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18.衝動買いは危険です

 市場は賑やかで、見ているだけでも楽しかった。乾燥させたキノコだったり、薫製や干物の魚がずらっと並んでいる。

 でもやっぱり野菜ですよ野菜!! どう考えても足りなくて必要なもの。昨日入ったお風呂の料金よりかなり高い気がする――通貨らしき銀の塊を渡す量から判断して――のだけれど、背に腹は変えられませんからね! エーディクさんもほとんど渋る様子なく、塩漬けや酢漬け、干し果物などを次々に買っていった。

「オリガさんとこには、何がいいでしょうかね」

『子供がいるからな、極端に辛いものでなければ大丈夫だろう。……衣類や雑貨も見てみるか?』

 いろいろ見ました……衣服もいくらか買い足したのだけれど、スヴェータさんにはそれとは別に、ハーブオイルと蜜蝋でつくられた軟膏を買っていくことにした。わたしより手荒れしやすいみたいなんだよね。根本から仕事量が違うってのもあるだろうけど、彼女はなんとなく肌が弱そうなんだ。


 それにしても、しばらく超田舎の生活を送っていたせいか、需給バランスやコスパの感覚がすんごいシビアになってきてる……例えば石鹸とかなんですけど。実はフォークスでも見かけたし、各家庭でも作れるようなんですが、例の灰汁に油や塩といった、食用品を加えることになるんですよね。『材料に余裕がある時はいいけど、食べ物が不足がちかもって心配してる時にやることじゃないよー』ということで。あと、固まるまでにかなり時間がかかるけれど、その一方で固める必要性をあまり感じなかったりで……薪を燃やして大量に出る灰を煮出すだけ、で手軽に作れる灰汁のほうが使い勝手がいいってことになる。ものすごい汚れ落ちがいいとは言えないけど、ケチらず大量に使えるし。

 原材料もつきつめると、里で入手しやすい木灰と動物油より、南海で入手しやすい海藻灰と植物油のほうが質がいいんだそうな――等々、教えてもらったうえで石鹸も買ってもらってしまった。……しまった、何となく興味を惹かれてどんどん話を聞いていたら、買うような流れに持っていってしまったかもしれない。

 お金は……常に使うと考えると、わりとばかにならない出費になる。エーディクさんの『今までの蓄えもあるから、それほど気にしなくてもいい』というフォローは、でもそれって貯金切り崩しってことですよねーとも思ったし。それでも、品質がどの程度違うのか気になったので、今回限りでもいいので確かめてみたい気がした。出がけにローシャさんが言っていた『心配すんな、あいつ結構稼いでるから』の発言を信じることにしますよー!


 それから、そこそこに磨かれた石がゴロゴロと並べられている店を覗いた。店内に並ぶのは複雑な形の水晶、渋い赤紫色の石、雪の森のような白い混じり物の入った深い緑の石、藤色のマーブル模様の石……綺麗、だけど何だろう、それだけじゃない気がする……?

『お呼びかな』

 店に座っていた無精髭の男の人が呟いた。

「え、いえ、そういうわけでは……」

『そうかい? 俺は、あんたが石を呼んだ気がした』

 は、何ですかそれ?! 怪しい押し売りの手口だろうか、思わず傍らのエーディクさんの袖をがしっと掴んでしまった。すこし前に出たエーディクさんが動じず返す。

『なにか掘り出しものがあるのか』

『俺んとこはどいつも掘り出し物だよ。旦那かお嬢さんか、でモノは違うと思うが』

 ぐるりと店内を見渡すエーディクさん……え、さっさと店を出るんじゃないんだ。だめだよ断りにくくなってなんか買わされちゃうよーってハラハラしながら成り行きを見守っていたら、小さいくず石を指して言った。

『このくらいの大きさで、種類を違えてひとつずつくれるか』

『いいよ……なるほど、手堅いね』

 エーディクさんてば、全種類コンプとか。意外にコレクター癖あるのかな? その横で、おじさんはなんだか訳知り顔でニヤついていた。

『こいつはおまけだ』

 最後に、やや濁った水晶を数粒足してくれた。え、何その気前の良さ、もしかしてぼったくられてません……?

『またどうぞ、ご贔屓に』

 また、ってところを強調された……気がした。

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