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Tokyo Adaptor  作者: 四篠 春斗
配属編
12/63

『やるしかないよ』

前回のHappyHallowe'enは1日遅れでしたねwww

日にちの感覚がマヒしてたのかもww

校庭に現れた、場違いなタコ。しかもそのタコはウイルスによって巨大化して暴走、無差別に生徒を襲い始めた。

その巨大タコと相対する迅と御園。それぞれが得物を構え、戦闘体制を整える。


「あれ?種原と篠宮じゃね?」


「あの二人、公安だったの?」


そんな周囲の話し声を聴いていられるほど、二人に余裕はなかった。


「どうする?椎名さんの指示を待つか?」


「そんなことしてたら、皆が襲われちゃう」


「なら……」


迅は、〈デュランダル〉をさらにギュッと握りしめる。

御園はコクリと頷いて、


「やるしかないよ」


「…了解」


迅と御園の意見の一致と同時に、巨大タコが標的を迅と御園に変えて襲いかかってくる。

ニョロニョロと動き回る八本の脚を、迅はひょいひょいと()わし、隣に立っていた御園はすばやく退き、少し離れたところからの射撃を狙う。


「椎名さん、こちら種原。東京第三高校にて異常患者(グローバー)化したタコと遭遇、みそ…篠宮と戦闘を開始しました」


巨大タコの脚をあしらい、迅は耳にインカムを装着して、直ちに通信を開始する。

インカムの向こう側からは、眠そうな椎名の声が聴こえてくる。


『ファ〜…了解だ。目撃者の一早い通報のおかげで、状況も大体把握している。今、朝陽(あさひ)猪狩(いかり)兄妹がそちらに向かっている。時期に潟上(かたがみ)も着くはずだ。種原と篠宮は守りに徹してくれ。可能なら、討伐しても構わん。くれぐれも、無理はするな』


「「了解!」」


迅と御園の返事の直後、椎名とは別の声がインカムから耳に響き渡る。


『潟上海斗現着!遅くなってワリぃ‼』


声の主は海斗。彼も、迅や御園と同じ東京第三高校の生徒だ。引きこもりやサボリ魔でなければ、この時間は学校周辺にいてもおかしくない。


『潟上、種原と篠宮の援護だ。いいな?』


「オッケーです」


いつの間にかそばまで来ていた海斗の声が、インカムからの音声と重なりながら聴こえてくる。


「初陣だな。種原」


「のん気な事言ってる場合じゃないぞ」


「はいはい」


迅と海斗に、巨大タコの脚がガトリング銃のように襲ってくる。海斗は飛び退いて回避し、迅は延長能力(オーバーアビリティ)と思われる思考能力を駆使して回避する。


「"エクスカリバー"」


迅は〈デュランダル〉に命じた。

命令に呼応し、〈デュランダル〉の刃は神光を帯びる。迅はその光で刃を延長はせず、刀身に纏わせる。これにより今の〈デュランダル〉は、最高の斬れ味と威力を引き出す事が可能だ。

