【後日談その1】大魔王パルテノンの正体
キョウスケたち勇者御一行様が、大魔王パルテノンを倒してから約半年が経過した。
今日は、エルフとなったキャナルが、周辺の荒廃した各国(ソビエル帝国の一部・ナイジェルカ王国・ミネソタ帝国・フラン王国・イタス連邦)を統合し新たな王として『キサレアド聖王国』を建国する日でもある。
旧クレアレド聖王国の王都であったカトレールは、魔王軍の侵攻により荒廃してしまっていた。
町を囲む城壁は崩れ去り、占領軍による圧政で住民たちの生活は困窮を極めていた。
キョウスケたちが、この街を解放した時は、町の住民たちの歓喜の声が天高く木霊していたらしい。
そして、大魔王パルテノンを倒し、新たな国づくりへと動き出したキョウスケたち。カトレールに戻った時、町は見事に復興していた。その後、旧クレアレド聖王国の王族であったキャナルを王にして建国されたのがこの『キサレアド聖王国』である。
アスカたち旧『狐とエルフの落し児』御一行は、それぞれの旦那とともにこの式典に参加している。もちろん国賓扱いであり、大陸中央部の盟主であるバーランチア王国との同盟の発表もこの場で行われる予定だ。
「・・・
ここに、旧クレアレド聖王国名誉公爵第1婦人『キャナルシア=アーレル=キサラギ=クレアレド』改め、初代キサレアド聖王国女王『キャナルシア=アーレル=キサレアド』が、キサレアド聖王国の建国を宣言する。
また、この良き日に合わせ、大陸中央部の盟主バーランチア王国との同盟締結も、この場を借りて宣言する。
〇〇〇〇年△△月☐☐日。
初代キサレアド聖王国女王『キャナルシア=アーレル=キサレアド』。」
長かった初代女王キャナルによる建国宣言が終わり、同盟国であるバーランチア王国女王エリザの祝辞へと移っていく。
3日間にもわたる式典と関連行事を終え、一息ついた一行は、式典の疲れを癒すかのようにまったりとした時間を優雅に過ごしていた。
「そういえば、神様たちの親友でもあるアスカに聞きたいことがあるんだが。」
キョウスケが、ふいにそんな言葉を発する。
「なに?聞きたいことって?」
「大魔王パルテノンについてだ。大魔王と対峙した時、大魔王の気配からアスカたちの気配を感じたんだが、なぜだ?」
私は、キョウスケの話した内容を聞いて『流石勇者』と、改めて感心した。
「その事か。
…まあいいか。この話はみんなにも聞いてもらおうかな。」
そう言って私は、ここに集まっているメンバーを見渡す。全員が聞く姿勢と撮ったことを確認して、私は、大魔王パルテノンについて神様から教えてもらったことを話した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まず初めに話したことは、魔王と勇者の関係についてだ。
勇者が別世界から召喚される際、必ずと言っていいほど、召喚される際に周りにいた者たちを巻き込んでいく。それは、召喚される際に必要な魔力を補うためだ。今回のキョウスケたちの場合、それがたまたま町1つ分だった話だけである。
その際、必ず発生するエネルギーが『負のエネルギー』、つまり、憎悪や悲痛といった感情である。
そして、この負のエネルギーを集めて形創られたモノが魔王の正体である。
勇者とは、自らが召喚される際に発生した負のエネルギーを浄化するために、魔王と打ち倒すといっても過言ではない。
なぜこんなややこしいシステムをとっているのか。
それは、輪廻転生をする際に、負のエネルギーが邪魔だからである。負のエネルギーを抱えたまま輪廻の輪を潜ると、転生した際に世界を滅ぼそうとする存在に生まれ変わってしまうためだ。それを防ぐため、輪廻の輪を潜る前に貯め込まれた負のエネルギーをすべて抜き取っている。
それは、私たち転生組でも同じことであり、私たちの場合は、勇者に対する負の感情だけを抜き取られて転生してきた。
それは、『勇者が召喚される世界・時代に転生するのだから、そんなくだらない感情は持ち込まなくてもいい。せっかく第2の人生を送る事が出来るんだから、復習で終わる暗い人生ではなく、楽しく明るい人生じゃないと。』という神様の思いやりでもある。
消される感情は、勇者に対する負の感情だけであって、負の感情自体を完全に消し去るわけではない。それは、光があればその反対側には影が出来るように、すべての事柄には『表』と『裏』が必ずあるからだ。それが、万物の理であり失くすことのできない事だからだ。
閑話休題。
抜き取られた負のエネルギーは、神界の奥深くで貯められて長い期間をかけて浄化されていく。
ここで問題になってくるのが、世界の壁を飛び越えて行われる『勇者召喚』だ。
本来ならば、その世界で起こった問題は、その世界に住む者が解決しないといけない。しかし、魔法が普通に存在している世界では、何か大きな問題が起こると他力本願的な考えで、すぐに他世界から勇者と呼ばれる存在を召喚してしまう。
そこで、神々が考えたシステムが、魔王と呼ばれる存在を、負のエネルギーで創り出すといった事だ。勇者召喚によって産まれ出た魔王を、召喚される数年前に送り出し、負のエネルギーの浄化とともにその世界の問題も含めて解決させようと神々が決定した。
今回、魔王が大魔王となってしまったのは、数万人分の負のエネルギーとともに、神界に貯えられていた負のエネルギーをも取り込んでしまったためだ。
大魔王の気配の中に私の気配がしたのは、私から抜き取られた負の感情を感じ取ったのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「これが魔王の正体よ。つまり、魔王とは、勇者召喚の際に巻き込まれて死亡してしまった者たちの負の感情が寄り集まったもの。魔王と勇者という存在は、言ってしまえば問題を自力で解決できない世界の被害者ね。
どこの世界でもいえる事だけど、そもそも他世界の者を召喚して、問題を解決してもらおうと考えているのがいけない事なのよ。召喚側は、その事をしっかりと胸に刻んでほしいところだけど、…それすらできていないのが現状ね。
これから先も、他力本願な考えで、他世界から勇者という名の被害者が召喚され続けていくんでしょうね。」
私はこう締めくくった。
「せめて、この世界だけでも被害者をこれ以上作り出さないために、召喚魔方陣は破壊されたままにしておきましょう。現状では、召喚神殿を含めて、修復不可能なほどの破壊されていますので。また、召喚魔法自体の使い手も、すでにこの世を去っていることですし。」
私の話を聞いて、エリザがそう結論づけた。
「そうしてもらえると助かるわ。きっと、神様たちも喜んでいるでしょうから。」
私はそう相槌をうった。




