カイベルト大迷宮攻略(その2)
予想した通り、私以外のメンバーでは100階層を超えると、1人でダンジョンを攻略することが困難になってきた。
順番に人数を増やしていき、200階層を超えたあたりでフルメンバーで攻略することに。
ついでに言えば、私すらも、150階層を超えたあたりで、1人で攻略することが困難になってしまった。
仕方のないことでもある。
100階層を超えると、途端に攻略している冒険者の数が減っていき、150階層目でとうとう、私たち以外冒険者の気配すらなくなってしまったのだから。
そうそう。アリサに与えられているクエスト【カレンドラ大陸にかつて存在した大帝国『ラングレイ帝国』帝国領土内に存在するダンジョン『アカサノミヤ大迷宮』内に安置されている神像が身にまとう聖衣『クリストフ』を、ダンジョンの外に持ち出す事】だが、200階層のボス部屋におかれていた宝箱の中身がそうだった。これで勇者メンバー全員が、残り1つ以外、それぞれに与えられたクエストをクリアーしたことになる。
アリサがクエストをクリアーして地上に戻った時、何か急用で王都の呼び出されたため、現在は私たちパーティメンバー8人での攻略となっている。キョウスケたちを呼びに来た使者が、何か焦っていたようだったが。
そこに時々サーシャとアケミが加わっている程度だ。そうそう、サーシャだが、つい先日にエリザと同じく『エルフと人間のハーフ』に生まれ変わっていた。ついでに、エリザの家族と一部の貴族も同じく『エルフと人間のハーフ』に生まれ変わっているようだ。
サーシャからの伝言で、王様から賞罰としてこの『種族変更薬』を与えたいという話なので、キョウスケたちが王都に行く時に、薬を渡してもらうように託してある。もちろん『賞罰』としての話なので、『エルフ』のほか、様々な種族になれる薬を用意した。中には魔物にもなれる薬もあるが、その中身はゴブリンなどの弱い魔物なので、見つかれば討伐対象になるし、町や村の中には二度と入れなくなるものだ。まあこの薬を使用する者は、殺人や強姦などの重犯罪を犯した者たちだけだろう。今までのように公開処刑もいいが、…どちらが犯罪者にとっていいのかは実に興味深い判断でもある。
キョウスケたち5人も、この『種族変更薬』、特に『エルフと人間のハーフ』に生まれ変わる薬をほしがっていたが。この薬、値段をつけるとすると天文学的な値段になる。売りに出すつもりはないが。魔王を討伐した暁にはこの薬を上げることと話をつけた。
閑話休題
現在私たちは、351階層を攻略中である。
201階層からは、今までのように1階層ごとに、洞窟型迷路フィールド・樹林型迷路フィールド・蟻の巣型迷路フィールド・空間歪曲型迷路フィールド・草原型フィールド・荒野型フィールド・湿地帯型フィールド・海原型フィールド・特殊形態型フィールド・ボスフィールドと、順番に区分け?されているわけではなく、どれだけ広いのかは知らないが、大きな島のようなフィールドに、それぞれの階層ごとにボスが存在している。
各階層に渡る転移陣やボスの位置は、階層ごとに異なりまた随所に鬼畜なトラップがちりばめられている鬼畜仕様だ。転移して斬る場所は、どの階層も神殿風の建物の中だが、建物から1歩でも外に出れば、そこはすでに魔窟だったりする。建物の出入り口付近に蜘蛛型の魔物が、巣を張っているのはまだまだかわいいものだ。
現在攻略中の351階層は、転移したさきが大海原を漂流している、少し朽ち果てた大きなガレー船の船室の1つだった。甲板に出てみれば、3本あるマストに張られている帆はすべて破れて全滅している。周りの海原には、島の影1つなく船は、何かの海流に乗ってゆっくりと進んでいた。舵すらきかなかったその船を、何とか直して現在漂流生活中である。
「こんなところを任されているボスって、どんな奴なのか賭けてみない?」
漂流3日目の夜、暇を持て余した私は、こんなことを皆に提案した。
ガレー船に転移されてきて3日目、普通ならば食料が尽きるころだ。
だが私たちは違う。水も食料も大量に持ち込んでおり、このまま漂流していても1か月は余裕で持つ量がある。昼夜問わずに水生型の魔物が、散発的に襲ってきて船上でのちょうどいい訓練になっている以外は、普段は暇を持て余しているのが現状である。ボスについて、少し賭けをするのも一興である。
「それは、ちょうどいい暇つぶしになるね。ちなみにチップは何?お姉ちゃん。」
ミヤビが私の賭け任ってきて、チップの内容を聞いてくる。
「そうだね~~。今更お金なんか貰っても、使い道もないしね~~。武器や防具に関しても、私が作った最高傑作を全員に与えているしね~~。
さて、そうなると、何をチップにするのか、…悩むところだよね~~。」
そう。今いるこのメンバーでは、チップにするものがない。お金や名誉といったものには興味がなく、そもそもお金に関しては、全員が遊んで暮らしていけれるほど持っている。名誉に関しては、そんなものは、楽しく人生を置くうえで邪魔なもの第1号になっているほどだ。
「…まあ、何もないけれど、今日のところは無難にお金にしておこう。オッズはそうだな。今日より数えてボスと遭遇した日数ということにしよう。1日につき10倍で。」
私の提案に、全員が同意したところで、いよいよ賭けのスタートである。
「じゃあ、最初は言い出しっぺの私から。
…そうだね~~。全長100mはある巨大なクジラにしようかな。賭け金は1000レシアで。」
「じゃあ次はあたしだね。あたしは人食いザメの大きな奴にする。賭け金は、お姉ちゃんに合わせて1000レシアで。」
私に続てミヤビが賭けてきた。こうして、メンバー全員が賭けに参加していく。各人の賭けの内容は次の通り。ちなみに賭け金は、最初に提示した私と同じ1000レシアになっている。
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アスカ…全長100mの巨大なクジラ
ナオミ…タコとイカを足して2で割ったような形状の巨大キメラ
ミヤビ…巨大な人食いザメ
マツリ…全長100mのオオダコ
エリザ…巨大貝
カズハ…島ほどある甲羅を背負ったウミガメ
ミズホ…200mを軽く超えるダイオウイカのバケモノ
アカネ…巨大なウミヘビ
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みなさん、ファンタジーじみた巨大な化け物を想像しているみたいだ。ここはエリザ以外の私たちにとっては、ファンタジーな世界そのものなんだが。ね。
翌日は、釣りをしたいと唐突に思い、即興で釣り竿と仕掛けを用意して海の中に糸を垂らす。海に沈んでいく糸の長さが、3㎞を超えたあたりで、竿を強く引く感覚に襲われる。あたりが来たようだ。撓る竿を見て、大物が来たと感じる。
それから格闘すること数時間。いよいよ相手とのご対面だ。するといきなり、大海原を走る船の後方500mくらいのところで巨大な何かが海面を飛び上がる姿を目撃する。
そこには、カジキマグロがいた。あのフォルムは、カジキマグロだ。のこぎりのような長い角?が頭の先に生えており、黒光りする全身。地球にいるカジキマグロと違うのは、全長が角を除いて目測でも50mを超えているところくらいだ。
「お姉ちゃん!あれを釣り上げるの?」
「…たぶんな。」
それから船の上に釣り上げるのに、さらに2時間を有した。
賭け事をしてから10日後の昼下がり、散発して襲ってくる魔物を軽くいなしながら、とうとうこの階層のボスとご対面した。




