静かな時間
静かな時間がある
その時間は特別に静かなわけではない
コロコロと、確かに音はあった
けれども静かだった
目を瞑っていると、景色は黒く潰れる
目を開けていて、何かを見ている?
静かな時間は許してくれる
ゆっくりと、消極的に、見えない物を
風の吹く音が聞こえる
機械の振動が響く
静かな時間は寄り添ってくれる
どこか遠くから、与えないことを与えてくれる
それは些細な空気だけれど
人はそれを食べて生きているのだ
静かな時間は焦らない
静かな時間はゆっくりと、深く、浅く
寝息のように街を覆っている
寝息は気付けば風となって
寂しく冷たく、でもどこか寛容な音を奏でた
静かな時間がある
その時間は特別に静かなわけではない
だからこそ
人の息衝く音を 宇宙の音を
静かな時間は少し、許してくれる
見える何かを見ないことを
聞こえる何かを聞かないことを
生きる何かを生きないことを