溢れ出る闘志
さーて、強豪校相手に1発速攻をかました(ブロックされたけど)我らが滝蓮。さらにこちらも反撃を阻止したときたもんだ。こう言えば、さも滝蓮が強豪海清に互角にやり合ってるよう聞こえるが、ないない。リアルに考えてみ?こんな弱小丸出しのチームが、県大会常連校と互角に戦えるハズねーから。こっからボロが出てくるだろーさ。
エンドラインから、海清のオフェンスで再スタート。ボールをコートへ入れたのは8番だ。
「ディフェンス!声出して!」
「6番オッケー!」
「逆サイ!」
敵1人に対して、こちらも1人でディフェンスをする。ほとんどの対人スポーツに存在する、もっともオーソドックスなディフェンス方法。マンツーマンだな、これは。
敵チームで一番背の低い8番には、こちらも一番背の低い刹那。高身長6番には滝蓮1の身長を持つ心。4番にはアリサ。7番には滝蓮7番の三春。5番には絵馬が。
あっ、また海清の4番にボールがいったぞ。
「さあ、今度は1対1といきましょうか」
「臨むところ!」
右サイドの外、45度の位置でボールを貰った千夏は、トリプルスレットをとる。マークマンであるアリサも、深く腰を落としてディフェンス体勢にはいった。
キュッ、バッシュのスキール音が鳴ったその時。
「きたっ!」
爆速ドライブが再び繰り出される。コートの内側、左へ切り出したドリブルで千夏は攻め込む。非常に低い姿勢、いわゆるダックインと言うものだ。この姿勢によるドライブは止めづらく、アリサは1歩出遅れる。
近くにいた絵馬と心がヘルプに向かうものの、千夏はハイポストでドリブルを止める。そしてジャンプシュート。
『ナイッシューーーーーーー!!!!』
リングに触れることなく、綺麗にネットを通り抜けた千夏のシュート。得点板の海清側に、2点の表記が。
うわちゃあ、やられましたよ。先制点。バカ騒ぎするベンチの鬱陶しいのなんの。
「カウンターー!!」
ゴールを抜けたボールをコートの外で拾い、再スタートを始めたのはアリサ。ポイントガードである刹那にパスを渡し、敵陣のゴールへ向かって走り出した。
チームの中でも特に足の速い刹那を先頭に、アリサ、絵馬が走る。心と三春も後に続いた。
マークマンの8番をドリブルで抜き去り、ボールは刹那からアリサへ。
絵馬はアリサの攻撃スペースを作るために外へ切れた。
「いけえっ、アリサ!」
速攻の中、臨時でディフェンスについた7番をアリサは左サイドから突破。そのまま両足ステップからのゴール下シュートを打つ。
「!?」
またしても滝蓮側のシュートはブロックされる。しかも先程刹那が叩かれたのと同じ。千夏によるブロックだった。
逆サイドへ流れるボール。絵馬が拾った。そのまま絵馬がミドルシュートを打とうとするも...........
「絵馬っ!こっち!」
「っつ、アリサ!?」
左サイドでブロックされたのもつかの間、ローポストへ走り込んだアリサがパスを要求する。すぐ後ろにはブロックから着地した千夏がいる。一瞬パスを躊躇ったが、アリサの声、気迫からすぐにボールを渡した。
「はああっ!」
右足でターンを踏み、再びゴール下のシュートを勢いに任せて打ち抜いた。千夏も同様にブロックへ跳んだが、それは不発に終わる。
2対2。開始から1分、互いのキャプテンがシュートを1本ずつ決めるという展開で幕をあけたこの試合。シュートブロックも計3回という大味な内容であった。
「アリサ、ちょっと入れ込み過ぎじゃない?今は決まったからいいけど、けっこう危なかったよ」
ディフェンスに戻る最中、絵馬がアリサへ声をかける。
「大丈夫!私、今絶好調だから!どんどんボール回してよ!」
自信に満ち溢れた表情と返事。格上の相手からブロックされても怯まず、すぐ次のシュートへ移るその姿勢。
「わかったわかった。でも、無理ならアリサもパスちょうだいよ!」
「了解!」
アリサの闘志を汲み取った絵馬は、二人でハイタッチをした。