだけ沈黙の間が訪れる。

 すると、女の子が私のほうに向き直って何事か声をかけられた。

『……何か……なもの……用意して……いと……』

 その頃にはなんとか身体が動かせるようになっていたので、わたしは女の子にちゃんと向き合えるように姿勢を正して、起き上がろうとした。途端にものすごい寒気が襲ってきてぶるっと身震いしたので、思わず両手で自分の身体を抱き締めた。寒い寒い寒い!

 そう思った次の瞬間、何かがふわっと肩にかかった。


 柔らかくふわふわした、白い毛皮だった。下に敷かれていた毛皮らしきものよりずっと肌触りがいい。思わず目の前の少女を見やると、彼女は儚げに微笑んだ。

 毛皮は襟元に銀の留め金がついていて、それを彼女が留めてくれると、途端に寒さをまったく感じなくなった。わたしがぽかんとした顔で少女を見つめていると、また少女は微笑んで――心から嬉しそう、という顔ではない。すこし困ったような顔にも見える――わたしの手をとり、身をひるがえした。どこかへ連れて行く気なのか。


 手を引かれるがままに後をついていった。彼女の手は心なしかひんやりとしていて、変な感じがしたが嫌だとは思わなかった。十数歩くらい歩いたところでそういえば、と後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった――あの二人のお爺さんとか、他にもいたように思える人の気配とかが、まったく失せていて静まりかえっていた。

 その代わり、視界がずっとはっきりしてきて周囲が見渡せた――そこかしこに降り積もった雪明かりで全体が薄青く見える、おそらくは真夜中の森――だった。

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