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10.慣れてきたこともあれば……、

『お、けっこうかわいいじゃん』

 それなりに時間がかかっていたので、その間外での力仕事に駆り出されていた男性陣が戻ってきた。初対面の時よりもだいぶくだけてきて、態度が柔らかくなってきたローシャさんの発言がこれ。まあね、自分から見てもかわいいと思うんですよね! 衣装が。

 わたしはいただいた衣類を抱えて、スヴェータさん達に礼を述べ、エーディクさんの後に続く。不足の調達は明日にしようということで、今日は着た道を戻……。

「え、ローシャさん?」

『今日は俺も泊まるよ〜』

 手土産なのか、紐で繋がれた薫製肉や干しキノコをぶら下げた同行者が一名、加わりました。思わずエーディクさんのほうを見ると

『たまにこういうこともある』

と。


『俺としてはさー、たまに大所帯から離れて、独り者同士で羽目をはずしたい時ってのがあるんだよねー……こっちでもお邪魔虫かもしれんけど』

「そんなことないですよ! いろいろお話が聞けて嬉しいです」

 なんか意味深な言葉が最後に聞こえた気がするけど気にせず歓迎しますよ! エーディクさんと二人だけだと、なんとなく間が持たない時があるんだよね。ローシャさんは思っていたよりも人懐っこい感じのする人で、わりと話しやすい。最初警戒されてたのかもって思うけど、今のほうが素なのかな。

 晩ご飯はローシャさんが中心になって作り、わたしはそれを手伝った。漬け物や冷肉の前菜に、朝よりもっと具を入れた濃厚なスープ、きざんだ肉や野菜を包んで焼いたパンなど。あーなんかいいなここの料理。季節柄、生野菜の入手は厳しいようだけど、酢漬けや干物やジャムでここまでできるんだ……という充実ぶりですよ。


 で、夕食後。食器を洗っている横で、かまどから灰を掻き出し終わったローシャさんが

『っしゃ、風呂入るか! マイヤちゃん、一緒にどう?』

 ……え? 何言い出すんですかローシャさん?! 固まってしまったわたしの横から間髪入れずエーディクさんが口を挟む。

『一人ずつ入れ。マイヤが先に……入り方わかるか?』

「入り方、ですか?……なにか守らなくちゃいけない決まり事とかあるんでしょうか」

『ほら、な? マイヤちゃん、〈ペチカ〉に慣れてないみたいだし、だから一緒に』

 ちなみに今聞こえたペチカって、暖炉のことらしいんだけど。衣服の名前もそうだったけど、ときどき、この世界独特の言葉はそのまま聞こえてくるみたい。でも今まで『暖炉』で通じてたのに、なんで今だけ?

『お前、先に入れ。その間にマイヤに説明するから』

『えー一緒に入れば簡単なのにー』

 そうは言いつつもローシャさんは階下から藁束を抱えて来て、巨大な暖炉のいちばん大きな焚き口に突っ込み……ついでかまどで暖めていた、お湯の入った鍋というか壷のようなものに木の枝の束を突っ込み、壷ごと暖炉に押し込み……

『最初に入れた藁は自分が座る場所に敷くんだ。で、その次の湯壷と白樺の枝の束だが、』

 ??? まったく脳が理解に追いついてないんですけど、その後ローシャさんが、その場でおもむろに服を脱ぎはじめ……

「きゃぁあああ!!」

 人前で全部脱ぐとか! いやそのまま見てた自分達もアレなんですけどまったく隠す気配ないとか勘弁して!! 思わず顔を手で覆ったら、エーディクさんが『早く入れ』とローシャさんを追い立てるようにして、彼が入った後の焚き口の蓋を閉め……あれ、閉じ込めちゃったんですか。まさかのローシャさんのオーブン焼き。


『中で自分が座る場所を整えたら、壷の湯を白樺の枝で暖炉の内壁に振りまくんだ。そうすると中が蒸気で満たされる』

「は、はい……」

『あとは枝で身体を叩いたり、藁の上に寝転ぶなりして気が済むまで汗を流せばいい』

 あ……てことは蒸し風呂なんだ、つまり暖炉内部はサウナ室ってことですか。衝撃の使用方法に茫然としていたら『おーい、開けてくれるかー』と中から声が。エーディクさんが入口を開けると、身を屈めて出てきたローシャさんは赤く茹であがって……やっぱり何も着てないぃいい!! 『ふぅあー』とローシャさんは気持ちよさそうな溜息をついたあと、そのままふらふらっと階下に降りていきましたが……

『出たら、納屋で汗を流してくるんだが。もしこの部屋で済ませたければ、盥と水桶があるからそれを使ってもいい。焚き口の近くに用意しておいて、出た後に使うわけだが』

「そ……そうするとしても、ですよ。この状態ではいろいろと問題が……あ!!」

 茫然としつつも頭を巡らせていたら、部屋の隅に衝立を見つけたので、それを焚き口の近くに移動させてもらった。よし、これで脱衣スペースが確保できたよ!!

『別に気にしなくていいのに』

 気にするってばぁああーもう!! どういう神経してんだろ!

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