王都を解放しよう(その3)
王都解放作戦の最終段階が発動された。
現在私たち討伐対外るのは、王都の外壁を囲む結界の中。タイガードラゴン・フライオクトパス・スモークドラゴン・サンダーボアの4体は、この結界の中にそれぞれを単体で閉じ込めるように、別の結界を張ってある。
「では、それぞれの担当地区、…というか、担当する魔物の近くに転移していただきます。4体の魔物の担当の方々は、転移直後に戦闘開始となるはずですので、今から準備をしておいてください。
先ほどもお話しした通り、外側の結界は時間とともに縮小していきます。最終的に結界がなくなるまでは、私たちが4体の魔物のいる結界に転移してから12時間後です。
結界がなくなると、中にいるモノたちはすべてはじき出されてしまいます。そうなると、一般人では対処できない魔物が外に出ることになります。私たちにとっては雑魚扱いの魔物でも、一般人にとっては、出会っただけで死を覚悟しなければいけない魔物も、今までの経験から中に入るだろうと推測します。
結界発動中に、頑張って殲滅してください。
それでは、転移を開始します。」
そう宣言すると、私たちは、4つの結界の中へと転移していった。タイムアタックの始まりである。
時間内に、この4体だけは討伐してしまわないといけない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私が増す最初に転移させたのは、選抜隊のメンバー40人だ。彼らが多分4匹の魔物討伐では、一番時間がかかるだろうと思ったからだ。
転移後彼らは、2人1組になって空を飛ぶタコたちに向かっていった。タコの数は20匹だ。1組1匹を担当すれば、そんなに苦労することはないと思う。
後は、タコたちが連携するかどうかだが、見ている感じそんなことはなく単独行動をしているみたいだ。
頑張って殲滅してもらいたいと思っている。みんな頑張っているようなので、ここは任せても大丈夫だろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アスカがほかの面々の転移をしているとき、『狐とエルフの落し児』のメンバー7人は、独自に転移魔法を使ってサンダーボアの元へと着ていた。このメンバーは全員転移系の魔法はマスターしており、場所さえ分かっていれば、誰かの助け等必要としないからだ。
「こいつを倒すには、まず厄介な針の体毛を何とかしないといけないね。あれがあるおかげで、前衛陣の攻撃が届かないだろう。」
「そうですね。とりあえず電気が起こらない処置を施しましょうか。」
みやびの問いかけに、エリザがこう答え、まず初めに静電気が起こらない処置をする。エリザは、神々からもらった数々のギフトの中から、電気や雷に関する知識を引っ張り出す。そして、得られた知識をもとにして、そこから構築していった魔法を放った。
「帯電除去」
無限にある魔力を必要以上に込めた魔法は、サンダーボアの周囲どころか結界内すべてに作用し、静電気が起こらない空間を作り出してしまった。
「ちょっと魔力を込めすぎました。この結果以内では、雷系統の魔法が使えなくなりましたが、まあ何とかなるでしょう。」
失敗しちゃいましたと舌を出して、開き直るエリザ。それを見て苦笑する面々。
「まあいいでしょう。最低限感電することはなくなったわけですから。では早速、あの厄介な針を毟りにかかりましょう。」
そうミヤビが宣言すると、前衛陣が突撃を始めた。
いつものように、マツリの強力な威圧でもってサンダーボアをその場に釘付けにし、前衛陣のミヤビ、ナオミ、アカネが針の体毛を切り落としていく。ほどなくして丸裸にされたサンダーボアに、カズハの弓矢とエリザの魔法でもって分厚い表皮に風穴を開けていく。
そして最後は、アカネの持つ戦斧が、胴体と頭を切り落とした。
戦闘時間は20分ほど。怪我1つ負っていない完全勝利で幕を引いた。
後で戦闘の様子を聞いた公爵はこう言った。
「アスカ殿とそのパーティが、魔王軍ではなく味方であってよかった。仮に魔王軍の方についていたら、この世界は、1か月もかからずに征服されていただろう。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「キョウスケ、準備はいい?さっきも言ったけれど、転移直後に戦闘開始だと思うからね。ぶっちゃけ、タイガードラゴンが、4匹の中では一番強敵だと思うから。」
「ああ、わかっている。アヤカ・キャナル・ヒデヒサ・アリサ、準備はいいな?」
「いつでもいいぞ!!」
「私たちも準備いいわよ。アスカ、お願い。」
「準備はいいようだね。じゃあ、転移するから、後は頼むよ。」
「ああ、まかしておけ!!」
こうして俺たち5人は、アスカに見送られてタイガードラゴンの下に転移した。
予測通り、タイガードラゴンは、俺たちが転移したと同時に、すぐさま駆け出してくる。
「早速のお出ましか!!俺がやつをくけとめるから、キョウスケ、後は頼むぞ!!」
ヒデヒサの叫びに、俺は応えて剣を構える。俺の後ろでは、アヤカたちが魔法の準備をしているころだろう。
”カキン!!!”