迅は、巨大タコの脚を避け、〈デュランダル〉を一振りする。直後、巨大タコの脚が一本、根元から切り離されて地面へと落下する。

巨大タコは悲痛の叫びを挙げ、残り七本の脚で、迅を殺そうと攻撃の構えを取る。


「〈ウコンバサラ〉-"オプレッション"」


巨大タコの背後から、大きなハンマー型の"リジェクター"を振りかざした海斗が、ハンマーを巨大タコの脳天に叩きつける。

すると、巨大タコは痙攣を始めた。

これは海斗のハンマー型"リジェクター"〈ウコンバサラ〉の形態のひとつ、"オプレッション"によるものである。

"オプレッション"の効果は麻痺、ハンマーを叩き付けた対象を麻痺状態にする効果がある。

これにより、巨大タコは麻痺状態に陥ったのだ。


「御園!!」


「了解!そこから離れて!!」


迅と海斗は御園の指示に従い、周囲の生徒たちと共に巨大タコから離れた。


「〈シムナ〉-『フォトンシェル』モード」


命じられた〈シムナ〉の銃口は大きく拡大され、中に光の砲弾が装填される。


【〈シムナ〉-『フォトンシェルモード』。異常患者(グローバー)の完全排除を行います。周囲の安全を確認してください】


〈シムナ〉の電子音が、御園の耳に響く。

御園は、巨大タコに銃口を向け、トリガーを引く。


【発射します。爆発にご注意ください】


刹那、空間に一筋の光線が迸る。

その光線は巨大タコを突き抜け、地面に着弾して爆発を引き起こす。

爆煙によって、視界は最悪となり、生徒たちの悲鳴があちこちから聴こえる。


「『殲滅完了』」


インカムから聴こえたのか、それとも直接聴こえたのかはわからないが、御園の声が煙幕で閉ざされたこの場所の状況を、簡潔に皆に知らせた。

しばらくして視界が明け、ようやく肉眼で状況把握が可能になる。

煙幕が取り巻いていた場所に、巨大タコの姿はなく、巨大タコの体が飛び散った跡が、生々しく残されていた。

これがもし人間のだったら、気分を悪くする人もいただろうが、幸いにもタコであったためか、気分を悪くしたという人はいなかった。


「椎名さん、こちら潟上。巨大タコの排除が完了しました。死者はゼロ、負傷者は二十三名で……」


潟上が、椎名に事後報告をしている。

事が収まったのを見た教師達は、生徒達に指示を出している。が、こんな騒ぎの後なので、まともに聞いている生徒は少ないが。


「おい迅!お前、公安に入ったのか?」


迅は背後から聴こえた声に反応し、振り返る。そこには、一人の男子生徒が立っていた。


「おお、殿町(とのまち)か。ああ、昨日管理課の一係に配属になったんだ」


「スゲぇじゃん!やっぱ先読み術持ってる奴はどこでも即戦力になるんだな」


殿町が羨ましそうに頷いている。

この男子生徒、殿町優斗(とのまちゆうと)は、迅と同学年の高校二年で、部活も迅と同じ剣術部。基本誰とでも話せるような性格で友達も多いが、優斗は迅に積極的に声をかけてくれるのだ。

迅にとっては、かけがえのない友達である。


「おまけに、あの『ミス三高』グランプリ最有力候補と言われる篠宮御園(しのみやみその)まで公安の人間とは…迅、お前は幸せ者だな」

優斗が、今度は嫉妬深く言う。


「なんの話だ……」


「いや?わからねぇならいいや」


「………」


「それよりも、お前部活はどうすん……うっ…⁉」


突然、優斗が苦しそうに呻き声を上げ始めた。暴れまわる優斗を、迅が必死に抑える。


「殿町!?どうした!?」


「ぐああああぁぁぁぁッッッ!!!!!」


もう、迅の質問に答えられるような状態ではなかった。迅は優斗の体をなんとか制止させるが、一人ではとても困難を極める。

優斗を押さえつけながら、迅は見てしまった。


優斗の両眼の白目と黒目が、逆転しているのを。


迅は、登校中の御園の言葉を思い出す。


--特徴として、白目と黒目の色が逆転して、自我を失っちゃうの。


「〔フェーズ3〕……」


迅が漏らしたその声には、絶望以外の感情は一切ない。

絶望の淵に立つ迅に、異常患者(グローバー)と化した優斗が殴りかかる。迅はそれを全て回避しているが、〈デュランダル〉で攻撃する素振りは見せない。


「種原君!!」


「種原!!」


御園と海斗が、援護のために駆け寄ってくる。

その途中、御園の超視力【万里双眼(マイルズスコープ)】は、視界の端に映る、ビルの屋上からこちらを見ている人間の姿を捉えた。その人間の手には、弓。


「〈シムナ〉!『フォトンバレット』」


御園はその人間に〈シムナ〉を向けて即座に発砲、槍のような光の弾丸が、謎の人間目掛けて伸びていく。

が、謎の人間はそれを避け、逃走を始めた。


「御園‼潟上!!ヤツを追え!」


優斗と相対しながら、迅が叫ぶ。息を荒げながら襲いかかってくる優斗の猛攻を、迅は今凌いでいる。


「御園の視力でも見えない所まで逃げられる前に!!早く!!」


御園と海斗は顔を見合わせてからコクリと頷いて、


「わかった!気をつけて、種原君」


「死ぬなよ!」


と、言葉を残し、脚力増強シューズ〈ラビット〉を用いて、大きく飛躍した。

迅は、フゥー、と息を吐き、暴走する優斗に、素手で立ち向かう。


「殿町!!目を覚ませ!!!」


優斗の攻撃を止め、優斗の両腕を抑えながら、迅は叫ぶ。

だが優斗は、驚異的なスピードで迅の束縛から脱出し、迅の腹部に強烈な回し蹴りを繰り出した。


「グハッッ……!!!」


一気に校舎の壁まで蹴り飛ばされた迅は、起き上がりながら血反吐を吐く。


「…殿町!!」


名を呼んでも、返事はない。


もう、殿町優斗は…いない。


それを知らしめるかのように、インカムから椎名の声が、迅を絶望の谷へと突き落とす。


『種原。その異常患者(グローバー)の男子生徒を抹殺しろ。もう、回復の余地はない』


迅は、腰に携えた剣〈デュランダル〉を一瞥し、ありったけの力で歯を食いしばった。





To be continued……

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