16.応用力が貧困かもしれない、けど
「ちょっとお二人にご協力お願いしたいんですが!」
なんとなく強気に出て男衆二人を庭先に引きずり出した。家の中での服装そのままで、外套を着る暇は与えていない。短時間なら保つのだけれど……という格好である。
『あのーマイヤちゃん、これからどうすればいいのかなー』
「とりあえず今は動かないでください!」
まずはエーディクさんの前で両手を広げ、それからゆっくり、ふわっと手を合わせる仕草をする。続いて、震え気味のローシャさんにも同じように。――頭の中で思い描いていたのは、あの白い髪の少女。最初に毛皮をかけてくれた、あの感触。
「……これでしばらく庭仕事しててくれませんか? その間家には入らないで」
『マイヤちゃん、俺らを凍死させる気……?』
「心配しないでください、わたしも条件は同じですから! 死ぬ時は一緒ですよ!!」
『うわーなんか嬉しいような嬉しくないようなお誘いだなー、無理心中ってやつ?』
『さて、雪掻きでもするか……』
結論として、1時間くらいは保ったけど2時間はいかなかった、という記録が出ました。
『……普段みたいにわかりやすく急激じゃないけれど、ゆるやかに冷えてくような感じだね……自覚しづらいぶん、逆に怖い気もするんだけど』
「これでもだいぶ長くなってきたんですよ! 外套と合わせればきっともっと長く快適に過ごせると思います」
『なら、最初から外套着た状態でもよかったんじゃ』
「……あ」
あは、うっかりしてました。だってほら、わたしは白い毛皮もらってるから、この〈寒さ避け〉の効果は、毛皮着てない時じゃないと実感できないんですよ!
逆に言うと脱いでるときはものすごく差がわかるから、イメージはしやすいんだよね。どうやって寒さを防いでるのか、ってところが。
あれからいろいろ試してみたのだけれど、細かいことはともかく、大ざっぱなくくりでいえば――うすうす予想できてはいたのだけれど、冷気に関する力との相性がいいらしい。エーディクさんという比較対象がいたためにいっそう明確になったのだけれど、彼が炎との相性がいいのに対して、見事なまでにそちらの適性がなかった。ただ、何故か〈光〉に関してはすこしは使えるんだよね、こちらもエーディクさんのほうが強力なんだけど……
ちなみにローシャさんは風や水、植物などの力との相性がいいらしい。水がありなら氷とかも、と思ったのだけれどそこまでいくとなんか違うらしい。吹雪の流れや勢いはある程度制御できるらしいんだけど、〈動かないもの〉に対しては弱いかも、……というのが本人の談だ。
ただ、そこまで判明した時点で困ってしまって。
だって冷気って、そこら中に漂ってますけど、有効な利用方法を思いつかないんですよね……エーディクさんの力は火起こしとか、すごく役立ちそうなのに!! 冷蔵庫みたいな機能を活かしてみる、とか考えたんですけど一階の貯蔵庫はフツーに冷蔵庫並みの温度ですしね。外は外でフツーに冷凍庫扱いですし……さんざん頭を悩ませた挙げ句、目に留まったのがいつも着ている白い毛皮で。これと同じことが自分の力でできないものかと考えた。
しばらくは自分だけで試していたんだけど、なんとなく二人を巻き込みたくなった。ムシャクシャしてやった、後悔はしていない。――というのは冗談で、万が一狩りの途中で迷って遭難した場合、自分は毛皮で平気でも他の人を助けられないのは嫌だな……と思ったから。あと、自分だって毛皮を無くすってこともあるかもしれないしね。
結果としては、毛皮の効果には遠く及ばないけれど、希望は持てるんじゃない? と思えるものだった。
『いい機会だ。ちょうどそろそろ、南の市場に買いつけに行こうと思っていたんだが――マイヤも来てくれるか』
「市場、ですか?」
何でも、冬の蓄えが心もとない場合は、極寒の旅路と言う危険を冒すことになるけれども、南まで行って物資(おもに食糧、何をおいても食糧)の補充をするんだそうな……あ、今年は真冬に予定外の食い扶持が一人分増えましたからね。そりゃ足りなくもなりますよねー……。
「行きます行きます行きます!」
本来は男連中のやることらしいのだけれども、わたしは行くことにした。ちょっと力仕事は頼りないかもしれないけれど、自分にも責任の一端があるわけですしね。さっそく〈力〉がお役に立てそうだし、それに他の町ってのも見てみたいし。期待を込めて旅の準備にとりかかった。




