終わらせてもらえない
前回は失礼しました。
今回から通常運転です(多分
「セァア!」
短い気合とともに、回り込んだ右後ろ脚に斬りつける。
ギャリッ、とイヤな音が接点からして、硬い手応えとともにはね返される。
後脚払いがくるか、と思ったが絶妙にヴィガウルファの気を引くタイミングでリュザのタワーランスが出鼻を挫く。
「剥ぐよ!」
チスタは左の後脚に取り付いてダガーでひたすらに引っ掻いている。
短剣系武器特有の圧倒的手数の剣技魔法で硬い甲殻に傷をつける。
「わかった!」
俺はチスタの後ろに回ると、大きく振りかぶる。
「セイッ!」
気合一閃、甲殻は弾け飛んで立派なアキレスがお目見えする。
「さすがだね」
チスタのお褒めの言葉を耳に聞いて、
「チスタこそ」
お返しをしながら、もう一回。
アアアアアアア‼︎
怒りの咆哮も虚しく姿勢を崩したヴィガウルファに攻撃魔法の色とりどりの光が殺到する。
「ヒャッハー‼︎」
完全に悪人ヅラのリュザが楽しげに叫びながらタワーランスを突き刺す。
「ハァア‼︎」
チスタはめまぐるしくダガーを打ち込む。
様々な光がヴィガウルファを包み込み、声にならない断末魔の叫びをあげ、ヴィガウルファはその姿を無に帰した。
「セートカッコよかったじゃん」
今回仕事がなかったシュエがパタパタと駆け寄ってきた。
「ふう、まあこんなもんだろう」
一息ついた俺は、この5人の相性の良さを噛み締めた。
「早いな…」
リュザがボソリと呟いたが、今までの3人だったならば、もっと時間が必要だったことは明白だ。リュザのタイミングをとるセンスのよさとチスタの正確無比の連続攻撃。シュエの安心感があれば俺もクロハもやっていける気がする。
「なあ、クロハ--」
「危ない‼︎」
俺の意識は頭を殴打された感覚を最後に途絶えた。