甲高い音とともに、タイガードラゴンの突撃を受け止めたヒデヒサ。
「極雷烈火!!」
アヤカの叫び声でに呼応して、天空から極太の雷が数条降り注ぎ、大地からは、劫火のように燃え盛る炎がタイガードラゴンを包み込んだ。
俺は、魔力を極限までまとわせた水晶剣を、タイガードラゴンに走りながら腹に叩き込んだ。剣が通り過ぎて行った場所は深くえぐられ、大地から立ち上る劫火が、その傷の中に入り込んでいく。俺は、返す刀で今度は背中を駆け上がり、腹と同じように深い傷を作っていった。今度は背中の傷に、天空から降り注ぐ雷が突き刺さっていく。
一度大きく下がるタイガードラゴン。背中と腹に空いた大きな傷口からは、ぼたぼたと奴の血が流れだしている。
「第1ラウンドは何とか勝ちを拾ったが、第2ラウンドはどうかね。」
「マツリちゃんのようにはできないが、俺でもある程度の威圧はできるぞ。あれから、マツリちゃんの特訓を受けたからな。」
俺の呟きに、ヒデヒサが答えた。
「そうだな、じゃあ、第2ラウンドのゴング代わりにやってくれ。」
こうして、ヒデヒサの威圧を合図に、第2ラウンドのゴングが鳴らされた。
その後、数回のラウンドののち、俺たち勇者チームの勝利で幕を閉じた。タイガードラゴンは、四肢を切断したのち、丸太のような太い首を切り落とすことで勝利を収める。もちろん俺たちは、誰1人として大きなけがもなく大勝利だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
皆をそれぞれの魔物に送り出してから私は、担当するスモークドラゴンの下に転移した。
私の目の前には、体長約350m、Lv900の煙のバケモノが蜷局を巻いて空を漂っている。結界に閉じ込められたのが相当頭に来ているのか、何とか結界を破ろうと体当たりやブレスを吐いているため、結界内に転移してきた私には、まだ気が付いていないようだ。…まあ、時間の問題だとは思うがね。
これから私が退治しようとしている魔物の名前は、『スモークドラゴン』という猛毒の煙で体組織を構成している魔物だ。当然、物理攻撃は一切効かないだろう。そのため、物理攻撃の前衛陣は連れてこずに、私1人でこいつの相手をすることになった。
『狐とエルフの落し児』のもう1人の魔法使いであるエリザは、サンダーボアの討伐の方に回している。ほかのメンバーも魔法は使えるけれど、特化型ではなく自己支援型みたいな使い方をするからね。そのため、魔法での攻撃はあまり得意ではないのだ。
まあ、そんなパーティ内の裏事情はどうでもいいとして、煙を相手にどうやって戦おうかな。
手っ取り早く煙を拡散させるならば、…風を利用するのだが、相手は煙のバケモノだ。拡散させてもすぐに元に戻ってしまうだろう。
…そうだね~~カイベルトダンジョンの100階層のボスだった巨大なスライムを倒したあの攻撃でもしてみようかな。すべてのモノを凍結させるあれならば、煙にも有効に作用するはずだ。
「では、瞬間冷却!!」
私は、ボススライムの時の100倍の魔力を込めて、-196℃以下の液体窒素の雨を煙のバケモノの全身に満遍なく降りかけた。
液体窒素の雨の中で、まず初めにバケモノの周りに漂っている毒ガスの霧が瞬間凍結され氷の礫となっていく。液体窒素の雨が降り注いでいる範囲は、急激に冷やされていき地面はすでに氷に閉じ込められた状態だ。今回の液体窒素は、その温度がとてつもなく低いらしく、雨が降る範囲の空気すらも凍らせていく。
そして、液体窒素の雨を降らせ続けて30分後。其処には、煙の体躯をそのままに、灼熱の溶岩のブレスを吐き出している氷の彫像が姿を晒していた。
まさか、ここまでうまくいくとは思わなかった、戦闘とは言えない戦闘が終了してしまう。
最後のの仕上げとばかりに私は、氷の彫像に対して、無数の鎌鼬を浴びせ、粉々にしていった。
「さて、あとの3つと、周りの掃討はどんな感じかな~~。」
戦闘?終了後、私は結界を解除してほかの現場を見学することにした。もちろん、劣勢であるならば助太刀する予定だけどね。
私が終了すると同時に、ほかの魔物たちの討伐も終了したみたいだ。外で行っている掃討作業も、あと少しで終わるらしい。
私は、少しでも次の工程を進めるため、王都に点在している避難施設への出入り口の様子を確認するため、お瓦礫と化した王都の中を駆け巡るのであった。出入口の場所は、私しか知らないからね、私がこの作業を行うしかないのだよ。




