【小説】 都市伝説
「都市伝説って知ってる?」
俺が持参した雑誌を読みながら、君宏が聞いた。
「あれだろ?ミミズハンバーガーとか口裂け女とか」
君宏のテレビゲームをしながら俺は応えた。直後、ゲームのコンセントを抜かれる。
「あっ、なにすんだ!」
「ねぇ、俺らで都市伝説を作らない?」
君宏の提案は、怖い話、変な話を作りそれを噂としてばらまくということだった。
君宏は一度言い出したら聞かないから、言うことを聞くしかない。俺たちは都市伝説を作ることにした。
例えば、駄菓子屋の婆さんは他の店から万引きしたものを売ってる、とか。電信柱の上から声がしてうっかり振り返ると喰われる、とか。とある日本人形を見たら呪われる、とか。
でも、どれもこれもしっくりしない。リアリティもないし、全然怖くない。どこかで聞いたような話ばかりで。
君宏もそう思ったのだろう。
「作り方が、あるのかもね」
「作り方?」
「そう。例えば、家を作る大工さんみたいにさ、俺らには分からない都市伝説の作り方を知ってるんだ」
なるほど、家を作るプロがいるように、都市伝説を作るプロがいるってことか。
「それこそ、都市伝説だね」
と、君宏がこぼした。